頑張り屋さんで真面目な人ほど、メンタル的に沈んでしまうことは多いと思います。うつの当事者が試行錯誤しながらたどり着いた「疲れないための対策」についてご紹介します。
22歳でうつ病を発症し、これまでに5回の再発を経験したデラさん。そこから、頑張りすぎることをやめて、エネルギーを消耗せずにうつ病になった今の自分が「どうすれば生きやすいか」を考え始めたといいます。
著書『うつ病で20代全部詰んでたボクが回復するまでにやったこと』(サンクチュアリ出版)では、デラさんがうつ病を経験し、その間に試行錯誤を重ねた様子が赤裸々に記されています。
今回は、メンタルトレーナーの古山有則さんとデラさんのお2人が「頑張り屋さんが疲れないための対策」というテーマでインスタライブをしたときの様子を記事でお届けします。
目次
誰しもが、うつ病になる可能性がある時代
古山さん:今の時代は、誰しもがメンタルの沈みがある時代だなと思いますよね。自分が落ち込んでいる状態のときに、本を読むのはなかなか難しいと思うんですが、もしかしたら、将来メンタルが落ちる可能性があるかもという観点で読んで欲しいですね。うつ病になって、徐々に回復しているタイミングで読んでみて欲しいなと思います。
デラさん:そう思いますね。
古山さん:私の周りにも頑張り屋さんが多くて、まだ体調が悪いのに頑張ろうとしている人が多いです。「頑張らなくてもいい」「どうやったら疲れないのか」というところを聞いていきたいと思います。書籍には、「誰しもがうつ病予備軍」と書かれていますよね。デラさんは、自分がうつ病にかかると思っていましたか?
デラさん:ないです!就活しても、営業向いているねーと言われていたので!
古山さん:学生時代はテニス部でキャプテンをやっていたんですよね。エネルギー量は、昔は高かったんですか?
デラさん:そうですね、外にいない時の方が珍しい感じでした。
古山さん:エネルギー量がたくさんある人でも、もしかしたらメンタルが下がってしまったり、うつ病にかかってしまうってことは十分にあるということですね。
デラさん:そうですね、疲れる量が多くなっちゃったら、そして回復できる量が少なくなっちゃったら、自分のHPが減っていくだけ。寝ずにずっと仕事しろって言われたら、誰でもうつ病になると思うんですよ。
古山さん:みんな、「自分には全く関係のない話」って思わない方がいいですよね。
うつ病前の自分ではなく、これからの自分にエネルギーを使う
古山さん:本には、「うつ病前の自分に戻ろうとしない」と書いてありますよね。例えば、昔は自己肯定感が高くて、今は低い。高かった時の自分に戻りたいという方はよくいます。私も、昔野球をしていた時が一番輝いていた時期だったので、あの時に戻りたい、でも戻れない。それで落ち込んでいた時があったんですよね。
デラさん:それは落ち込んじゃいますよね。
古山さん:うつ病の前の自分に戻ろうとしないということは、デラさんの実体験に基づいた考えなんですね。
デラさん:そうですね。4年間うつ病やってきて、どうしても「ずっと動いている自分」とか「ちゃんと寝て働いている自分」「外出してもダウンしない自分」、そんな昔の自分に憧れていたんですけど、今の現状と理想の差の分、ダメージがあるんですよね。そのダメージがしんどいなーと思い始めてきたんです。
古山さん:なるほど。
デラさん:だったら、もう過去の自分に戻りたいという期待値が高いから、それを限りなく下げてしまえば、しんどくないんじゃないかと気づいたんですよね。
古山さん:今、頑張っている人は昔の自分と比べない方がいいということですね。
デラ:そう思います。過去は昔の思い出として。昔と比べても、いいことはないんじゃないかなと思っていて。たとえば、「学生時代にモテた」「足が速かった」とか。でも、今足が速くなかったら意味ないじゃないですか。比べたってしょうがないと思うんですよね。
古山さん:それは、ある意味割り切るというか、過去の自分に戻るんじゃなくて、これからの自分を作り上げていく方向にエネルギーをフォーカスしていくという感じ?
デラさん:そうです。もう割り切る。今の自分にできることとして、「今日がちょっと楽しくなる」とか「明日がちょっと良くなる」とか、そういった方向にフォーカスしていった方がいい。結果的に今の自分も楽しくなるし、未来の自分もよくなるし。比べる対象が過去じゃなくて今って感じですかね。
古山さん:「昔の自分はこうだったんです」という話題よりも、「これからこんなことをしたいんです」って方向にシフトした方がいいですね。
デラさん:そうですね。ただ僕は、「これがしたい」「これやりたい」っていうのがなくてもいいと思っていて。「これが嫌だからやらない」とか「これはやりたくない」というような、逆の感じでもいいかなって。
古山さん:たしかに。
デラさん:「これがしたい」「これやりたい」っていうのは、気持ちが上がってくるとたどり着く世界なのかなって。最初は、絶対やりたくないという消去法でもいいんじゃないかなって思います。
古山さん:意識が高い人と関わると、夢とか聞かれることもありますよね。
デラさん:それを真似しようとすると、「夢持たなきゃ」「やりたいことを見つけなきゃ」「好きなことを見つけなきゃ」とか、この“やらなきゃ思考”が良くないと思うんです。
古山さん:夢があることはいいと思うし、目標があることはいいと思うけど、自分の状態によってはそんなことを考えなくてもいいですよね。
デラさん:夢って、なきゃいけないものって思われてるけど、別になくてもいい。タイミングだと思う。夢はあってもいいし、ないときがあってもいいと思うんですよね。
古山さん:関係ないですよね、自分の人生ですからね。
表紙にも書いている「朝、起きなくてもいい」って言葉がすごく響いていて。朝って、二度寝しちゃいけない、早く起きなきゃいけないっていう思い込みがあるじゃないですか。でも、早起きって、自分に強制されなくてもいいんだって思えますね。
デラさん:そうなんです。うつ病療養中の人に「朝方になれ」っていうのは求められないんですよね。不眠症を発症していて、いつ寝られるかもわからない、起きれるかもわからないのに。だったら、いつ寝てもいい、起きてもいいってルールにした方がメンタル的にも楽だったんですよね、僕自身。
デラさん:朝6時とか8時に起きなきゃいけないと自分で縛って、お昼に起きちゃって。その1日憂鬱で過ごすくらいなら、起きた時間が俺の朝だって思えばメンタル消耗しないで済むので。
古山さん:メンタル的に疲れないって観点で見ると、それで全然オッケーですもんね。
デラさん:そのほうが消耗しないです。うつ病の回復も早くなりますし。頑張り屋さんほど、そんなスパイスを取り入れるだけで、びっくりするくらい体力が削られなくなるんで!
過去の自分には、今の自分に役立つデータがある
古山さん:書籍の中に「自分のメンタルの波を作らないために、人に対して期待しない方がアップダウンが減る」と書いてあると思うんですけど、「楽しい」「ワクワク」っていうのを求めていくのはどうなんですか?
デラさん:そういった気持ちを求めるのと、自然になるのは違うんですよね。結果的に楽しく過ごせたなら全然良くて、再現性が高いなら良いと思うんです。ただ、再現性が高くない楽しさなら、追い求めるのは期待値が高くなると思うんですよね。
古山さん:喜怒哀楽も、高い喜びを目指すんじゃなく、手の届く範囲を求めるならいいってことですか?
デラさん:そうです。ハードルを高くして「自分はダメなんだ」って思っちゃうと、めちゃくちゃしんどくなる。そのハードルを少しずつ下げるっていうのが良いのかなって。
古山さん:ネガティブな気持ちをケアするのが大事なんですね。本にも書かれているのですが、デメリットもセットで考えるっていうのが、使いたいなーと思いました。たとえば、「白米が好き」ってことは、美味しいというメリットの裏に太っちゃうっていうデメリットもセットで考えるわけですよね(笑)
デラさん:そうです!甘いものは美味しいけど、糖分が多いから太りやすいですよね。多くの人は、そこまでセットで考えていないって思うんです。
古山さん:セットで物事を考えていくっていうのが、もっとみんなに伝わってほしいなと思いますね。
デラさん:たとえば、10万円の高級ホテルに泊まりたいと思ったとしたら。僕なら、そこまでしなくても、10万円しなくても、自分が持っているカードで同じ体験ができないかなって考えます。どの部分に、自分が惹かれているのかなって。ただ、その気持ちを抑えるのはよくない。なんとかして、できる限り叶えてあげる。そういう欲求が出てこなくなっちゃうから。
古山さん:あとは、自分の過去と向き合うって部分なんですが。過去のイベントを振り返ってみて、自分がうつ病になった、メンタルが下がったことに向き合っていこうとすると、余計にメンタル下がるんじゃないのかなって思うんですが。
デラさん:それはそう。僕は幸い、2年かけてだらだら気にしないで振り返っていたんです。もちろん本気じゃなくて、隙間時間に。頑張って、紙に書いて振り返るとかは疲れると思います。
古山さん:楽観的に、軽い気持ちで向き合うってことですね。
デラさん:そうです。
古山さん:デラさんは本によると20周も過去と向き合って、自分と対話したんですね。
デラさん:最初は思い出す時、辛いんですが、これを複数回やっていると冷静に受け止められるようになるんですよ。満遍なく振り返るたびに、今の自分に役立つデータがあるんじゃないかと思えてきましたね。
古山さん:教訓を抽出する技術ですね。
デラさん:やっぱり自分の人生から教訓を拾った方が、役に立つ確率が高いんじゃないかなと思って。古山さん的には正解でも、僕としては違うこともあるじゃないですか。「Aした結果」「Bした結果」どうだったのか、これは自分の過去を振り返るとある。どんどん自分の人生が充実していく気しかしなかったんですよね。
古山さん:正解はないんですよね。絶対に正しいわけじゃなく、僕の人生はこうだったという提案という感じですよね。20周じゃなくても、5周でも腑に落ちる人もいるんですよね。
デラさん:そうそう、早い人は1周で腑に落ちる人もいますよ。数字にこだわる必要はないです。
古山さん:自分の過去と向き合うっていうのは、自分を責める以外の理由を見出していくことも大事ですよね。自己肯定感が低いと、ダメな理由って、全部自分のせいにしちゃうんですよね。振り返りをしていく中で、自分が悪いという以外の原因を見出していくこともできたんですか?
デラさん:たしかに僕も、自分が悪いって思っていましたね。世間的には、他責ってよくないと言いますが、今は環境や相手が悪いって思うようにしています。最終的には、自分が悪いって思っちゃうんですけど。自分が悪いんじゃないってことも探す努力もしていますね。
古山さん:なんでも自分が原因で、改善させていく方がいいんだって話は多いですもんね。
デラさん:自分が消耗しないことを最優先にした結果、自分のせいじゃない方が生きる上で楽なんですよね。自分のせいが「100」だったのが、「20」とか「30」とかにできたら楽なんですよね。
古山さん:全て他責にしなくても、ちょっと混ぜてみる。私以外の理由ってなんだろうって。そう思うってことですね。
デラさん:そして原因がわかったところで、じゃあどうしようか考える。職場の環境を変えてもいいし、人から離れてもいいし。そういう状況の中で、自分がどうしたらいいのか考えるのがいいと思います。
人間関係で消耗しないように、自分を一番に考えた行動をとる
古山さん:本には、友達はいらないって書いてありますよね。友達がほとんどいないってところが、好きなんですよね。僕もそうなんで。友達とご飯とか遊びに行くとか、すごいなって。それで疲れちゃうって話を聞くと、それはそうだって思うんですよね。
デラさん:みんな、友達を作らなきゃいけないって思っているんですかね。
古山さん:週末に予定がないと孤独感を感じたり、誘われない自分には価値がないと思ったり、SNSで友達がご飯行っているのを見ていると、呼ばれていないことに寂しさを感じたりとか。
デラさん:なるほど。逆に、僕は自分の自由な時間ができて、自分の選択の幅が広がるからいいよねって思います。誘われない方が断らずに済むし、自分の人生をコントロールできる。もし寂しいなら、消耗しない人と行けばいいのかなって思います。ただ、そういう相手って少ないと思うんです。
古山さん:うつ病の人の人間関係は、損得でOKと書いていますが。人間関係に損得って持ち込まない方がいいのかなっと思ってしまうのですが。
デラさん:シンプルに、うつ病になった人生を考えた時に、エネルギーを蓄えられる方が生産的ですよね。一緒にご飯行って、ダウンするなら行かない方がいいですし。自分が友達との関係性を維持するために疲れるなら、切ってもいいかなって思います。僕は、そういう考え方をしないと、生きてこれなかったんです。自分を好いてくれる人と仲良くしようとしたら、もっと潰れてたと思うんです。
古山さん:一番大事なのは、自分だよねって話ですね。
デラさん:友達を優先させると、自分が後回しになっちゃうんで。ただその生き方もいいと思うし、その方が美しいと思うんですけど、僕はいいかなって。
古山さん:友達と会いたい、関わりたいならいいけど、断るのが苦手とか嫌われたくないとかはきついですよね。
デラさん:疲れるって思うなら、お互いにメリットのある関係かデメリットがない関係を考えて、一緒にいて楽しいと思わなければ、メリットがないと思ってます。
古山さん:友達と会いすぎると、僕も疲弊すると思いますねー。
デラさん:人間関係で消耗しないコツだと思いますね。消耗する環境にいて、消耗しないのは難しいんですが、ただそれでも自分が一番でしょと思うんです。
古山さん:最後に、何か伝えたいことはありますか?
デラさん:僕は、ただの30歳のフリーターです。全然すごくないです。ただ、僕がどんなふうに考えて、行動したら楽しく生きられるようになったのか、それに特化した本になっています。綺麗事も押し付けもない本です。ぜひ、読んでください!
古山さん:赤裸々に書かれている本ですよね。リアルな内側、失敗談とか個性が出てますよね。
デラさん:僕はこう考えているよと、変わるきっかけになればと思いますね。ただ、自分が変わりたいと思ったときにしか変われないので、変わるかどうかはその人次第かなと思います。
古山さん:うつ病の人だけじゃなく、大切な人がメンタルが下がっている時に、どう声をかけたらいいかわからないですよね。この本を読んで、気付かされることがたくさんありました。自分の大切な人を守るために、この本を読むってこともいいですね。
デラさん:うつ病をサポートする人にも、参考になるかと思いますね。声がけや、どのようなレールに乗せればいいのかわかると思います。
(ライター:石原あゆ)
(画像提供:iStock.com/ Olya Smolyak)