世の中にあふれる手帳術。がんばってノウハウを取り入れようとしてもなかなか続かないのは、自分の志向やライフスタイルに合っていないからかもしれません。手帳オタクであり手帳活用プランナーの宮﨑さんが実践する、自分が快適に生きるための手帳の使い方とは?
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手帳術にとらわれると苦しくなる!
私はもともと手帳オタク。普段は会社員であり3人の子どもを持つワーキングマザーですが、手帳好きが高じて2011年ごろから手帳にかかわる活動を始めました。みんなで手帳を書く時間を共有する「手帳朝食会」、手帳の展示会やイベントを主催する「手帳社中」の活動をはじめ、レザークラフトや製本の技術を活かした手帳づくりのワークショップ、手帳の監修やアドバイザーなどを幅広く行なっています。
手帳の使い方を伝えるワークショップも行なっていますが、私はいわゆる「手帳術」を教えるわけではありません。自分の志向やライフスタイルに合った手帳の使い方、手帳との向き合い方を、対話形式で進めています。
手帳術というものは、自分に本当にフィットしている方法であれば苦しくないのですが、術にとらわれて自分をそれに合わせようとすると、苦しくなって継続できません。たとえば「やりたいことを100個書きましょう」という手帳術があったとして、ワクワクしながら100個書ける人はいいですが、「〜しなければ」「〜すべき」という思考に陥ると苦しくなってしまいます。手帳はあくまでも手段でありツール。手帳を通じて自分と向き合い、自分に合った使い方を見つけて、やりたいことを楽しく実行していけるようになることが大切です。
今日は、私がなんのために手帳を使っているのか、どんな使い方をしているのかをご紹介します。ご自身に合った使い方を見つけるヒントになれば嬉しいです。
手帳を使うのはなんのため?
手帳は「整える」ためのツール
ひとくちに「手帳」といっても種類はさまざま。日付入りスケジュール帳、日付の入っていないノート、システム手帳……。種類が同じでもフォーマットは手帳によって異なります。最近では、無地のノートに箇条書きでスケジュールや目標を書いていく「バレットジャーナル」という手帳術も流行っています。
また、用途もさまざま。スケジュール管理やTO DOのほか、ライフログ、日記、デコレーション、いろんな素材をコラージュしたりスクラップしたりするジャンクジャーナルなどなど……。
私が大学生〜社会人になったころはシステム手帳ブームで、手帳をビジネスに活用する男性が急増しました。その後、手帳ブームは下火になりましたが、『ほぼ日手帳』の発売でビジネス以外の利用者が増え、次に『ジブン手帳』の発売でライフログ活用が人気に。時代とともに手帳の使われ方も変化しています。
私は手帳の用途を大きく2つに分けています。スケジュール管理・TO DO・ログなどは「実用の手帳」、つまり、ほかのことをするための手段として使う手帳。一方でデコ手帳やジャンクジャーナルは「お楽しみ手帳」、これは手帳自体を作品として仕上げることが目的の手帳。両方の特性を持った手帳も存在します。私がワークショップなどでお話しするのは主に「実用の手帳」についてですが、どちらにも共通するのは「整えるためのツール」であること。時間、お金、やること、自分の心など、なにかを整えるために使うのが手帳だと考えています。
「ありたい自分」を考える
「なりたい自分」を目指してがんばるのも素敵なことですが、私のなかにより強くあるのは「ありたい自分」という考え方。人の価値観に振り回されず、自分の軸を持つことで、「達成感」とは違う「充実感」という尺度で、自分を慈しみながら人生を謳歌していくことができる。そうすればおのずと、やりたいことも見えてくると思うのです。
私が「ありたい自分」であるために、人生で大事にしている三大事項。それは「時間」「健康」「お金」です。この3つを整えることで、私は暮らしを上手にまわし、ご機嫌に生きていくことができます。先ほど、手帳は「整えるためのツール」と言いましたが、私が手帳を通じて主に整えているのはこの3つです。
ルールがあるから自由でいられる
子どものころから手帳が大好きだった私ですが、これほどまでに手帳にこだわってきた理由は「好き」以外にもうひとつあります。それは、自由でいられるから。
10〜20代のころの私は、感情と行動が直結していて喜怒哀楽が激しい性格でした。なにかに熱中すると寝食を忘れて没頭し、心身のバランスを崩してしまう「過集中」の性質も昔から。大好きな編みものに熱中しすぎて、夫から「編みもの禁止令」が出たこともあるほどです。
行き当たりばったりで行動すると、我に返ったときに「できていないこと」にばかり目が行って自己嫌悪に陥り、気力をなくしてしまう。そうやっていつも自分をひどく消耗していたので、社会人になるときに「自分で自分をコントロールできるようになろう」と決め、それまではスケジュール管理や日記に使っていた手帳を「自己管理」に活用することに。そこから、手帳を使って自分が快適でいられる状態を探すようになりました。
たとえば現在は、曜日ごとに1日の時間割をつくっています。時間割通りに行動するのは大変そうと思うかもしれませんが、会社、手帳の活動、家庭……とやることが多いので、時間割を決めないと自分の時間を捻出できません。いまは週4回ジムに行くことと、コーチング試験に向けて勉強することを優先しているので、そのために家事の時間をいかに短縮するかを考え、自分との約束として時間割を手帳に書きます。自分で決めたルールがあるからこそ、私は自分の時間を最大限につくり、自由でいることができているんです。
自分が快適で楽しく生きられる状態を探り、自分に嘘をつかず、自分との約束は守る。私にとって手帳と向き合う時間は、自分と向き合う時間といえます。