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世渡り上手な人がこっそり使っている「交渉術」とは?

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仕事でも友情でも恋愛でも、私たちの悩みの大半は対人関係にあります。
ではその対人関係に悩まない人は、日々の会話に“ちょっとした工夫”をしていることをご存知でしたか?

頭のいい人は対人関係に「交渉」を使う

少し専門的な話になりますが、ハーバード大学にハワード・ガードナーという教授がいます。彼は人間の知能研究の第一人者で、知能、つまり頭のよさを「人が問題解決をするときに使う力」と定義しています。
頭のいい人は相手の心理を把握し、巧みにコミュニケーションを取ることができます。
結果、人ともめずに良好な関係をつくり、仮にぶつかることがあってもしこりを残さず、自分は絶対に損しないよう物事を運び、無駄な争いは避けつつも、相手にナメられない関係性を構築してしまうのです。
この頭のいい人たちが他者とどのようにやり取りしているのか徹底的に観察・分析したところ、頭のいい人は対人関係を「交渉」によってつくっていたことがわかりました。
そしてこの交渉は、仕事でもプライベートでもいかなる状態でも有効です。
今回は新刊『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』の中から3つご紹介します。

相手のガードを下げさせたいとき

何か自分に有利なお願いを聞いてほしいとき、相手にどのように話せば良いでしょうか?
その答えは「食事」にあります。

内定者に入社してほしい

→「今度、おいしいものを食べながら入社後の希望を聞かせてください」

交渉中の商談を根回ししたい

→「○○ホテルで秋のスペシャルメニューがはじまりました。○○さんのお好きな神戸牛がメインだそうです。ご一緒にいかがですか?」

家庭内の○○というルールを変えたい

→「たまにはおいしいランチに行かない?」

人は何かに満たされたり、快感を感じたりしているときは説得されやすいといわれています。そのため、食事をとりながら交渉ごとを行うことで相手からの合意を得やすくなります。

使われているのは「ランチョン・テクニック」

食事中、私たちの脳内では味覚が刺激され、空腹が満たされていることで快楽物質であるドーパミンが放出されます。すると交渉相手はこちらの話の内容に対しても心地よく感じ、行為的な反応を示すようになるのです。
これを利用した交渉テクニックを「ランチョン・テクニック」といいます。

ほめるときは第三者に言わせる

ほめるという行為は相手の「承認欲求」を満たし、モチベーションを高め、相手を動きやすい状態にすることができます。
しかし直接ほめると「なんか裏があるのでは?」と疑う人もいます。そこで使えるのが以下での方法です。

部下や後輩にやる気を出してもらいたい

→「○○さんがキミ(部下や後輩)のことを、仕事が丁寧で安心できるとほめてたよ」

商談前など交渉相手に気分よく参加してもらいたいとき

→「○○さん(取引先の人など)、弊社の××が大絶賛していましたよ」

子どもに自発的に勉強してもらいたい

→「○○先生が□□(自分の子どもの名前)のことを“勉強を一生懸命がんばる子です”っていってて、すごくうれしかったよ」

「ウィンザー効果」でほめ言葉の力を最大限に引き出す

「ウィンザー効果」とは「ある事柄について当事者が自ら発信する情報よりも、他者を介して発信された情報のほうが、信頼性を獲得しやすいとする心理効果です。
マーケティングの世界では「口コミ効果」とも呼ばれています。
交渉の場ではこちらと相手との間に必ずなんらかの利害が生じます。
そのとき、利害関係のない第三者のほめ言葉が相手に伝わると、交渉に有利に働きます。また、ほめ言葉以外にも、なんらかのエピソードや誰かしらの感情などを伝えることでも、信用度や信憑性は高まります。

相手に特別感を抱かせ、交渉を有利に運びたい

人は希少性があると感じると、思い切った判断行動をしてしまいます。
その背景には、手に入りにくいものはそれが重要な何かに違いないと考えるためです。

友人を自分の興味のない遊びに誘うとき

→「○○美術館に、今しか見られない限定公開の作品を見にいかない?」

特別感を出してセールスにつなげたいとき

→「お客さまにだけこっそりお教えしますが、今契約すると、数量限定の特典が…」

新メニューなどのキャッチコピーを考えているとき

→「この季節だけ食べられる、生○○はじめました!」

希少性の原理

上記のように珍しさ、希少さをアピールすること。これを、「希少性の原理」といいます。
この希少性が人の心を動かす理由を、アメリカの社会学の権威でもあるロバート・B・チャルディーニは自著『影響力の武器』で次のように説明しています。

手に入れにくいものはそれだけ貴重なものであることが多く、ある商品や経験が入手しやすいかどうかが、そのものの品質を見極める手取り早い手がかりとなるため
(原文の翻訳ではなく、筆者が意訳)

珍しさをアピールするコツは、「レア」や「幻の」など希少性を感じ取れるキーワードを使うこと。あるいは「独自」や「個人」のようなキーワードを使うことであなたが話す内容に相手は希少性を感じてくれるでしょう。

残念ながら世の中、自分を大事にしてくれる人たちばかりではありません。
交渉のノウハウを知らない人は、それが交渉だと気づかないうちに相手の交渉術に丸め込まれてしまうことがあります。
頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』では、東京大学の交渉学から学んだ一生使える不変の法則55をイラストやフレーズを用いながら分かりやすく紹介しています。
正しい交渉術を身につけ、自由な日々を手に入れましょう。

(画像提供:iStock.com/fizkes)


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