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最新版!コミュニティメイカーの頭の中/佐渡島庸平・佐々木俊尚・寺本昌司

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「コミュニティ」の存在意義とは何か。コルクの佐渡島庸平さん、ジャーナリストの佐々木俊尚さん、「居酒屋ガツン!」の寺本昌司さんに、サードプレイスやオンラインサロンを含む、現代のコミュニティ論について対談形式で伺いました。

「コミュニティ」の定義とは?

ただ、そこにいるだけで安心できる場所を目指す

寺本昌司(以下:寺本):
まずは「コミュニティ」の定義について確認させてください。

佐々木俊尚(以下:佐々木):
最初からとても難しい質問ですね。そもそも「コミュニティ」というのは、自然発生的に生まれるものと、目的があって生まれるものと2つが存在します。

日本では戦後長らく、60年近く企業社会でした。それらは何かしらの目的があってつくられたものであるはずなのに、一方で土着的由縁のあるコミュニティに属することも求められていたのです。

そんな中、会社はコミュニティ――共同体としての色はなくなっていった。個人で働くことを求められ、家庭や職場以外のサードプレイスもどんどん生まれてきています。現在流行しているオンラインサロンなども、それにあたると思うんです。

そこで感じる違和感があります。今あるほとんどのオンラインサロンは、目的が明確化しすぎています。お金儲けとか、自己啓発とか。
そこにいるだけでより安心感を得られる、所属する意味を見出せるコミュニティのほうがいいのではないかと思います。

佐渡島庸平(以下:佐渡島):
会社の中のチームは、プロジェクトを達成したら解散してしまいますよね。コミュニティというものはそうじゃない。プロジェクトの未達に限らず存続していくものです。

よく世間でいわれる「今まではこうだった」という考え方は、僕から見たら、ここ50年の間だけ一時的にそうだった、と思われるものも多い。
そんな中で、なぜかコミュニティというものは自然発生的でなければならないと勘違いされている節もあるのですが、必ずしもそうである必要はないと思っています。

「こういうコミュニティをつくろう!」という目的ありきでコミュニティをつくってもいいのではないでしょうか。実際に、例えば今あるすべてのコミュニティが自然発生的に生まれたかと言われたら、そうではないですよね。
これからは、自分の好きや得意で人とつながれる時代です。そこにいると安心して、のびのびできて、自分のスキルも発揮できる。僕が目指しているのは、生きているのが楽しいと思える人を増やすことです。

寺本:
僕にとってもコミュニティというのは、ただそこにいるだけで安心できる場所を指していました。つい最近、僕が今やっている居酒屋ガツン!を会員制にしたのですが、それも「目的が優先になってしまうと、もはやコミュニティではなくなってしまうのでは」と考えたからなんです。

プライドとさみしさは結びついている

負の感情の解消先をわかりやすいところへ

佐渡島:
人のプライドとさみしさの感情は、密接に結びついています。さみしくなると、心の根っこにある自分のプライドと外部のものを結びつけたくなる心理が働くのではないでしょうか。

佐々木:
自慢する人もそれにあたるかもしれませんね。たいてい、自慢の中身はその方の人生のピークに値するものですから。たとえば、大学時代の頃をやたらと自慢する人は、その人にとってのピークは大学時代だったということになります。

佐渡島:
わかりやすいところに、さみしさや自慢の解消先を求める、ということだと思います。プライドとさみしさは、ものすごく近いところに隣接する感情だからこそ、気をつけなければいけない部分が多い。
本来、プライドというものは良い側面と悪い側面があります。「プライドがある」というとプロフェッショナルですが、「プライドが高い」だとあまり良くありません。
さみしいという感情からプライドを発揮してしまうと、ややこしいことになるという気づきがありました。

成功する人は持続する人

続けると決めたら途中でやめない覚悟

佐々木:
「成功する人は持続する人」とも言われるように、今の時代だからこそ持続性が大事です。一度やったことは途中でやめないこと。

何か新しい取り組みや仕事をはじめたときに、途中でやめずに続けると決めたら、3年でも4年でもやり続けることが最も大切です。長い目で安定するにはそれがいちばんいい。

寺本:
途中でやめてしまうと、何もわかりません。

佐渡島:
僕が先輩経営者に言われたことは、「土日に仕事をしている奴は本気じゃない」でした。

土日まで返上して働くという無理は、長くは続きません。3~4年と続けて事業をやる気がないんだろう、と判断されてしまいます。

寺本:
僕も、そのことに気づくのに3カ月かかりました。「手を抜いているんじゃないか」という強迫観念をずっと感じていたんです。

佐渡島:
僕自身もずっと土日返上で働いていました。焦っていたんだと思います。

佐々木:
手を動かしていると、仕事をやった気になってしまうんですよね。僕も書き物の仕事をしていると、手を動かしていない状態が不安なので、つい雑文を書いてしまいます。

コミュニティ運営の課題点

つくってはい終わり、では永続しない

佐々木:
コミュニティ運営の問題のひとつとして、古参が増えてくる、というのがあります。古参が偉そうにしてしまうと、新しく入ってきた人が萎縮してしまって、最終的にはコミュニティ全体の人数が減ってしまうのです。

運営側はテコ入れのために激しくキャンペーンを打ったりしますが、あまりに強いメリットや成果を求められても嘘になってしまいます。その点が僕にとっても、いまだに課題です。

寺本:
コミュニティというのは、つくって終わりではない。入ったからには参加しているんだという意識も大切だと思います。

佐々木:
1:nのファンクラブ形式になってしまうと、結果的に続きません。n同士で仲良くなれるような仕組みをつくらなければならず、僕のコミュニティの場合は部活制度がそれにあたります。

現時点で上手く機能していて、イベントの回数だと月に4~5回はできています。会員同士の主体的な行動が出てくると、永続しやすいと思います。

佐渡島:
最近受けたコーチングの中で、ひとつの気付きがありました。僕自身、成長するための方法として「自分で自分を不安で煽る」やり方をしているらしいです。
自分に厳しく、人には優しくを地でいっているつもりでしたが、それさえも満足にできないくらいに緊張していたのかもしれない。

成長するためには、自分で自分をリラックスさせる方法も学ばなければいけないんだな、と思いました。

コミュニティの「裾野」がもつ重要性

コミュニティは生き物だ

寺本:
僕自身も、コミュニティは生き物、ひとつの生態系として捉えています。常に手を入れ続けていないと、たとえば人間関係が原因ですぐに解体してしまうこともある。

今までは、成果をあげられる人がコミュニティの中心に立っていました。ですが、コミュニティには裾野があり、そこ自体に魅力があることに気づいたんです。

居酒屋ガツン!のこれまでの運営方法は、たとえば、サバンナにライオンを放つようなイメージでした。強い者を放てば勝手に育っていくだろう、と。それでも、ライオンしかいないようなコミュニティは育っていかないんです。

佐渡島:
強い人間しかいないコミュニティは育っていきません。何度も仕事を教えなければならない存在がいないと、コミュニティは強くなっていかないのです。

佐々木:
8:2の法則にも通じるかもしれませんね。働きアリの8割はよく働いて、残りの2割はサボってしまう。よく働く8割の働きアリのみ残したとしても、次はその中の8割がよく働いて、2割はサボるようになってしまう。働かない人はどうしても出てきてしまいます。

会社をコミュニティ化するには

成果を第一目標に置かない

佐渡島:
会社をコミュニティ化するのはすごく難しいです。これまで、日本企業はゆるやかに成長していくことが保証されていました。結果を求めなくてもよかったんです。

それでも、会社として達成すべき目的がある以上、社員に給料を支払わないといけない。その上で、チームメンバーとしての動きを求めることは比較的簡単ですが、コミュニティとしての振る舞いを強要するのは難しいと思っています。

その点、コルクラボにはお金を稼がなきゃいけないという目的が存在しないので、コミュニティ化できます。

たとえば、先程も挙げた部活制度。運営部に「コミュニティの人数を増やす方法を考えよう」と課題を与えるだけで、動きが活発化します。

佐々木:
今のコミュニティに求められているのは、文化共有です。たとえば、世界観がしっかりつくり込まれているような雑誌のファンだとして、地元でひとり読んでいるだけでは広がっていかない世界も、ひとたび書店に行けば同じ仲間と出会える確率が上がります。
ある種、雑誌というものは単なる情報の経路でしかないけれど、雑誌というものが文化形成・共有の一端を担っているともいえる。ハブ、インフラにもなり得ます。
今ではすっかり雑誌の効力が落ち、文化共有の場が少なくなってきています。50代60代の人間が関わるステージから、Webメディアへ移行することによってまた広がりが生まれる。いわば、新しい文化空間を支えるものをみんなでつくり上げる必要があります。

コミュニティで解決できる課題

問題を解決する「行動」を起こす場=コミュニティ

寺本:
文化をつくるには、問題を解決しなければなりません。たとえば会社の問題といえば「利益を上げる」などが挙げられますが、コミュニティや人間関係における問題といえば、一緒に飲みに行ける仲間がいない等が挙げられます。

そういった問題が起こったときに、飲み友達をつくるために行動する場にする等、そのために存在し得るのがコミュニティというものなんじゃないかと最近気づきました。

佐々木:
友達をつくりたい人は多いですよね。会社の同僚は、友達ではないですから。

佐渡島:
近くの誰かとつながることが大切です。それ自体がとても難しいことで、できていないという自覚すらも得られないことが多いのですが。

会社や学校など強制的なコミュニティが発生したら、その場で発生した人間関係によって「誰かと結びついている」という感覚が生まれるでしょう。しかし、それは物理的に結びついているだけに過ぎないんです。精神的に結びつかないと駄目になってしまう。

ですが、精神的に結びつくためのやり方やマナーを知らない場合も多いです。自己紹介の仕方も、名刺を渡す以外に知らない大人の方が多数派です。楽な方法に流れずに、その場その場の空気をみて、自分がどんな人間かを伝える努力をすることも大切です。

偏るコミュニケーション能力

重視すべきは傾聴力

佐々木:
大企業の名刺を持っていても仕方ないような今の時代の場合、もはやコミュニケーション能力で勝負するしかありません。

それでも、コミュニケーション能力とは、今の日本では立て板に水のようにまくし立てて話すやり方に偏りすぎている。人の話を傾聴する姿勢が、あまり重視されていません。

たまにテレビに出演する際につらく思えてしまうのは、まずは登場人物の多さです。当てられるのを待っていると、番組内でいつまでも話せない可能性も出てきます。カットイン、割り込むという能力が求められるのです。この方法をとっていると、だんだん心が参ってきます。
その点、ラジオの魅力は登場人物の少なさです。あまりにたくさんの人が出演して一気に話したらリスナーを混乱させてしまうので、せいぜい2人か3人。そして、1人が話し終えたら次の人が引き受けるという流れが自然とできています。

静かな議論ができ、喧嘩にもなりにくいというメリットがあります。そういった、落ち着いたコミュニケーションを重視すべきだと思います。

佐渡島:
テレビに出ているタレントさんや芸人さんは、カットインが上手です。だからこそ多くのテレビに出られるのだと思いますが、その反面、人間力を有しているかといえば一概にそうとはいえない側面もあるのではないでしょうか。

僕の知っている経営者も、意外と寡黙な人が多くいます。いい経営者ほど、話さない・黙っているコミュニケーション力を極めているんです。

コミュニティを上手く使うには

人間性を高める場として活用する

寺本:
僕は、人間性を高める場としてコミュニティを使ってほしいと思っています。そこに気づける大人にならない限りは、そもそもコミュニティ論を語れません。

佐渡島:
人間性はどうやったらアップデートできるかという話よりも、スキルのアップデートについての話が主流になってしまいました。その時期が長く続いていましたが、ここでまた人間性の波がきていると思っています。

寺本:
人間性の波がきているけれど、きてほしくないと思っている人も多いのかもしれません。

佐渡島:
スキルを磨くほうがワクワクする人が多いのでしょう。

佐々木:
ベーシックインカムが導入され、月に20万円、働いても働かなくてももらえる状態になったとしたら、広場に行って議論する人と1日中スマホゲームをして終わる人と2種類にわかれると思います。
ただ、そこに良し悪しはないと思ってもいます。全員が全員、人間性をアップデートする必要はありません。

寺本:
いろいろな人がいてもいい、いて当たり前です。コミュニティそのものも、そういった視点から選ぶのがいいと思います。

(画像提供:iStock.com/Rawpixel)

佐渡島庸平(さどしまようへい)
株式会社コルク 代表取締役
2002年講談社入社。週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年講談社退社後、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテイメントのモデル構築を目指している。


佐々木俊尚(ささきとしなお)
1961年兵庫県生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。毎日新聞社などを経て2003年に独立し、テクノロジから政治、経済、社会、ライフスタイルにいたるまで幅広く取材・執筆・発信している。総務省情報通信白書編集委員。「そして、暮らしは共同体になる。」「21世紀の自由論~『優しいリアリズム』の時代へ」「キュレーションの時代」など著書多数。


寺本昌司(てらもとしょうじ)
ガツン!店主。
「最高の社交場を作る」というビジョンを掲げ、ガツン!を運営中。
「周りにいい影響を与える人を集める」のが、仕事です。
自分の頭で考えて行動してる人が好きで、とりあえず押されてる、いいね!が嫌いです。



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