成功体験を先取りした場合、どれくらいの確率で実際に成功できるのだろうか?【ハチ飼育員の手記 11月】

ハチの捕獲に失敗し、絶望していたところへ公の組織から「一緒に養蜂をやりませんか?」という奇跡のようなオファーが。以来、ハチを触ったことすらない飼育員は、新聞社からの取材、養蜂についてのスピーチ、意見交換会など、運命のいたずらに巻き込まれていく…。

飼育員です。

大型台風にあおられ、
最強台風に吹き飛ばされ、
増税にラグビーに筒香メジャー挑戦に、と
わあわあ騒いで、おいおい泣いて、
ふと窓の外を見てみたら、
すっかり秋になっていた。

ええ? 秋?

見れば前回の投稿から、
もう2ヵ月以上経っている。
なんていうことだ。
2ヵ月間生きていた実感がない。

飼育員はいったい、
なにをしていたというのだろうか。

記憶をたどるために、我が社の屋上に上がってみる。

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度重なる大雨と暴風により、
巣箱は浸水と乾燥を繰り返し、
ビンテージ感だけはすごくなっている。
鳥のフンらしき白い跡も痛々しい。
もちろん中にハチはいない。

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これはミツバチを寄せようと設置してみたものの、
飼育員の集中力が続かず、
すっかりデザイナーの内山さんに世話をお願いしっぱなしのペチュニアである。
現在はさすがに、花は全部落ちてしまったが、
以前はとってもきれいな花を咲かせていた。
花との思い出にひたっているうちに
ふと、副社長と交わした会話がよみがえった。

副社長 こないだチコちゃんが言ってたけど、花の色に意味があるって知ってる?

飼育員 いいえ。知りませんでした。

副社長
 チョウチョは赤い花に集まりやすいんだって。
反対にミツバチって赤が視認できなくて基本、
黄色とか白の花にしか集まらないらしいよ。

飼育員
 ほお、花の色にも意味があると。自然は深い。

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だからチョウチョしか見かけなかったのか。

しかし、花は花。

私が求めているのは、蜜と蜂である。

さて。

前回までのダイジェスト。

1、サンクチュアリ出版は、お世話になっている人たちに「自分たちの手で育てたハチの蜜」を贈りたいと考えた。
2、考えるよりまずは行動だ。なんにもわからないけれど、とりあえず4月から巣箱を仕掛けてみた。
3、“捕まえられるタイミング”は1ヵ月ほどしかないと知った。
4、あっさり“捕まえられるタイミング”が過ぎた。
5、おしまい
6、かと思ったら、文京区の社会福祉協議会というところから連絡があって、「いっしょに養蜂をやらない?」というお申し出をいただいた。
7、来春からサンクチュアリ出版の屋上を使って、文京区民といっしょに養蜂をやることになった。

来春からサンクチュアリ出版の屋上を使って、
文京区民といっしょに養蜂をやることになった。

そしてこの後、念のために
文京区社会福祉協議会(以下、社協)のみなさんに
我が社の
“決して美しすぎるとは言えない屋上”を視察してもらい、

(これでも大丈夫)
(無理ではないはず)
(贅沢はいえません)

という承認をいただくやいなや、
先方の気が変わらないうちに
「来春、共に蜂を育てましょうね!」
とガッチリ固い握手を交わし、
ではまた! と笑顔で別れたあと1週間ほど経った頃。
いや3日くらいか。

真夏のひまわりこと
社協のHさんから、こんな連絡がきた。

「御社の屋上における養蜂活動について、
新聞の取材に応じて
もらえませんか?(・ω<)」

あれ、おかしいな。

私、何度か申し上げました。

まだ、屋上にミツバチはきておりませんと。

実際に空っぽの巣箱も見ていただきました。

じゃーん
(・ω<)

とか言って
ふたを開けてみました。やはりハチはいませんでした。

養蜂活動どころか、
マジでまだミツバチに触れたこともないし、
飼育している現場を見たことすらない。
私はそんな、
ただのハチミツ好きの一般会社員なのです。
その点、ご理解いただいてますか?

「理解してますよ(・ω<)」

ああ、そうか。

なるほど(*>_<*)ノ

いや、私としたことが。
てっきり勘違いをしてしまった。
小さな出版社とはいえ、
メディアのはしくれにいる人間として
これは非常に恥ずかしい勘違い(*>_<*)ノ

素人の皆様には、
おわかりいただけるだろうか。
これは料理の下準備ならぬ、
「下取材」とでも言うべきものである。

本格的に養蜂がスタートする前に、
屋上にまだなにもない状態を
あらかじめ記録として残そうとしている。

養蜂プロジェクト前の様子

養蜂プロジェクト真っ最中の様子
の比較を掲載することにより、
さらに記事にリアリティを持たせようという狙いなのだ。

しかし、恐れいった。
もうこんな段階から、取材に入るのか。
さすが報道。これが新聞の世界。

頭が下がる思いだ。

特にこの時期は特に暑かった。
私はただただ
戦前から脈々と受け継がれる報道魂に敬意を払い、
炎天下の中お疲れ様ですと言うしかなかった。

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35度超え、灼熱の屋上で。
屈強そうなカメラマンと
てきぱきとアングルの指示を出す記者と
空っぽの巣箱を自慢する飼育員

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これが戦場だったら、無事には帰れないだろう

取材と撮影は無事に終了。

いつかこの写真を新聞に掲載してもらえるよう、
養蜂を実現させなければ、と気持ちを引き締めた。

同じ頃。

社協のFさんという女性から

ボソッ……御社で…文京区と…サンクチュアリ出版の…養蜂プロジェクトの…キックオフミーティングを……開きたいのですが、……いかがでしょうか?

という問い合わせがあった。

ボソッ……というのはウイスパーボイスだということを表している。

そして小柄なFさんは
森でばったり出会った小動物のように
はじめから戸惑っている。
そおっと声をかけないと、巣穴に引っ込んでしまいそうだ。

だからこちらとしては、
(危害は加えないから)
という気持ちをこめて
可能な限りの小声で「ボソッ……大丈夫ですよ」と答えるしかない。

いや、もちろん、大歓迎である。
飼育員は本当に心から、
焼き鳥でいうところのハツから、
養蜂の同士たちと打ち解けたい!
と願っている。

しかし飼育員、心の中では
正直まいったぜ、と思っていた。
なぜ、まいったのか。

それは当記事のことを、第一に考えたからだ。

キックオフミーティング
なんてしてしまったら、どうなる?
大勢の人たちと会うことになる。

すると当然だが、登場人物が一気に増えることになる。

そしてもしも
「養蜂プロジェクトを語る上では外せない登場人物」
だらけになってしまったら、
もう
うまく記事としてまとめられる自信がない。

いいかい。
たとえば
私のような「三国志」大好き人間が
熱烈に「三国志」を人にすすめてみたとしよう。
その後、その人がハマってくれる確率は約1割だ。
残りの9割、
全然ハマらなかった理由ランキング
不動の第1位が

「登場人物が多すぎて、どれが誰だかわからない」

である。

名前と顔が、なかなか一致しない。
あれだけの物語性と
横山光輝や吉川英治の筆力をもってしても、
そこだけはどうにもならない。
ちょっとだけ我慢すれば楽しくなってくるよ…と励まし続けるしかない。

ただ、当記事は、
ちょっとだけ我慢してもらっても、
楽しくなってくるとは限らない。

というわけで、
この記事の中で
登場人物を下手に増やそうものなら、
ただでさえWEBマーケティング部から
少なすぎると注意されている
PV数がさらに減ること間違いなしなので、

まずはとりあえず、無言で写真を一枚。

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想像してください。この人たちは一体どんな人たちなのか?

ヒントを出すと、
知らない未経験者同士が、
「みんなでミツバチを育てて、ハチミツをとろう」
という旗のもとに集まり、
これからどうするか、みんなで考えようというのだから、
きっと変な人たちである。


記憶に残る良い紹介方法

思いついたら、小出しにしていきたい。

さて、
巣箱にまだハチもいないし、
もう十分に働いたから、
デスクの上を片付けて帰ることにしよう。

あれ?

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なんだこれは

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なんと

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もう出ちゃってるじゃないすか。

しかも、違うよ。
私、引きこもりの支援なんてしてないし。

 

お歳暮やお中元に
地元のハチミツを贈りたくて
はじめようとしただけなのに。

ま、いいか。

内向的な私自身が
将来的にひきこもりになりそうな予感がしているから
社会とつながるきっかけがほしかった、

ということにしておくか。

プロジェクトが成功したあかつきには、
取材とかきたらいいな、とは思っていた。

これも、一種の成功の先取りというやつだろう。

ちなみに「バズる」の語源は、
ハチが飛び回る様子からきている。

いつかこのみつばち記事も「バズる」ことを祈って。

飼育員 橋本圭右