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「王道」AKB48を失速させた、「笑わないアイドル」欅坂46

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「笑わないアイドル」欅坂46の人気に見られるように、古くからの常識が変わりつつあります。「より上へ、より多く」という価値観は過去のものとなり、今のトレンドは「より少なく、シンプルに」。こんな時代の指針となる「ミニマリスト」という生き方とは。

「常識をそぎ落とす」ことが価値になる時代

ショートカットで無表情、常識破りのセンター

「笑わない」アイドル、欅坂46が人気です。「アイドル」から「笑顔」を差し引いたところ、クオリティの高いダンスパフォーマンスが注目されるようになりました。
センターは、平手友梨奈。ショートカットで、化粧っ気もなく、無表情。男性ウケを自然と狙ったヘアメイク、愛想を振りまく従来のアイドルとはまさに真逆です。

2018年9月には初主演映画『響-HIBIKI-』も公開され、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いと言っていいでしょう。同作では「15歳の天才小説家」という難しい役どころを見事に演じ切り、高い評価を受けています。

欅坂46は「こぼれるような笑顔と、かわいらしいルックス」というアイドルの常識を、根底から覆しました。彼女たちを知ってしまった今、いかにもアイドルらしい振る舞いのAKB48グループがどこか色褪せて見えてくるのは、私だけでしょうか。

しかし、振り返ってみると、いまやグループ内外を問わず活躍しているHKT48の指原莉乃さんも、「アイドルは清純なはず、自虐ネタや下ネタを言わないはず」という世間の思い込みを覆し、何より、“文春砲”を受けながらも、その経験をバネに(?)あっという間に出世した「異例の」アイドルでした。

指原さんは2017年、圧倒的な票差で史上初の“総選挙3連覇”を達成。清純な正統派アイドルを貫いた“まゆゆ”こと渡辺麻友さんは、残念ながら最後まで太刀打ちできませんでした。
そして、その結果に異論を唱える者はもはやおらず、革新的なやり方で自らの地位を築いてきた指原さんの姿は、まさに女王そのものでした。

考えるべきは「何をするか」よりも「何をしないか」

アイドルを例に挙げましたが、世の中を見渡してみると、「常識を壊すこと」で人気が出たり、話題になったりするケースはけっこうあります。

たとえば、ゴールデンボンバーBiSHといった「楽器を持たない」バンド。ゴールデンボンバーは、登場時は完全にイロモノ扱いでしたが、紅白歌合戦の風物詩的存在にまで上り詰め、今なおCMにも引っ張りだこです。

芸能だけでなくビジネス方面にも目を向けてみると、アパレルショップのアーバンリサーチは「声かけ不要バッグ」を導入。「店員から声をかけられることなく、自分のペースでゆっくり洋服を選びたい」というお客の声に応えるものとして、大きな反響を呼びました。

また、東京・神保町の定食屋「未来食堂」は、一般的なメニューがありません。基本的に「日替わり1種類」しかないため、忙しい昼休みに着席してすぐに食事がとれる、使い勝手のいい店として口コミで人気に。さらに50分のお手伝いで1食無料になる「まかない」という仕組みがあり、店主以外に人件費はかかりません。“当たり前”よりも“効率性”を重視し、十分な黒字経営を続けているといいます。

今は、「これは要らなくないか?」と勇気を出し、常識だったことをやめた人間が評価される時代です。物や情報が溢れ、余白のない時代だからこそ、「何をするか」よりも「何をしないか」の価値がどんどん上がってきているように思います。

「少ない」「シンプル」で支持を集める無印良品やユニクロ

「もっと上へ、もっとたくさん」を目指した昭和時代。そして、平成も30年が経過し、終わりを迎えようとしている今、「多くていい」と評価されるものは、ほぼありません。

今、評価されるのは、「少ない」「シンプル」なもの。まんべんなく商品を並べたお店より、何かひとつ、際立った売りがあるお店に行列ができます。

改めて身の周りに目を向けてみても、世の中は、過剰なものがそぎ落とされ、どんどんシンプルになっています。
車は初期費用も維持費も安く済む軽自動車が人気ですし、むしろ車は所有せず、レンタカーやカーシェアで「利用する」という大きな流れもできています。「ジミ婚」はずいぶん前から流行っていましたが、お葬式も家族葬でシンプルに済ませるケースが増えています。

「少ない」「シンプル」で思い浮かぶ具体的なブランドを挙げるなら、無印良品やユニクロ。けっして熱狂的なファンが多いわけではないけれど、ポジティブな「これでいい」と思えるデザインで、多くの人が、購買行動をする上での選択肢のひとつに入れています。
「140字だけで伝える」ツイッター、「写真+キャプションだけで伝える」インスタグラムといったSNSが市民権をここまで得たのも、時代の流れでしょう。

「強調」こそがミニマリズムの本質

そして、忘れてはならないのがApple製品です。取扱説明書がなくても、誰でも直感的・感覚的に使いこなせる操作性。そして、Appleと聞けば誰もが思い浮かべるあのリンゴマークを強調するために、極限までそぎ落としたデザイン性──。

そう、Apple製品の本質は、「シンプル」を超えた「ミニマル」──ある1点を目立たせるために他をそぎ落とす「強調」にあります。「ミニマル」とは、「最小限の」という意味を持つ言葉。
元は「ミニマル・アート」という美術の分野から発達した「ミニマリズム」を設計思想に持つApple製品が、こんなにも広く支持されている(時価総額世界1位)というのは、現代が「Less is more」な世の中であることの証明とも言えるでしょう。

そして、「より少なく、しかしよりよく生きる」を信条とし、福岡の家賃2万円の部屋に、生活費月7万円での暮らしぶりが話題のミニマリストしぶさん。彼は「ミニマリスト」を職業とし、服や靴は毎日同じものを着用。1日に食べるのは1食だけ。ベッドやテーブル、テレビ、冷蔵庫といった一般的な家具・家電は持たず、基本的に床で寝ています。

「自分にとって、何が幸せか」を知り、それを強調していく作業

もともとは、裕福な家庭に生まれ育ったというしぶさん。しかし、父親の自己破産により、家庭は崩壊。なんでも手に入った生活が一変、「お金がない」状況へ転落しました。そんなときに出会ったのが「ミニマリズム」という考え方でした。

このように、しぶさんのミニマリズムのスタートは、完全に「節約」の意味合いが強いものでした。しかし、持たないこと、お金を使わないこと、そして、そのお金を稼ぐための労働をしなくて良いこと──ミニマリズムの実践を通して、彼をがんじがらめにしていた「お金がなくては幸せになれない」という固定観念が、次々に打ち砕かれていったそうです。

しぶさんは言います。「今が、これまでの人生で一番幸せ」と──。
着る服も毎日の食事も固定化。使うお金や悩む時間をそぎ落とし、浮いた分は自分の好きなことに充てる。何もない部屋で、ブログを書いたり読書やゲームをして過ごせばそれで満足。余計な物を置いていないので、雑念に邪魔されることもなく、集中して取り組むことができるのだとか。

ミニマリストというと、どうしても「物を持たない人」と思われがちですが、それは半分合っていて、半分は間違いです。物の多寡が問題なのではありません。
自分にとって大切な「強調」すべきポイントを知った上で、それ以外の「無駄」を極限までそぎ落としていくことが、ミニマリストのあるべき姿。よくイメージされがちな「物をバンバン捨てる」さまは、そのための事象のひとつに過ぎません。

「自分にとって、必要なもの」だから、しぶさんはApple製品も持っているし、ダイソンのドライヤー(4万円)や、ドラム式洗濯乾燥機(型落ちで14万円)も惜しみなく購入。部屋の掃除は床拭きロボットのブラーバにお任せ。
苦手な掃除や洗濯の手間から解放され、いかに時短を図るかを考えた結果、こうなったそうです。かけた金額も、受けた恩恵を考えればすでに十分元が取れていると言えるでしょう。

「何にお金を使い、何に使わないか」を知ることは、「自分にとって、何が幸せか」を知ること。最小限のお金と物で生きているしぶさんは、とても幸せそうに見えます。
「これは絶対に必要」「これを持っていないと幸せになれない」と持ち続けているものは、あなたにとって本当に必要ですか?

まずは「常識」を疑うことから、はじめてみましょう。

(文 尾久まる子)

 

(画像提供:iStock.com/Masafumi_Nakanishi/yuliang11/ExperienceInteriors/Spiderstock)

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