新刊のコラム

上司や恋人、周囲に潰されない“無”思考法

上司からはレスが遅いと怒られ、彼女からは優柔不断で頼りないと言われ、必要以上に考えてしまうことでストレスを溜めていませんか。そんなときは、「考えすぎない考え方」をしてみると楽になるかもしれません。

人間は考えすぎている

人との繋がりがストレスになっていないでしょうか。
上司には詰められ、恋人には叱られ……
自分が悪いのではないかと考えすぎていないでしょうか。

考えること自体はいいことです。
人間はミイデラゴミムシのように100℃のくさい危険ガス噴射する能力はありませんが、他の動物に比べて考えるという能力が優れていたため、生態ピラミットの頂点に立つことができました。

ただし、考えすぎてしまうと迷って決断できない、思い悩んでしまう、思考がネガティブになってしまうといった弊害を生み出します。場合によっては心身の病気にもつながってしまいます。

周囲の人のせいで、あなたが考えすぎる必要はないのです。
逆に考えすぎないほうが、行動力や幸福感が高まり、仕事や人生にいい影響があることがわかっています。

この記事では周りの圧力なんかに負けない、科学に基づいた「考えすぎない考え方」を紹介していきます。

上司に負けない

VS締め切り圧力上司

仕事に対してやたらとプレッシャーをかけてくる上司がいます。
もちろん社会人として期限内に終わらせることは当然ですが、焦らせたり失敗を恐れさせるようなプレッシャーはかえってミスが増えるため、その人は科学的には上司失格と言えます。

北海道大学の村田は、学生を対象にこんな実験を行いました。
モニターに矢印が映り、手元にあるボタンを使って同じ向きの矢印を押すというもので、この作業を3つのグループに別れて行いました。

① 正解しても失敗しても特になにもないグループ
② 報酬500円からスタートし、間違うか時間内にボタンを押せないと、1回につきマイナス2.5円引かれる「罰金制」のグループ
③ 報酬0円からスタートし、1回正解するごとに2.5円もらえる「成果報酬」のグループ

報酬や罰金がミスと関係あるかどうかを調べるという実験です。
この結果、②の「罰金制」のグループだけが、他のグループに比べて大幅に低い正答率となりました。

通常なら難なくできることであっても、「時間内に」というプレッシャーから焦りが生まれ、ミスは増えてしまうのです。

冷静に行動するには、焦りのまま行動するのではなく、ちょっと時間を置いてみましょう。
損を気にして衝動的に動いてしまうことが、もっと大きな損失につながる可能性のほうが高いのです。

VSイライラ上司

上司に「このハゲー! ちーがーうーだろーっ!」など理不尽な八つ当たりをされたとき、どうすればいいでしょうか。

スタンフォード大学のブレッチャートらの行ったこんな実験があります。
この実験では参加者を3つのグループに分けて、それぞれ人の表情を見せます。
通常時の表情を見るグループ
怒った表情を見るグループ
怒った表情を見て、その原因を考えるグループ
この3つのグループの参加者たちの脳の活動を比較したのです。

その結果、もっともネガティブな反応を示したのは、②のグループでした。怒りの表情というのは人のネガティブな感情を誘発するのです。
一方、①のグループにはネガティブな反応は見られませんでした。
そして驚きなのは、③のグループで、ネガティブな反応は見られず、①と同程度の反応になったのでした。

いったい、何が起きたのでしょうか?

③のグループは、人が怒っている原因を考えるトレーニングをしてこの実験にのぞみました。つまり、「怒りをぶつけられている原因は自分ではなく、他にある」と事実を捉え直す訓練をしたのです。

怒りをぶつけられている原因は、自分ではなく他にあると理性的に捉え直すことで、感情を生み出す脳の部位の活動が抑えられ、ネガティブな反応をしなくなります。

「広島カープが負け越しそう」
「好きな声優が結婚した」
「二八蕎麦だった」

事実である必要はまったくありません。
とにかく上司のイライラに理由づけするトレーニングをすることで、人のネガティブに巻き込まれづらくなります。

恋人に負けない

VSなんか冷たい恋人

長く付き合っていると、最近恋人が冷たくなったと感じることがあるかもしれません。
浮気しているのかもしれない、急におしゃれになった気がする、他に相手でもいるのか? など悪い想像がどんどん出てくるかもしれませんが、一度止めて考えてみてください。

「ほんとに恋人は冷たくなったのでしょうか」

コミュニケーションとは情報のやりとりです。話す内容だけではなく、相手の表情や視線、声の高さや大きさ、身ぶりや手ぶりなどもすべて情報で、それらの情報を通して私たちはコミュニケーションをとっています。

割合は学説によって異なりますが、もっとも有名な「メラビアンの法則」を例にすると、言葉だけで伝わる情報は30%程度だと言われています。
言葉も大切なのですが、言葉以外の「非言語情報」はコミュニケーションにおいてとても重要だということです。

たとえば、メールやSNSなどで考えてみましょう。文字中心のやりとりでは、非言語情報がごっそり省かれてしまいます。
そのため、表現に注意しないと誤解が生まれやすくなるのです。「!」「?」などの記号や絵文字、スタンプが非言語情報を補うツールになりますが、これらがまったくないと、言葉がきつく見えたり、冷たい印象を与えやすくなります。

このようなコミュニケーションの前提を知ったうえで、自分が受け取り手になったときの受け止め方を考えてみてください。
日常の中で、相手のちょっとした態度やメールのやりとりなどで、冷たいと感じ取ってしまうことがあるかもしれません。

ですが、好き好んで争ったり、自分からケンカをふっかけたりするような人なんてほとんどいないのです。つまり多くの場合、相手に他意はありません。
そっけない態度、イヤミに見える態度の裏には、「気を配る余裕がない」とか「忙しくて大変」とか、そうした事情があるだけで、特別な意図が込められているわけではないのです。

足りない情報を邪推して相手が冷たい、怒っているに違いないと考えてしまうと、思い違いが生まれやすくなってしまいます。

この邪推をもとに人と接するのはよくありません。
人の心理には「返報性」というものがあり、トゲのあるコミュニケーションをとると相手も同じように接してくるようになり、関係がこじれる原因になります。

どうしても気になる時は前述の「事実の捉え直し」が非常に有効です。

もちろん本当に浮気していた場合、容赦はいりません!

VSデートプランを任せてくる恋人

できれば一緒に考えてほしいのに、デートプランを任されてしまった。
そんなときどうしますか?
東京カレンダーのようなデートプランが練れるわけもなく、プレッシャーがのしかかります。

そしてインターネットで「デート おすすめ」と検索するはずです。
ところがあるサイトには定番の水族館がおすすめされているのに、Twitterで「水族館とか高校生かよ」と書き込まれていたり、店選び用の食べログも人によって評価がバラけているし、選ぶ店でランク付けされてしまいそうだし……
何を基準に決めればいいかわからなくなった経験はないでしょうか。

物事を決めるとき、情報をできる限り集め、もっともいいと思われるものを選びたいと考える人が多いと思うのですが、実は「ベストな選択」をするためにたくさんの情報を集める、時間をかけることは、かえって良くない選択をすることにつながることがあります。

ラドバウド大学の心理学者ダイクスターハウスらは中古車を使ったある実験をしました。
4台の中古車を用意し、そのうち1台だけがお買い得な「当たり」の車となっています。
参加者は
① よく考えて選ぶグループ
② 選ぶための時間が少ないグループ
に分けられて、それぞれ車のスペックについて燃費などの4カテゴリーを説明され、当たりを選ぶことができるのかという実験です。
結果、①のほとんどは当たりを選ぶことができ、②も半数以上が当たりを選びました。

しかしこの実験は前フリで、本命は次の実験です。
シチュエーションは同じですが、説明する量を12カテゴリーに増やし詳しい説明をしました。
すると①のグループの正答率は25%を切り、当てずっぽうと大差ない結果になってしまいました。ところが②のグループは60%の人が当たりを選ぶことができたのです。

②のグループは時間がない分、無意識下で情報に優先順位をつけて合理的選択ができたと考えられます。
一方、①のグループは情報過多による混乱が起き、小さな欠点やマイナス要因が大きな問題のように見えてしまったのです。

センスがいいと言われる人は無意識を上手に使っているのでしょう。
優先順位をつけ、細かいところには目を向けないことで思考の無駄を省きベストな選択をする。そうすれば、恋人に文句を言われることも減るかもしれません。

最終手段

ここまで上司、彼女との問題の考えすぎないことによる解決策を提示してきました。
しかし我慢できなくなるようなときが来るかもしれません。
そうなったときの最終手段をお教えします。
それは、仕事をやめるかやめないか、彼女と別れるか別れないかをコインに任せてしまうことです。

シカゴ大学の経済学者スティーヴン・レヴィットは「人生の重要な選択の場面において、自分で決断できない人はどう決断すべきか」を調査しました。
そのために作ったのが「コイン投げサイト」というウェブサイトです。
閲覧者が今決めかねていることを書き込んで画面上のコインを投げ、表が出たら「実行」、裏が出たら「実行しない」というメッセージが出るという仕組みです。

このサイトで4000人の悩みを集め、「コイン投げの決断によって人生がどう変化したか」ユーザーたちを追跡調査しました。
書き込まれた悩みとして一番多かったのが「今の仕事をやめるべきかどうか」、 次に「離婚すべきかどうか」で、驚くことにユーザーの63%がコイン投げの結果に従って行動していたのです。
さらに驚きの結果は、コイン投げの結果が表だろうが裏だろうが、悩みの解決に向かって何かしら行動を起こした人は、半年後の幸福度が高いことがわかりました。

決断においてはどう決めるかではなく、そもそも決められるかどうかのほうが重要だということです。腹をくくることが、結局の所人生の満足度を大きく左右します。

なかなか決断できないことで悩んでいるときは、たとえば「これから3ヶ月は今の仕事を続ける!」とまず決めて、やめるかどうかはそのあと考えようなど、期限付きで選択してみるのもいいかもしれません。

仕事にしろ恋愛にしろ、次を探すリスクの高さだとか、恩だとかを言い訳にしていないでしょうか。
君の運命の人は僕じゃないことは辛いけど否めませんし、今の仕事は本当にやりたい仕事でしょうか。

停滞が「考えすぎる」原因の一つなのです。ぜひ、前進するために決断を大切にしてみてください。どう転んだって、結局はどうにかできてしまうのが人間なのです。

この記事は、“最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方” 堀田秀吾(著)の新刊コラムです。
グラレコ提供:ゆぴ(17)@milkprincess17
(画像提供:iStock.com/photovideostock)



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