絵が描けなくてもOK!マンガ原作者になる方法とは?

売れるWEBTOON原作を書くには?

#連載エッセイ
#絵が描けなくてもOK!マンガ原作者になる方法とは?

今も昔も、小学生のなりたい職業に上位ランキングする”マンガ家”。けど、ほとんどの人がいつしかその夢を諦めてしまう……。私(西島)自身もそうでした。
ところが、四十近くなり、なんとなく自分のこの先の人生が見え始めた頃、絵が描けなくてもマンガ業界に携わることができる方法を知ったんです。それが、マンガ原作者への道。そして、私自身はアラフォーでデビューしました。
周りを見渡してみると、私のように社会人になってから、小学生の頃の夢であるマンガ作りに携わりたいという人は意外と多いんですよね。その方法の1つがマンガ原作者になること。
ただ、なる方法は人それぞれ。そこで、毎回、ゲストをお迎えして、マンガ原作者になる方法を語っていきます。

第7回目のゲストは、デジタルコミックエージェンシー、株式会社ナンバーナインの編集者・遠藤寛之さんです。
遠藤さんは、閲覧数・累計1億views突破した(2024年4月時点)大人気WEBTOON(縦スクロールマンガ)『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』の担当編集者です。
WEBTOONが盛り上がる中、売れるWEBTOON原作を書くにはどうすればよいのか、遠藤さんにお話を伺いました。

『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』(原作/ネーム:江藤俊司 線画:疾狼 背景:3rdIe  着色:StudioNo.9 制作:ナンバーナイン)

『神血の救世主』の主人公・有明透晴と、担当編集者の遠藤寛之さん

物語作りに大切なのは“サービス”“目的設定”“キャラクター”“ドラマ”の4要素

原作者が物語を作る上で、何を意識すればよいのか、教えてください。

僕たちの場合は“サービス”“目的設定”“キャラクター”“ドラマ”の4要素を大切にしています。
最初にベースとなるサービスや目的設定を決めて、そこからキャラクターやドラマを掘り下げていくといいと思います。

サービスとは読者が喜ぶポイント、目標設定とは主人公の目的を明示すること

それぞれについて詳しく教えていただけますか。

まず、サービスとは、作品を読んだときに読者が喜ぶポイントです。
ただし、一口にサービスといっても、どういった内容のものを描くかによって変わってきます。たとえば、“ラブコメの場合は、かわいい女の子と仲良くなるイベント” “ハーレムの場合は、女の子がぐいぐい来る展開” “サスペンスやホラーの場合は、緊迫感のある展開”などがサービスの一つになると思います。

WEBTOONの場合、虐げられてきた主人公が覚醒したり回帰したりして能力を得て無双していく展開が読者に喜んでもらえるサービスの一つです。
主人公の最初の状態が悲惨であればあるほど、成功したときのギャップが大きくなり、強いカタルシスを生みます。

『神血の救世主』の主人公も最初は学校でも家でも虐げられ、どん底からのスタートでした。だからこそ、強いカタルシスが生まれ大ヒットにつながったんでしょうね。

ありがとうございます。
普通、学校でいくらいじめられても、家族には受け入れてもらえる展開が多いんですが、そういった家族という存在からも、虐待される主人公を描くことで、成功したときとのギャップが大きくなったと思います。

また、覚醒した後はむかつくやつを蹴散らし、強者に認められ、社会的な評価を得る。こういった展開も、WEBTOONの読者が求めているサービスの一つになります。

次に、目的設定とは主人公の目的が何なのか、明示することです。ただし、主人公の目的をどのように読者に伝えるかは、作品によって違います。
たとえば、『神血の救世主』では、主人公に最初に目的を宣言させています。そして、目的をクリアしたら、また主人公に達成したことと新たな目的を宣言させています。
このように、主人公が何をする物語なのかを明らかにすることで、読みやすさにつながっていくと思います。

“キャラクター”と“ドラマ”で独自性を出す

同じようなサービスを提供していても、流行るWEBTOONもあれば流行らないWEBTOONもあります。どうしてでしょうか。

サービスと目的設定はベースとしておさえるもの。そこに、キャラクターやドラマを肉付けすると、どんどん作品の魅力や独自性が出てくると考えています。その独自性が流行るか流行らないかの差になっているんだと思います。

なるほど。では、魅力的なキャラクターを作るために、遠藤さんの担当作で行われている方法を教えてもらえますか。

ギャップを作ることですね。キャラクターはギャップがあるほうが魅力的になると思っています。ただし、そのギャップは読者にとってうれしいものでなくてはいけません。キャラクターのギャップの先に、読者に「こんな先輩がいたらうれしい」「友達にいたらいいな」というような感想を持ってもらえることを意識しています。
ギャップとしての例を挙げると、完全無欠なキャラクターに見えても、ドジな一面があるとか。完全無欠だと話しかけづらいと思うんですよ。けど、ドジな面があると親近感がわく。こういうギャップは、読者にとってはうれしいものになると思います。