ライフスタイル

すべての愛犬家へ。ペットロスを防ぐための10の習慣

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それでも犬は、あなたといられてうれしかった。

編集長の橋本圭右です。
みなさんはペットを飼っていますか。
もしそうなら、きっとそのペットは大切な存在でしょう。
でもそのペットはいつか、たいていは飼い主より先に天国に召されることになります。そしてそのうちの一部の方は、「ペットロス」という深刻な心の病気にかかるようです。

ぼくは結婚してすぐに犬を飼いはじめたのですが、この犬のことを、あまりにも我が子のように扱ってしまっていたため(かわいがるにしても、叱るにしても、一緒に遊ぶにしても)、この犬が死んだ後、立ち直れないほどのペットロスになるんじゃないかと恐れていました。
ペットと触れる日数が長くなるほど、「その存在がいなくなる」という状態が想像できなくなってくるのです。

2011年に撮影。犬のふじは3歳。

しかしちょうど1年前に、この犬を病気でなくしました。
そして結論から申し上げると、ぼくは幸いペットロスにはなりませんでした。

愛犬ふじが亡くなったときの投稿

それは以前、編集者としてたずさわった『犬が伝えたかったこと』という本の影響が大きいと思っています。
この本は、ペットロスの予防策が書かれた本ではありませんが「犬とはどういう生き物か」を教えてくれる本で、その教えに本当に助けられたのです。

著者の三浦健太さんは「ペットロスになりやすいのは、ペットにかまいすぎる人よりも、あまりかまってあげなかった人だ」とおっしゃっていました。
この教えをぼくなりに解釈し、飼い犬が死んだときに心を病まないよう習慣にしていた10個のことを書き記しておきます。
もちろんぼく以外の愛犬家の方々にはなんの効果もないものかもしれませんが、少しでもどなたかの参考になれば幸いです。

1 「いつかやろう」をすぐやる

家族でペットを飼っていたら、きっと「いつか◯◯をここに連れていきたいね」という話がよく出ます。ぼくはペットロスになりたくなかったので、そういう話が出たらすぐ、次の休みにその場所へ連れて行くようにしました。思いつきで動くので結果的によく後悔したものですが、失敗も含めて良い思い出になりました。

2 毎日、散歩をする

死んだあと「最後にもう一度散歩をしたかった」と絶対に思うに決まっているので、どんな悪天候だろうが体調不良だろうが、最低1日1時間は散歩するようにしていました。ときには帰りのことも考えずに、隣町にもそのまた隣町にも移動し、疲れ果てて、家族に車で迎えにきてもらったこともあります。

3 向き合う時間を作る

犬は寝ていてもつねに意識は飼い主にロックオンしているものです(食べるとき、遊んでいるとき以外ですが)。一方で飼い主は犬をなでたり、ひざに乗せたりしながらも、頭の中は仕事や家庭のことなどでいっぱいで、犬のことなどろくに考えていないときがあります。ぼくはペットロスになりたくなかったので、一日のどこかに必ず「正面から向き合うぞ」と決めて、犬に噛みつかれるくらい、めちゃくちゃにかまう時間を作るようにしました。

4 ときどき犬にまかせる

「犬=忠実な存在」というイメージがありますが、なんか人間のわがままを聞いてもらってばっかりだったなあ、と思い返すとペットロスになりそうなので、ときどき「今日は犬の意思にまかせよう」と決めて、好きにしてもらうときがありました。具体的には、散歩の行き先を犬に決めてもらったり、犬がやめるまでボールを投げるなどです。いずれもたぶんシツケという意味ではダメだと思いながら、見たこともない路地に入り込んだりして楽しんでいました。

5 いっしょに寝る

これもシツケ的にはダメだという説がありますが、犬は人間とくっついて寝たがっているし、人間側もそんなに悪い気はしないので、同じ布団で寝ていました。なにより、もしもう「二度と一緒に寝られない」ような状態になったときに、後悔すると思ったからです。でもまあ、毎晩、身体の上に乗っかられながら寝ていたので、肩こりと腰痛がひどかったです。いまとなっては肩こりも腰痛もだいぶ改善しているので、犬の乗っかりが原因だったんだと確信しています。

6 墓参りにいく

先に犬をご先祖さまに見せて、「この犬が死んだらそちらでよろしくお願いします」と挨拶をしておいた方がいいかなと思い、そのようにしていました。実際落ち着きがない犬だったので、供花やお線香をへし折ったり水をバラまいたりかなりバチ当たりな感じになっていましたが、いちおう天国へ面通しだけはしておいたおかげで、ペットロスの軽減になっていると思います。

7 いろんな人にかわいがってもらう

人が多い公園に連れていくと、けっこうな確率でお年寄りや子供から声をかけられるのですが、そういうときは率先して「どうぞ、さわってあげてください」と応じるようにしていました。死ぬ間際に「人間っていう動物はわりと好きだったな」と感じてもらえれば、なんとなくペットロスも少なくて済みそうだと思ったからです。

8 遺影だと思って写真をとる

どの飼い主もそうだと思いますが、ペットの写真なんて大量に、甘々に、撮りまくると思うんです。その結果、本当にその犬のことを見ているだろうか? 写真をとる行為そのものに夢中になっていないか? その結果ペットロスにならないかが心配でした。だから写真をとるときは、あるいはその写真をデータとして残すときは、つねに「これは遺影になるかどうか」を判断基準にしていました。ちなみにヘッダの画像は遺影です。

9 好きだった場所に連れて行く

ペットロス予防のおそらく定番中の定番ですが、実はこれだけは叶いませんでした。すっごく元気だったのに、病気だとわかって衰弱していくまでの時間は、本当に一瞬のことだったからです。
「思えばあれが最後だったね」というのは死ぬ半年以上前のことでした。結局、病気になってからは行けなかった。それでもよかったんだろうか。
「犬は飼い主と一緒ならどこでも幸せだから」だとおっしゃっていた、三浦健太さんの言葉が心の支えです。

10 感謝する

突然病気が判明して、もう先が長くないと獣医さんから宣告されてからは、なにかにつけて犬に向かって「ありがとうね」と言うようにしていました。ものを壊したり、無駄吠えをしたり、仕事の邪魔をしたり、勝手に飛び出したり、食べちゃいけないものを拾い食いしたり、ドアをガリガリしたり、はっきりいって飼っていた時間=怒っていた時間といっても過言ではありません。
それでも「もう死ぬんだ」とわかると、どれもこれもすばらしい思い出にしか思えなくなって、「いままでありがとうね」という言葉しか出てこなくなったのです。

テンションの高さだけが取り柄の犬でしたが、死ぬちょっと前は、さすがに立ったり座ったりの動きも緩慢になり、息が苦しそうでした。
子供が寝た未明のことでした。
私たち夫婦の「いままでありがとうね」「もうがんばらなくてもいいからね」という言葉を浴びながら、さいごは静かに、まるで空気が抜けるようにして天に召されていきました。
直後、ぼくの胸の中で闇が一気に広がりました。まずいと思いました。それはかつて体験したことのない息苦しさでした。とても耐えられるようなものではないと直感しました。しまったなめていたぞ、これはかなりきついぞと身を固くしました。
でもしばらくたつと、その恐怖はすーっと消えていきました。
いまだにうまく表現できません。頭が少し変になったのかもしれません。
ただなんか急に、すべての生き物が、そもそも「うちの犬」だったような気がしているのです。
近所の犬や猫はもちろん、カモを見ても、虫を見ても、なんなら観葉植物を見ても、それがまるでうちの犬ように思えてくるんです。
だからペットロスは大丈夫でした。
ときどきiPhoneがメモリーとかいって勝手に表示する写真を目にしたりすると、ふと会いたくなる瞬間はありますが、(まあ、あいつはそこら中にいるし)と心のどこかで思っているわけです。

以上で、ぼくのペットロスを回避できた話はおわりです。やっぱりここまで書いて、読み返してみて、いまペットを飼っているみなさんにはなんの参考にもならないだろうと思いました。
それでもこれだけは言わせていただきたいです。
犬を飼い始めた当日のハッピーな気持ちを、人間は自分勝手に忘れていきますが、犬はいつまでも新鮮に飼い主のことを思っているはずだということ。忙しいぼくたちがその気持ちに100%こたえてあげることは難しいかもしれませんが、こたえてあげればあげるほど、「ペットロスを軽減できる」のは間違いありません。
毎日本当にめちゃくちゃ悩みや心配事や、やらなきゃいけないことがあると思います。それでもぜひ、そのほんの合間に、少しでも犬にかまってあげてくれたらうれしいです。
犬はその瞬間を、きっとずっと待っています。


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