少しでも時間があれば、スマートフォンを片手にSNSやアプリをこまめにチェック。コツコツと集める情報ほど、自分の役に立っていないものばかり。思い当たるあなたは「インプット中毒」にかかっているのかもしれません。
目次 日本人は、1日あたりのスマートフォン利用時間は、3時間7分(ニールセンデジタル調査結果 2018年3月)になっており、細切れ時間をアプリやSNS利用に時間をかけています。とにかく、空いた時間は、SNSやニュースなどのチェックに余念がない。あふれ出てくる面白いネタや情報をキャッチしながら、画面をスクロールして、情報を消費するようにインプットしていくシーンが増えました。 私たちの日頃の疲れは、仕事やストレスによるものと考えられています。本当の原因は、たくさんの情報を得ることに夢中になり過ぎている「インプット中毒」(医学用語ではなく、私が勝手に作った造語です)が原因なのでないでしょうか。 「インプット中毒」は、スマートフォンにだけにとどまらず、本や雑誌、テレビや動画という様々なコンテンツのインプットも含みます。インターネットに奪われて、旧来のメディアに触れる時間は減ったもののゼロではありません。気になるものがあれば、自らの意思でインプットしようとしています。 考えてみれば、子供の頃、勉強のために覚えようと思って勉強しても、翌日には忘れていませんでしたか。 世の中では、情報量が爆発的に増えた話を耳にしますが、事実なのでしょうか。実は、同じ情報を複製したり、二次的に流用したり、という形でオリジナルな情報が少ないのです。 問題なのは、目の前に現れてくる雑多な情報の波に惑わされて、消費されるだけの情報に時間を使ってしまうことなのです。このインプットは、誰かに伝える価値も感じていないので、アウトプットされることもありません。1週間前のニュース、3日前の夕食など、よほどのエピソードがない限り、忘れてしまうものです。 色々なことを学び、吸収しようと取り組むインプット活動の目的はどこにあるのでしょうか。 何かを学ぼうとしたインプットというものは、最初はとても新鮮に感じます。知らない世界や分野であれば、間違いなくワクワクさせられるもの。ところが、インプットが続いていくと、途中で興味が失せてしまう場面に遭遇します。 アウトプットとインプットの関係性を考えるうえで大変参考になるのが、精神科医の樺沢紫苑さんの『学びを結果に変えるアウトプット大全』(2018年)です。学んだことをどうやって、自らアウトプットしていくのが良いのかを徹底的にまとめた一冊として、大ベストセラーになりました。「インプット中毒」にかかっていませんか?
疲れの原因は、「インプット中毒」によるもの
インプットは単純に、自分が興味のあること、もしくは、目の前に流れてくる様々な情報を吸収していくプロセスです。意識的にインプットをするケースであれば、受験勉強や資格取得、趣味の為に、必要に迫られたものになります。無意識的にインプットするケースでは、テレビのCM、ネットサーフィン時に見かけるネット広告、習慣のように見ているアプリのコンテンツなどがあたります。
「インプット中毒」とは、無意識なものも含めて、ひたすら情報をキャッチし続けて、情報洪水の中で、何が本当に自分に必要なものなのか判断がつかなくなる状態だと私は考えます。大量に流れる情報に圧倒されて、新しい情報の真偽も見分けられなくなります。さまざまなインプットが増えすぎて、脳の活動がストップしてしまうかも
さらに、セミナーや勉強会などのように人との交流が伴うようなインプット機会の場も増えて、アクティブな活動を続ける人もいます。毎日のように参加されていると、そのうち、今回のテーマや目的がわからなくなり、とにかく出席しつづけることに生きがいや高揚感を得るようになります。いわゆる、ナチュラルハイな感覚なのですが、実際は、脳の活動としては限界に近づいています。
手に入れた情報の内容を忘れ、相手に伝えようとしても言葉として表現できないという結果に陥ります。
最終的に、「インプット中毒」になっていると、情報への感度が鈍ります。明らかに脳みそが情報量に対して、オーバーヒートしています。脳の活動がストップしてしまうので、テンションも下がっているように感じ、周りからはやる気を失ったように誤解されてしまいます。ここまでくると、情報をシャットダウンするぐらいのアクションを行わないと、人間の脳としての限界が迫っています。人間の脳はインプットするほど忘れていくもの
一生懸命繰り返して覚えたはずなのに、自分の記憶力の悪さを嘆いたものです。一夜漬けで試験勉強をしたことなんて、テストを終わってすぐに忘れても人生に大きな影響を与えることはありません。
記憶に関する実験結果として、エビングハウスの忘却曲線はご存知でしょう。1日後には66%の覚えたことを忘れているという事実に対して、短期間に復習すると記憶が定着していくので、こまめに復習することの大切さとして教えられてきました。
ところが、そこまで頑張って覚えたことも、大人になってしまうと、日常生活や仕事に関係のないことであれば、確実に忘れていくものなのです。増えた情報量には類似なものが多い
類似的な情報が多いのであれば、繰り返し入ってくる情報は脳に定着してきます。これは、個人にとって重要なものとして扱われていきます。また、情報の取捨選択が偏ることで、この傾向は強化されていきます。
類似な情報は、インプットのスピードも速く、記憶として定着され、安定的な知識として自分の中にキープされていきます。消費されるだけの情報に時間を割かない
つまり、消費されるだけの情報のインプットには労力を割かず、むしろ、減らしたほうが疲れもストレスも生まないという仮説が成り立ちます。インプットのゴールはアウトプットなのでは?
インプットそのものを目的にするのは、知識量が博識とされていた時代までで終焉を迎えています。今の時代、知識は検索すれば簡単に見つけることができます。
インプットのゴールはどこにあるのかと真剣に突き詰めると、何らかのアウトプットを目指しているという前提にたってかんがえなおしてみましょう。インプットは役立てないと無駄になる
これは、インプットした結果、活用すべき場面が用意されていなかったことが要因です。
例えば、テーブルマジックに興味を持って、練習を繰り返して身につけたとしても、披露する機会がないと、そのインプットにかけた時間や労力は無駄になります。せめて、人前で見せるというアウトプットは事前に組み込んでおきましょう。アウトプット中心に考えて、インプットをしよう!
今年、樺沢紫苑さんが書かれた『学び効率が最大化するインプット大全』(2019年)では、インプットの秘訣をまとめています。インプットしたものを取捨選択して、いらないものを捨ててしまうというアイデアも盛り込まれています。アウトプットのゴールを意識して、必要なものだけをインプットしていれば、情報量がパンクして「インプット中毒」にかかることなく、充実したい毎日を送ることができるのではないでしょうか。
(文 安斎 輝夫)(画像提供:iStock.com/Halfpoint/tommaso79/Khosrork/Nattakorn Maneerat)
この記事は、”学び効率が最大化する インプット大全” 樺沢紫苑(著) の新刊コラムです。
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