コンプレックスでご飯を食べる方法

9浪して早稲田に入ったけど…。学歴コンプを克服しても消えなかったモヤモヤの正体とは?

#連載エッセイ
#コンプレックスでご飯を食べる方法

学歴コンプレックスを克服した先に待っていたのは、自分の努力では変えようがない「生まれながらのコンプレックス」でした。

前回書いた一本目の記事では、私が9浪して早稲田に入ったあと、そのマイナスを武器にして夢だった書籍の商業出版に至った話を書きました。

私は「9浪」を前面に押し出し、継続して発信し続けたことで、マイナスをプラスに変えることができました。ただ、「9浪したことだけ」を発信しているだけでは効果がありません。自分のことを認知してもらうためには、9浪に至る原因となった原因を発信し続ける必要があると思いました。

そのためには私は、多くの人ができれば隠したい「自身のコンプレックス」を深堀ったのです。

きっと誰しもが、自らの人生の中で、自身の恥ずかしい過去や経験と向き合うことを避けた経験は、あるのではないかと思います。

私はコンプレックスだった「9浪の経験」を表に出すようになり、ある程度の人に受け入れてもらうようになりました。発信を続けていくうちに、さらに深いファンをつけたいと考え、その「浪人の原因になったさらなるコンプレックス」を分析し、浪人に紐付けて、発信するようになったのです。

私の学歴コンプレックスは、早稲田に受かったことで解消されました。しかし、出自のコンプレックスに関しては、大学に通って1年が経過しても、解消されることはありませんでした。私が思うに、コンプレックスは浅いものと深いものがあります。

この「学歴コンプ」は、周囲への嫉妬から生じる表面的なものだったので、周囲と同じ学歴を得ることで解消しました。でも、後者を解決するにはまた複雑な問題がありました。「生まれ」という先天的な要因が、自分の努力ではどうしようもできないからです。

「自分の実力だけではどうしようもできない」ことが、自分の中で根深いコンプレックスになっていたのです。

私が大学や課外活動を通して出会った周囲の早稲田生や、浪人経験者と比較して、あきらかに浮いている要因が、自身を苦しめていたのです。

・田舎の年収200万生まれの家庭出身
・家庭に大卒者がいない
・偏差値40の教育困難校の商業科出身

大学で同質の人間がいないことに思い悩んだ日々

多くの難関大学の学生や浪人経験者は、教育投資を受けたり、進学に有利な情報を周囲から得たりしていました。たとえば私が入った教育学部国語国文学科は2018年に137人が入学。4クラスあって、1クラスに30~40名いたのですが、ほぼみんな関東の中高一貫校の出身で、関西出身は自分だけでした。

都会で塾でアルバイトしていたとき、東大生に「大学に行かないなんて家庭があるんですか?」と言われて衝撃を受けたこともあります。私の地元は「大学なんか行くよりも働け」という真逆の価値観がマジョリティで、受験勉強をすることを妨害されることもあったからです。

私のような家庭環境・学校環境から浪人し、首都圏の大学に通っている方はとても少ないように思えました。

だからこそ、大学に通って楽しい生活を送れていても、真の意味で自分を理解していただける人がいないように錯覚して、とても孤独な毎日を過ごしていたのです。自分みたいな場違いな人間がこんなところに存在していいのかと、とても悩んでいました。

また、自分の家庭状況を赤裸々に話し、やりきれない感情を吐露することは、自己責任論が強い日本では、言ったら多くの人に嫌われるであろうことを十分に自覚できました。当時すでに私は学校で友達ができて、それなりに楽しく生活をしていたので、賛否が別れる発信をすることを非常に悩みました。

自身の醜い感情を発信することで、周囲に引かれたり、嫌われたりして今までの生活が変わってしまうのではないかと思ったのです。

しかし、自分と同じような境遇で大学に通う人や、働きながら不利な状況で浪人をしている人も必ずいるとも信じていました。