最近、スマホさえあれば何もいらない、とテレビや冷蔵庫すら持たず、狭い部屋で暮らす人たちが増えてきています。そんな若者たちから絶大な支持を得る職業=ミニマリストのしぶさんが、「お金・人・時間から自由になれる生き方」についてご紹介します。
目次
狭い家に引越す
物を減らしたいなら、絶対にうまくいく方法がひとつある。それは「今より狭い家に引っ越す」こと。狭い部屋に引っ越せば、強制的に物を減らす必要性が生まれる。あなたも、引っ越しのときにごっそり物を捨てた経験はないだろうか。人を変えるのは意思の力ではなく、環境の力だ。だから、「捨てよう」と努力するよりも、まずは「環境」を変えるのに100%の力を注ぐこと。そうすれば、環境に合わせて自身の行動もおのずと変わっていく。
僕の場合、大型家電の洗濯乾燥機ひとつを除けば、持ち物すべてがキャリーケースひとつと、リュックひとつに収まる。 実際に過去、ひとり暮らしをした部屋から都内のシェアハウスへ上京したときは、 キャリーケースひとつだけで引っ越しを済ませた。
使っていない物のために広い部屋に住むのは、スペースに対して無駄に家賃を払っているのと同じこと。「物が増えたから、トランクルームに預けよう」などというのも、その最たるものだといえるだろう。 「所有」にはコストがかかる。 手荷物を預けるためのコインロッカーにさえ、お金と管理する手間暇がかかるのだ。
逆に、無駄な物を減らせばその分、狭いスペースで満足できるようになるので、家賃の安い部屋に住むことだってできる。
なにより、少ない持ち物で、小さい部屋に住むことで、フットワークも軽くなる。
「出口戦略」を考えて増やす
僕は毎年、iPhone を新型に買い換えている。「物を大切に使うのがミニマリストなのでは?」なんて声も聞こえてきそうだが、これには明確な理由がある。iPhone には、理想的な「出口」があるのだ。
Apple 製品は需要が高いので1年使って中古で売れば、購入時の6〜7割の金額が戻ってくる。だから新型であっても、少ない持ち出しで買えるし、売ることが前提なので自然と大切に扱うようになる。
これからの時代、「出口戦略」を考えて物を買うことが不可欠になっていくだろう。 たとえば、フリマアプリのメルカリでは、ありとあらゆる物が売られている。なんとメルカリでは、使用済みの口紅でさえ、先端部分をカットすれば数千円で売れるのだ。フリマアプリの普及により、「物の流動性」は飛躍的に高まった。流行に敏感な女性は、「流行の服を新品で買い、流行が終わる頃にフリマアプリで売る」なんてことをやっている。
そうすることで、「最新のおしゃれをしたい」という欲求を満たしつつ、「あとから流行に乗ってきた人」に洋服を売ることで、結果的に安い金額で洋服を楽しむことができるのだ。トレンドに敏感であることが、経済的に得する仕組みになっているのは興味深い。
僕の考える物の理想の出口は、「売る」「譲る」「使い切る」のどれかだ。
悪い出口は「捨てる」ことで、「使わないのに、持ったまま眠らせる」というのも同じくらいよくない。物の出口を考えることは、これからの「シェアの時代」に欠かせないスキルなのである。
食欲をコントロールする
人からよく「どうやったら食欲を抑えられますか?」と聞かれる。僕は1日1食の生活をしているので、超絶な精神力や忍耐力を持っているように見えるらしい。
食欲を抑えるには、食欲は「我慢」するものではないと知ることが重要である。
食べたい気持ちを我慢して、1日や2日、あるいは数週間ダイエットに励んだとしても、その先に待ち構えているのは「リバウンド」という現実だ。
減食の鍵となるのは「腸」。 医学の父といわれているヒポクラテスが、紀元前に「すべての病気は腸から始まる」と言ったといわれている。
さらに最近は腸の研究が驚くほど進んでいて、肌荒れはもちろん、やる気が出ないのも、夜に眠れないのも、アレルギーも、誘惑に負ける弱さも、食欲が止まらないのも、すべては腸のせいだということが科学的にもわかっている。
食欲をコントロールできないのは、腸が荒れ、脳の食欲中枢が暴走しているせいなのだ。つまり、食べ物が悪いために食欲も抑えられないし、食事を制限しようにも、意志の力が弱っているからあてにならない。
もし、本当に食欲を抑えたいなら、まずは食べ物を変えること。そうすることで、 回数や量などの食べ方も変わり、あなたの食欲は落ちついていくだろう。
僕が1日1食生活を続けていられるのも、その1食の内容をしっかり吟味しているからだ。もし、その1食にカップ麺や菓子パンを食べていたとしたら、食欲は抑えられず、長続きしなかったことだろう。
どんな成功ノウハウよりも、いちばん大事なのは「食べ物を変えること」で はないかと思う。どんな状況でも、その判断を下すのは人間の脳であり、体である。 適切な判断のためには健全な体が必要で、その体は、普段口にする食べ物で構成されているのだから。
生活の水準を上げず、 満足の水準を下げる
〝1Kでバストイレ別で64000円が安いなんて感覚に慣れるとは思ってなかっ た〞というのは、ゲスの極み乙女の曲「某東京」に出てくる歌詞だ。
家賃2万円の家に住んでいる僕でさえ、この歌詞に共感している時期があった。
僕が東京にいた頃に暮らしていたのは、家賃が月4万5000円のシェアハウス。 東京に住む以上、生活コストが上がるのは仕方がないし、「できるだけ生活水準は上げたくないから」と、シェアハウスに住むことで家賃を極限まで抑えていた……はずだった。
都内でひとり暮らしをしようとすると、家賃は8〜万円が相場だ。いくら自分に
いい聞かせても、冒頭の歌詞にあるような「1Kの6万4000円が安い」という感覚をぬぐい切れなかったのである。
だから僕は東京を離れ、福岡に戻ることにした。「贅沢にはすぐ慣れるが、貧乏に慣れるのは難しい」という言葉がある。親の自己破産で生活水準のジェットコースターを経験し、強く意識していたはずの僕でさえそうなのだ。
だから、満足の水準は下げられるだけ下げておいたほうが得策である。そう思い直した僕は今、福岡で家賃2万円の家に住んでいる。
100万円の腕時計を買って喜んだところで、上を見れば1億円する腕時計がある。 でも「時計はブランド物じゃなくても、防水性と耐久性が高ければそれでいい」とわかれば、「3万円の時計で満足」が、自分にとっての天井になる。
しかし、僕が福岡から東京へ出て生活コストが上がったように、環境の変化で「生活の水準」を変化させざるを得ないときもある。東京に住まなければならない理由がある人なら、高い生活コストを払ってでも東京に住む必要がある。
それでも大事なのは「生活の水準が上がらざるを得なくても、満足の水準は上げない」こと。
また、あらかじめ「自分の天井を把握する」ことも大事だ。 「世界ナンバーワンの芸術品を買うには1億円でも足りないが、iPhone は、世界最高峰の技術でありながら、 10万円程度で買えるから安い」
このエピソードを聞いて、僕は深くうなずいた。
芸術品の他にも、グルメ、オーディオなど「青天井」の物は多いので、深入りし過ぎないに限る。もちろん好きならかまわないが「スピーカーは3万円で満足」といった具合に、自分の天井を把握しておくといい。
見栄を手放し、最小限のお金と物で暮らそう
マキシマリストの家庭で育った僕は、お金や物を無限に持つ幸せを知っている。
流行モデルのあれがほしい、友達のあいつが持っていたこれも買わなくちゃ……まさに無限。キリがない欲望と、それを叶えるだけの(親の)お金が、僕の手に数え切れないほどの物を持たせていた。
物で自分を表現する方法しか持たなかった僕は、親の自己破産という「強制終了」 とともにすべてを失った。そこからの数年間は、苦く、恥ずかしい思い出ばかりだ。 口を開けば不平不満をいい、打ち込むべきことも持たず、それでいてプライドだけは高い。
そんな僕に光を与えてくれたのが、ミニマリズムであり、そのすばらしさは、書籍「手ぶらで生きる」に詳しく書かせていただいた。
今の僕は、ブログ収入だけでも十分に食べていけるようになった。
正直、月に7万円以上の収入だってある。
でも、僕はこの先もずっと、手ぶらで生きることを選んでいくだろう。
お金も、見栄も、僕には必要ないものだから。今だからわかる。
僕は、手ぶらになったから変わったんじゃない。
見栄っ張りでクズの自分を心底変えたくて、無我夢中で手ぶらになったんだ。
だから、もし「今の自分があんまり好きじゃない」「心から満足できない」という人は、まずは見栄を手放し、最小限のお金と物で暮らしてみてほしい。最初はごく小さな変化しかないかもしれないけれど、やがて大きく変身した自分と出会えるから。
やりたいことがなにもなかった僕が、自分を取り戻すきっかけになったミニマリズム。このミニマリズムのよさを伝えていくことに、僕は今、心からやりがいを感じている。