起業家気質じゃなくても稼げる、「賢者」のビジネス/吉武大輔

自ら前に出て理想を実現していくのが「勇者」なら、人をサポートするほうが得意な「賢者」。賢者タイプは、デザインや動画撮影、webマーケティングなど専門スキルを身につけるのが成功のコツ。若手経営コンサルタントが、賢者タイプの勝ち方を教えます。

あなたは「勇者」? それとも「賢者」?

「勇者」と「賢者」の気質の違い

昨今のビジネス本は、「自分の好きなことで稼ぐ」「リスクをとってでも理想を実現する」といった、自らどんどん前に出て活躍する起業家向けのものが主流。そういったタイプの人を私は「勇者」と呼んでいますが、実は「勇者」タイプの日本人はそんなに多くありません。日本人の大半は、人をサポートし、チームやコミュニティを作って夢を叶えていく「賢者」タイプです。

「勇者」は、自分のやりたいことを追求し、自分で自分を愛することができます。でも、それでは全然満たされなかったり、逆に苦しくなってしまったりするのが「賢者」。自分の愛する人や信頼する人からたった一度でも「ありがとう」「○○さんがいてよかった」と言われるほうが、よほど満たされます。優しい人ほど「賢者」であることが多いですね。

また、「勇者」は自分の価値を高め、それを直接的にお金に換えます。そのため成果が出るまでのスパンは短期的。一方「賢者」は、価値を持っている人とチームを組んで長期的に信頼関係を築き、その人の価値と自分の価値を掛け合わせて成果を出すのが得意です。「賢者」だけで事業をすることもできますが、爆発的には伸びません。

「賢者」の役割

「勇者」がCEO(最高経営責任者)、つまり社長のような役割が向いているのに対し、「賢者」はCCO。Chief Communication Officer、最高顧客責任者と呼ばれる役割が向いています。

それは、「賢者」が関係性を築くプロだから。専門性と長期的な視点を持ち、カスタマーリレーションシップを大切にできるのが「賢者」の特性です。好きなことを仕事にするのが「勇者」だとしたら、好きな人と一緒にいることを仕事にできるのが「賢者」です。

「賢者」としての自分を育てるには?

複数の「勇者」と関わる

「賢者」として生きるにはまず、誰を真の「勇者」にするか決める必要があります。自分が長期的にサポートすることで、「勇者」を真の「勇者」へと育てていくのです。

すでに特定の人がいる場合は、その人だけに注力してもいいでしょう。ただ、これから「賢者」としての第一歩を踏み出す段階であれば、一人ではなく複数の「勇者」と関わることをおすすめします。特に関わるべきなのはこの4タイプ。

<今から伸びていく「勇者」>
多くの人がサポートしたいと考えるのがこのタイプ。今はまだ事業規模が大きくなくても、今後の成長に期待が持てる、将来性のある「勇者」です。

<すでに稼いでいる「勇者」>
自分の価値を対価として認めてもらう経験をせずに、お金のない「勇者」をサポートすると、自分の価値が低いまま組織が大きくなってしまう傾向にあります。今から伸びていく「勇者」だけではなく、すでにキャッシュを持っていて余裕のある「勇者」とも関わりましょう。

<苦手な「勇者」>
「勇者」の中にも相性のいい人と悪い人がいると思います。相性のいい人とだけ関わりたくなりますが、苦手な人の思考や孤独や悲しみすらも理解し、それさえ愛することができるのが本物の「賢者」。週1回でもいいので、積極的に関わって自らを成長させてください。

<無条件に自分を認め、ほめてくれる「勇者」>
これは、もともと「勇者」で「老師」へレベルアップした人など。そういう人たちにとって「賢者」はかわいいもの。お金にも時間にも余裕があり、常に自分を肯定してくれる存在を作るようにしましょう。

まずは、こんな「勇者」をサポートしたいという「理想の勇者像」を書いてみてください。それから、自分のまわりにいる「勇者」のうち、今ご説明した4タイプに当てはまる人の名前をそれぞれ挙げてみてください。それらの「勇者」たちとどんなふうに関われるか、自分ならどう支えられるかまで書き出すことで、「賢者」としての方向性が見えてくるはずです。

専門性を立てる

自分の信頼する人たちから必要とされ続けるためには、専門性を立てることが重要。「賢者」はいろいろ仕事をオールマイティに頼まれがちなので、専門性が見えにくいケースが多いです。「どれもなんとなくできるけど、これ!というものはない」という方は多いのでは?

ですので、意識して専門性を作りましょう。特に身につけるべきは、「効果性」と「汎用性」の高い専門性です。

効果性とは、今ほしい成果を手にしながらも、将来にわたってよりよい成果を得られるということ。汎用性とは、誰とでもどんなシチュエーションでも使えるということ。私がコンサルタントという仕事を選んだのも、汎用性が高いから。マッサージ屋さんとも魚屋さんとも農家とも組むことができます。また、講師のような人前で話す能力も汎用性が高いといえます。

ただ、「賢者」タイプは、人前で話したり表現したりすることがあまり得意ではない傾向にあります。AIの進化などにより3〜5年後は変わるかもしれませんが、現時点でおすすめする「賢者」に合う専門性はこちら。

<コピーライティング>
人の心を打つ文章が書けるのは、とても重要なスキルです。サービスの告知文、顧客対応のメールや手紙など、あらゆるシーンで活かせます。

<デザイン>
Web、紙、建築など、オンライン・オフラインは不問。「勇者」が考えていることを形に落とし込める人は、重宝されます。

<Webマーケティング>
Web制作だけでなく、ビジネスの成長に直接的に貢献できるWebマーケティングのスキルを持つことが大切です。

<映像撮影&編集>
これからもっとも重宝されるであろうスキルが、こちら。今までは文字で伝えていた思いや世界観を、今後は映像でどんどん伝えていける時代です。持っていればきっと活かせると思います。

「勇者」は「賢者」に無茶ぶりをしがち。そんなとき、まず頼まれるのは秘書的な仕事であることが多いと思います。スケジュール管理や経理など、いわゆるバックオフィス系の業務ですね。でも、これらは直接的にはお金を生みません。秘書的な仕事ができることは大前提で、そのうえでお金を生み出せる専門性も身につけておく。それこそが、他とは違った選ばれる「賢者」になる秘訣です。

時間と自由を確保するには?

自分がいなくても機能するチームを作る

短期的に結果を出す「勇者」とは異なり、時間のかかるプロセスを経ることが多い「賢者」。そのため、自分の時間と自由が損なわれてしまいがちです。

時間と自由を確保する方法は2つ。1つは、圧倒的に自分の価値を上げ、時間単価を上げる方法。これを得意とするのは「勇者」です。「賢者」が向いているのはもう1つの方法。自分がいなくても信頼関係がまわり続けるようなチームを作ることです。

「勇者」は、ビジョンを語って人を集めることは得意ですが、集まった一人ひとりが機能するようにバックアップするのは苦手。一方で「賢者」は、一人ひとりの強みを引き出せる環境や仕組みを作り、成果につなげることができます。

チームビルディング理論からヒントを得る

「桃太郎理論」をご存じですか? 昔話の桃太郎になぞらえたチームビルディングの理論です。桃太郎が鬼ヶ島へ行くまでには3匹の動物が仲間になりますが、その種類と順番がポイントです。

まず桃太郎は、いわば起業家。壮大なビジョンを語って世の中を変革していくリーダーです。

最初に仲間になる犬は、営業マン。桃太郎に共鳴共感し、桃太郎に代わって世の中に広く営業していく存在です。会社を設立したとき、最初にバックオフィスを雇うケースが多いと思いますが、実はそれよりも先に営業を雇ったほうがビジネスの成長スピードは上がります。

次に仲間になる猿は、知恵の象徴。組織でいえばマネージャーにあたります。犬の計画や行動に抜け漏れがないか、どうすれば桃太郎や犬が効率的に動けるかを、客観的に管理するポジションです。

最後にキジ。政治家、友好家、ムードメーカーなどといわれますが、組織が揉めたりしたときにうまく調整してまとめあげる役割を担います。

これら4タイプの役割や強みを理解し、組織内の一人ひとりを活かす。それができれば、自分の時間と自由を確保しながらチームをまわし続ける「スーパー賢者」に近づけます。

チームをまわすための具体的な行動

組織内の一人ひとりを活かすことは、一種のマネジメント。組織全体を俯瞰的に把握し、長期的な目で見ていくマネジメントが、「賢者」には求められます。

また、ディレクションやデリゲーションも重要な要素。チームメンバーに積極的に仕事を振っていくことでチームは成長し、自分が実働しなくても自分以上に成果を出せるようになります。

さらに、いつでも・どこでも・誰でも一定の成果が出せるように、仕組み化・マニュアル化することも欠かせません。誰かが転職したり産休をとったりしたときに組織が機能しなくなるようでは、自分がいなくてもまわり続けるチームにはなりません。

選ばれる「賢者」になろう!

自己PRグッズを開発する

専門性を磨き、チームのまわし方を習得したところで、あなたがサポートしたいと思う「勇者」に選ばれなければ意味がありません。「賢者」は自己PRが苦手。熟考する時間がないと主張や判断ができないという人は多くいます。

そんな「賢者」にぜひおすすめしたいのが、自己PRグッズを用意しておくこと。名刺、資料、Webサイト、動画などなんでもかまいません。説明しなくても自分を売り込めるグッズを常に持っておくようにしましょう。

なにから用意していいかわからないという方は、まずはA4両面に自分の人生を表現した「自分チラシ」を作ってみてはいかがでしょう。どんな人とどんな未来を作りたいか、なぜそう考えるのか、自分にできること・苦手なことはなにか。それらをまとめたミッションステートメント&メニュー表を作ってみることで、自己PRになるのはもちろん、自分の人生の棚卸しをすることもできます。

あとは、「勇者」にとっておいしい契約方法を添えるのがポイント。「最初の3ヶ月は3万円でOK」「満足しなければ全額返金」など、短期的においしい内容がベストです。「○○を提供する代わりに○○をください」など、交換条件でもいいでしょう。まずは与えて相手を豊かにし、与えたあとに自分が受け取る。それが得意な「賢者」ならではの契約といえます。

キャラ設定をする

組織にはいろいろな人がいます。その人たちをうまくマネジメントするには、本来の自分のキャラだけでは難しいもの。「賢者」のアイデンティティは、ひとつでなくてもいい。誰にでも愛されて、誰でも愛せるキャラを作ることが大切です。

たとえば「勇者」に対しては、「智慧者」であり「現実主義者」であることが求められるでしょう。「勇者」が語る漠然としたビジョンを現実に落とし込む必要があるからです。アニメや漫画の登場人物で、理想のキャラクターはいませんか? いろんなタイプのキャラクターが出てくるので、関わる人や状況に応じてあるべき自分の姿をイメージしやすいと思います。

キャラ設定は、傷つきやすい繊細な「賢者」が自分を守るための秘訣でもあります。本来の自分が否定されると傷つきますが、作ったキャラであれば、「チームをうまくまわすためにあえてこうしている」「本当の私はみんなから信頼されている」と自分の気持ちを担保できるからです。

これからはチームアントレプレナーやコミュニティアントレプレナーが増えてくる時代。チームをうまくまわしてビジネスを拡大していける「賢者」が、より一層求められる時代になるでしょう。

(画像提供:iStock.com/Peshkova)

吉武大輔(よしたけ だいすけ)

IMAGINE INC. 最高経営責任者(CEO)
株式会社 ones holdings 取締役会長
一般社団法人アクセスリーディング協会 代表理事
7つの習慣®実践会 認定ファシリテーター
MBA(経営学修士)

1986年 山口県出身。射手座のA型、動物占いはペガサス、マヤ暦はKIN69。

18歳の時に英語の教員を目指して上京するも、大学在学中の2000人以上の人との出会いをきっかけに、卒業後1年間の準備期間を経て独立。
世界No.1マーケッタージェイ・エイブラハムのマーケティング理論・ランチェスター戦略・ドラッカー理論・7つの習慣・経営学修士(MBA)など現実的成果を生み出す経営戦略と、スピリチュアル・陽明学・九氣方位学・奇跡のコース・エネルギーワークなど精神世界と呼ばれる領域の両方を幅広く探求し、現実と精神を融合した独自のビジネス理論・コンサルティング手法を確立。

日本全国にクライアントを持つ異色のコンサルタント。
過去の累計相談件数は7000件を超え、売上規模(年商数十万~十数億円)、業種業界、個人法人問わず、幅広いビジネスやコミュニティに関わりながら、現実世界と精神世界の橋渡しをミッションに全国で講師・講演活動を行っている。
目に見えない世界や抽象的な概念を分かりやすくかつ論理的に説明し、マーケティングを中心とした経営戦略を設計することを得意とする。

座右の銘は、Everything’s gonna be alright.

 


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