大学職員から漫画家へ!あんじゅ先生の初出版物語/若林杏樹

若林杏樹

大学職員という安定の人生を捨て、「天才美少女漫画家」として活動するあんじゅ先生こと若林杏樹さん。まったくの無名からわずか2年で出版の夢を叶えた彼女の半生と、連載・ドラマ化・インスタグラマーなど…今後の野望とは!?

小学生の頃に夢見た「漫画家」

2018年11月に、初の著書『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』を出版した若林さん。小学校時代の将来の夢が漫画家だったというだけに、漫画家を目指して何年も地道に下積みを続けてきたのかと思いきや、つい2年ほど前までは私立大学の職員として働いていたというからまさにシンデレラストーリーである。

「大学では漫画研究会に入っていたり、就活新聞に4コマ漫画を連載したり、絵は趣味で描いていました。読んだ人に喜んでもらうのも好きでしたが、漫画家になるのは大変そうだから趣味のひとつでいいやと。卒業後は、安定しているし親も喜んでくれそうだったので、通っていた大学の入試課の職員になりました」

入試課では、高校生に入試制度などを説明する仕事をしていたそう。実施数は年間100回以上。話がおもしろくなければ耳を傾けてくれない生徒たちの注意を引くため、おもしろおかしく話したり、ときにはアカデミックに話したりと、伝え方を毎回工夫していた。その経験はいま、漫画を描くにあたり大いに役立っているという。

大学職員になって約5年。弟の就職など環境の変化を機に大学を辞めたという若林さん。最初は両親にも辞めたことを言わず、イラストレーターとしてこっそり活動し始めたそうだ。

「実績もツテもなにもなかったので、仕事は当然ありませんでした(笑)。編集プロダクションにいた知り合いに相談したら、『コラムを書くライターの仕事ならあるから、それにイラストをつけてみたら?』とのこと。恋愛コラムなどを何本かやらせてもらいましたが、それだけでは全然お金にならないので途中からデザインの勉強も始めて、イラストとデザインでなんとか食いつないでいましたね」

日銭を稼ぐ日々に舞い込んだ出版のオファー

そんな生活を続けるうちに、時折ではあるが「漫画を描いてほしい」という依頼も来るように。ブログ記事60本に対して1本ずつ漫画をつけるという電子書籍の仕事も経験し、文章を漫画にする力が鍛えられたという。

「その頃、知り合いから『漫画行けるじゃん!もっと描けば?』と言われて、ブログに漫画をアップするようになりました。『タコス食べてきた』みたいなどうでもいい日常を描いた漫画なんですけど(笑)。でもそれがバズるようになって、漫画やイラスト、ネット番組などの仕事をいただくようになったんです」

そんななか、Twitterをきっかけに知り合った税理士の大河内薫さんから、「今度書籍を出版することになったので漫画を描いてほしい」というオファーが舞い込む。内容を聞いてみると、税金についてわかりやすく紹介するフリーランス向けの本だという。偶然にも大叔父が税理士で、父も税理士の勉強をしていたという若林さんだったが、自身は数字が大の苦手。フリーランスでありながら税金のことはなにも知らない状態だった。

「父と青色申告会の勉強会に参加したこともあるんですけど、ほとんど寝ていてなにも覚えていないありさま…(笑)。だから税金の本なんて描けるか不安でしたが、大河内さんの言葉を漫画にするくらいならできるかなと思ってお受けしました。実際は、私の実体験をふんだんに盛り込むことになったんですが(笑)」

本のメインターゲットは、独立したてのフリーランスや、税金についてよく知らないフリーランスの人たち。そのターゲット像にバッチリ当てはまったことと、若林さん自身が税金や確定申告に戸惑った経験があったことから、「脱サラしたあんじゅ先生が大河内先生から税金について学ぶ」という構図をそのまま漫画にする方向性に。大河内さんのオフィスに通い詰め、疑問に思ったことはすぐに聞いて解消しながら原稿を制作していった。

税金について知ることは、「防御力」をつけること

実制作期間は短かったが、スケジューリングを徹底したことで徹夜もなく仕上げることができたという若林さん。漫画家としての自信にもつながったという。出版後の反響は上々で、とくにSNS上では多くのメッセージが寄せられているそうだ。

「私の漫画のテイストは、『嬉しい』『悲しい』『おもしろい』などの感情がダイレクトに伝わるもの。自分の性格がそうなんです。今回の本でも、主人公である私の喜怒哀楽をストレートに表現して、わかりやすさや親しみやすさを心がけました。大河内さんもお堅い税理士という感じではまったくなく、『日本一フリーランスに優しい税理士』を自称しているくらいなので、私自身楽しみながら学べました。フリーの方はもちろん、会社員の方でも税金に興味がなくても、読みものとして笑いながら読んでほしいです」

大河内さんから直々に税金について教わり、もっとも勉強になったことはなんだろうか。

「税金の知識がなかった頃は『絶対に払いたくない!』なんて思っていましたが、税金を払う責任や大切さがわかりました。経費になるからといって浪費をして所得が低くなりすぎると、結局は信用度が下がってしまうことも初めて知りました。お金関係がおろそかになってしまっているフリーランス、とくにクリエイターの人って多いと思うんですけど、税金で損をしないように防御力をつけることはとても大事。私を含め、これから売れたいと思っているクリエイターにこそ必要な知識だと思いました」

今作を通じて「防御力」の基礎を身につけた若林さん。次の確定申告に向けてしっかり準備することに加え、いまはふるさと納税も始めてみたいと語ってくれた。

メジャー漫画家としての一歩を踏み出して

漫画家として本を出したいという若林さんの夢は、フリーになってわずか2年で叶ってしまった。今回、大河内さんや編集者と一緒にひとつの本をつくりあげた経験に大きな達成感を覚えた若林さんは、漫画家を目指す人や漫画好きな人を集めたオンラインサロンを11月からスタート。漫画の仕事をサロンメンバーで請け負ったり、漫画投稿バトル「あんじゅカップ」を開催したりと、盛り上がりを見せているようだ。

「私はこれまで下積みといえるような地道な積み重ねはしてこなかったし、ライバルと呼べる人もいませんでした。だから、仲間に揉まれながら腕を磨いて、よりおもしろい漫画を描けるようになりたいと思ったんです。年上から年下、会社員から主婦まで、いろんな人が数十名ほどメンバーになってくれています。なかには人気のインスタグラマーがいたり、有名企業のクリエイターがいたりして、みんなでなにか新しいことができないか常にアイデアを出し合っています」

2019年の目標は連載を持つこと。近年はメディアミックスが盛んなため、原作がヒットすれば一気にドラマ化・アニメ化されることも夢ではない。漫画家としてスターダムにのぼり詰めるチャンスはあちこちに転がっている。また、大学職員時代の経験、そして今回の出版を経て、難しいことをおもしろおかしく伝えるスキルは格段にアップした。ニュースメディアでニュース漫画を描くなど、畑違いの分野や媒体にもチャレンジしてみたいという。

もうひとつ、若林さんらしいユニークな構想があることも教えてくれた。

「男女の間に『おごる・おごられる問題』ってあるじゃないですか。私はおごってもらうのが好きなので(笑)、いかに気持ちよくおごってもらうかを考えたときに、ご馳走してもらったものをイラストにしてインスタにアップしていったらどうかと。そのシリーズがヒットすれば、『インスタで紹介されたいからおごる』『ほかの奴よりいいものをおごりたい』なんて思ってもらえるかなぁって…(笑)。私のただの欲望なんですけど、コンテンツにしがいはありそう」

未来のことはあまり考えない。そんな信念でこれまで生きてきたという若林さん。いまやりたいこと、楽しそうなことに純粋に目を向け、やり始めたら全力で最後までやり抜く。その自然体の生き方が、飾らない自然体の作品を生み、多くの人の共感を呼んでいるのだろう。

最後に、ひとりの人としてどんな一生を歩んでいきたいか尋ねると、若林さんは「人生、無理はしません」といたずらっぽく笑った。背伸びをしすぎることなく自分に素直に生きてきた結果、メジャー漫画家としての一歩を踏み出すことができた彼女は、間違いなく運と実力を備えたひとり。これからもさまざまなシーンで私たちを楽しませてくれるだろう。


若林 杏樹(わかばやし あんじゅ)

漫画家。
新卒で私立大学職員として入職。
超ホワイトな職場で5年間働くも、長年の夢を叶えるために脱サラし、フリーの漫画家に。全くの無名、ツテなしから、SNSを営業ツールとして駆使し、 天才美少女漫画家として幅広く活躍中。
これまで税金関係の難しい書類や数字とはできる限り距離を置きたいと願っていたが、本書を機についに確定申告に挑む。
ニックネームはあんじゅ先生。
Twitter:@wakanjyu321


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