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悪徳広告に要注意! TENGAドクターが教えるオトコの性の悩み/福元和彦

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鹿児島でメンズヘルスクリニックを運営、毎月TENGAナイトで性を楽しむための“大人の性教育”を行っている泌尿器科医の福元和彦氏。TENGAの魅力にあわせて早漏・遅漏、勃起障害、包茎など、オトコの性の悩みについてまじめに楽しく指南します。

メンズヘルスとは?

メンズヘルスクリニック

僕は鹿児島でメンズヘルスクリニックを運営しています。男性型脱毛症(AGA)、勃起障害(ED)、前立腺癌、前立腺肥大症、男性不妊症、男性更年期障害など、これら多くの男性の悩みは、男性ホルモン(テストステロン)が関与している病気です。これはあまり知られていることではありません。僕は泌尿器科が専門ですから男性ホルモンが得意分野です。女性クリニックに対等するものが男性にもあればよいのではないかと思い、メンズヘルスを掲げています。

もともと福元メンズヘルスクリニックのドクターとして、Twitterで勝手にTENGAや勃起のことをつぶやいていました。すると、世の中には男性の性のことを真面目に語る人があまりいないこともあり、珍しかったのでしょうか。TENGAさんにお許しをもらえてTENGAドクターとアカウント名を変えてからはフォロワーが飛躍的に増え、様々なメディアから声をかけていただけるようになりました。

僕は性の話って基本は「楽しいこと」だと思っています。性については女性の方が発言されていることが多いですが、真面目だったり暗くなったりすることもある。Twitterでもよく書くのですが、性って答えがありません。だから、間違っているとか正しいとかでは決してありません。今日僕が話すことも、間違いだと思う人もいるでしょう。けれども、医学的な見地から言えばこっちがおすすめですよ、という程度に理解してもらえればと思います。

TENGAとは?

株式会社TENGA(典雅)とは

株式会社TENGAではTENGAを「セクシャルウエルネスアイテム」としています。日本語に訳すと「性の健康」ということです。僕たちは分かりやすく普通に「オナホ」と呼んでいます。男の人にとって、勃起や射精ができること、男女に限らずセックスができることは、健康でないと難しいことです。特に男性はすごくメンタルが大事で、ストレスがあると勃起も射精もできません。健康でないと、性を楽しめない。より楽しむためのものとして、TENGAがあります。

株式会社TENGAは2005年創業です。現在は海外でも売れていて69の国と地域で販売をされています。累計で8,000万個以上販売されており、なんと世界中で、3秒に1個売れているそうです。

TENGA革命

TENGA登場以前のマスターベーショングッズは、明らかに卑猥でした。現在も売られていますが、用途は日常生活の中でなんかムラムラするから発散しようかというものであって、あえてエロを強調する必要はないはずです。この違和感に着目したTENGAが革命を起こしました。マスターベーションというのは、あまりオープンに語られることはありませんが、人間の根源的な欲求に基づいた自然な行為でほとんどの人がやっていることです。自然なことなんだから、一般的な商品としてグッズを作っていこうというのが株式会社TENGAの考え方です。

TENGAヘルスケアとは?

TENGAグループは現在、男性向けのTENGA、女性向けのiroha、そしてTENGAヘルスケアという3つのブランドを展開しています。この中のTENGAヘルスケアが、僕が仕事をさせてもらっている分野です。

TENGAはあくまでも、今元気な人がより楽しむための商品やサービスを展開しています。一方、TENGAヘルスケアが何をしているかというと、不妊の方、高齢者、病気でEDになってしまった方など、何らかの原因で性を楽しめていない人が、楽しめるようになる商品やサービスの開発です。

自宅でできる精液検査

TENGAヘルスケアでは、男の妊活と、遅漏・早漏の治療サポートに取り組んでいます。まず、妊活について。精液検査は、産婦人科や不妊クリニックで採精が必要で、とてもハードルが高いです。そこでまずは、自宅で気軽に精液検査ができる商品を発売しました。MEN’S LOUPE(メンズルーペ)といって、スマートフォンの動画で精液を見られるキットです。結構クリアに精子が動いているのが分かります。実際、MEN’S LOUPEで「診断」はできません。けれど、精子がいるかいないか、動いているかはだいたいこれで分かります。

精液検査の結果は日によって変わります。無精子症だと精子が出てきませんが、日によって多い少ないというのはあり得るパターンで、その理由は医学的にも解明されていません。不妊治療の技術はすごく進歩しているので、精子1匹と卵子があれば治療できる時代です。だから、いるかいないかを調べるのはすごく大事なので、妊活や不妊治療のきっかけとしてトライするのはよいと思います。うちのクリニックでも、これを使ってみて精子がいないと来院する人が増えてきました。

腟内射精障害とは

次に、遅漏についてです。遅漏で問題となるのが、膣内射精障害です。マスターベーションはできるのだけれど、セックスだと射精ができないという若者がすごく増えています。そうすると女性との仲が悪くなってしまったり、膣の中で射精ができないので男性不妊症の原因にもなっています。主な原因は2つで、①心理的な問題 ②不適切なマスターベーションをしているというもの。「心理的な問題」というのは、1人じゃないと射精ができないとか、不妊で奥さんから責められるなど心理的ストレスによるものです。けれど、7割の方の原因は、実のところ「不適切なマスターベーション」です。

不適切なマスターベーション

TENGAさんが過去に、男性がどんな方法でオナニーをしているかというアンケート調査を実施しました。

9割以上の人が、手を上下にピストンさせて刺激していました。けれど、他にいろんなことをしている人がいると分かりました。①寸止めするというのは、早漏の改善のためにやっている人もいると思います。②足ぴんというのは、足をぴんと伸ばしていないと射精できないということ。セックスだと騎乗位くらいしか体位が思い浮かびませんが、AV女優のようなテクニックを持った女性ばかりではありません。データによると10代の人に多いです。その他、③ローションだったり、④床オナ、壁オナ、というどこかにこすりつける方法も10代で10%を超えていました。

床オナ、壁オナの人は、恐らく勃起せずに射精をしています。勃起していたら痛いですよね。だから、こすりつけていたら射精してしまうという癖をつけてしまっているんです。そうしているうちに、勃起して上下にピストンさせる方法で射精することができなくなってしまう。悪いわけではありません。楽しんでいるからいいのかもしれない。けれども、普通に結婚して子供を持つという幸せを思い描くなら良くないということです。下の図で不適切という言葉を使うのは「間違った」というわけではないからです。

治療の流れ(刺激漸減法)

この膣内射精障害の治療のために、TENGAヘルスケアではMEN’S TRAINING CUP FINISH TRAININGというシリーズを発売しました。特徴は固い順に01~05番まで番号を振ってあること。01番は一番固い。だんだん緩くなってきて、05番は、あえて膣のような構造にしています。中をひだ状にして、ずどんとした構造になっています。膣内射精障害の人は強い刺激ではないと射精できないので、01番から始めて、それができたら順番に進めていく。05番で1分間に60ストロークぐらい、10分ぐらいで射精できたら卒業だとしています。これが、膣内射精障害の治療方法です。

早漏は自分のエゴ?

次に、早漏についてです。医学的に言うと、膣内に入れて1分間我慢できない人が早漏です。ですから、ほとんどの人が多分、早漏ではないと思います。でも、やはり一番大事なのはパートナーとの満足度です。膣内性交中、50%以上の確立でパートナーを満たすために、十分な時間射精を我慢できない状態とも言えます。

早漏の原因と治療

早漏の原因は2つあります。1つは射精を我慢する筋肉が衰えること。これは中高年に多いです。射精を我慢できなくてだらだらと漏れてしまう。もう1つは若い人に多いのですが、脳が性的興奮を抑えきれずに射精してしまうパターンです。

早漏の治療には薬が処方されることもありますが、確立された治療法がないのが現状です。そこで、TENGAさんが早漏対策としてのMEN’S TRAINING CUP KEEP TRAININGというシリーズを出しました。先ほどの膣内射精障害、遅漏の方の逆パターンです。最初が弱い。徐々に強くしていきますが、最後の段階でも膣内を想定してあまり強いものにしていません。

けれど、ほとんどの人が悩んでいる早漏は、自分のエゴなんです。少しでも長く性交を楽しみたいとか、女性をヒーヒー言わせたいとか。相手の女性がそれを望んでいればいいですが、早漏と遅漏とどちらがいいかと聞くとほとんどの女性が早漏がいいと言います。女性はそれよりもオーガズムに達することができない悩みの方が多いです。ですから、イかせるテクニックを磨く方が女性を満足させるには手っ取り早いのではないかと思います。

オトコの悩み(勃起障害と包茎)

勃起と射精のメカニズム

勃起のメカニズムについてお話ししましょう。いい雰囲気になってくるとまず、脳が反応します。その刺激が骨盤までぐっと伝わると勃起中枢が刺激されます。すると海綿体というのが緩んでばっと血流が入ってきて勃起します。これがざっくりとした流れです。一番大事なのは、性的な刺激が脳にある前に、副交感神経が優位になっていること。人間が活動的なときは交感神経が活発になり、寝るときやリラックスするときは副交感神経が活発になります。そもそも、リラックスしていないと勃起しないのです。だからリラックスすることが大切です。

次に、射精はどういうことが起きるのかというと、興奮が高まって今度は交感神経が優位になってきます。そして、オーガズムが高まって射精をします。図のように一連のことがあるのは奇跡的です。この全てが整って、勃起と射精を可能にしているのです。

勃起と射精は必ずしも連続しない

勃起と射精は必ずしも連続しないので、勃起できるけど膣内射精障害というのはよくあります。勃起のメカニズムと射精のメカニズムは全く異なるものなので、勃起をしなくても射精することがあるし、勃起しても射精しないことはある。なので、脳が性的な快感を覚えてオーガズムを迎えれば、勃起をしていなくても射精を迎えることはいつでもあります。特殊な例として乳首オナニー、乳首だけ触って射精をする人もいます。けれどあまりおすすめしません。未勃起状態での射精は癖になってしまって、戻らなくなるからです。

勃起障害(Erectile Dysfunction : ED)

次はそもそも勃起が得られない、勃起障害についてです。医学的には、男性の性行為において十分な勃起が得られないか、または維持できないために満足な性行為を行えない状態のことと言います。うちのクリニックにもED検査して下さいとか、僕はEDでしょうかという人も来ますが、「あなたは、ここに来た時点でEDです。だって満足していないんでしょう。」と答えています。自分の勃起に満足できていなかったらED治療薬を使っていいんです。

治療に使う勃起補助薬は、日本だと、バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ、シアリスという3種類が処方可能です。どれも強制的に起たせるというものではありません。あくまでも、ムラっとして性欲が増したときに勃起するのを支えるの薬です。つまりそもそも、脳に性的刺激がないときは効果がないですよということです。バイアグラは飲むと一酸化窒素の分泌が増えて、血管が広がってどんどん血流が増す薬です。今ではその血管を広げる作用が注目されて、様々な研究が行われ、いろんなものに保険が適用されています。

仮性包茎なんて言葉はやめてしまえ

最後のテーマは、包茎です。そもそも仮性包茎という概念は日本にしかありません。仮性包茎というのは普通の状態で、剥けているのは手を加えた証拠です。このあいだも70代の男性が来て仮性包茎なんだけどと相談されました。それぐらいネガティブイメージがある。これは美容外科の宣伝の影響だと思います。海外ではまれに割礼の文化が残っていますが、そういうことをしている人以外は基本的には包茎です。僕のところに外国の方も来院しますが、みんな被っています。基本的に問題はありません。ということで「#仮性包茎なんて言葉はやめてしまえ」プロジェクトというのを発動しています。資金力のある美容外科の広告にはなかなか叶いませんが、このままネガティブキャンペーンをされたらよくないイメージが広がってしまいます。

真性包茎は泌尿器科(保険適用)で手術を

ただし、真性包茎は困ります。包皮口が狭いため、亀頭が出なくて剥けないという人。もしくは、カントン包茎という亀頭は出せるけれど包皮の口が狭いために陰茎を締めつけてしまう人です。これら真性包茎の方たちは、手術による治療が必要ですが、泌尿器科で治療ができ保険が利きます。保険適用で実費1万円もしません。ぜひ保険で治療を受けてもらえればと思います。

仮性包茎でもコンプレックスでやはり治したいという方は、ぜひ泌尿器科に行ってもらいたいです。実費で10万円ぐらいで手術ができます。ただし、悪徳な美容外科などに行くととても高額になります。国民生活センターで公開されているデータによると、1万円~3万円という謳い文句で出向いて、50万円以上支払うことになったケースが多発しています。しかも、手術後に不安や不満が残ったり、化膿したり、腫れたりすることも。けれど悪徳な美容外科はアフターフォローもありません。

多くの人が、相談に行ったその日に手術をしてしまいます。それが危ないんです。月に5,000円で10年のローンを組めば全ての悩みが解決するなどと言われて、考える間を与えられずに勧誘されてしまう。そうすると、大学生とか新社会人とかは、これを払ってしまえば自分のトラウマが解消されるしなと思ったりしてしまうんです。本当に悪徳な美容外科がたくさんありますから気をつけてください。

オトコの性の話

勃起障害や包茎など、大事なオトコの性についてなかなか語られることはありません。だからネット検索をして、不適切な情報に接して、正しいと思い込んでやってしまう。そして、恥ずかしい思いが先行して口に出せないから、悩んでも誰も対処ができません。だから、どんどん深みにはまってしまう。

僕にはSNSなどでDMがどんどん届きます。すごい時代になったと実感すると同時に、僕ら医者も垣根を下げていかないといけないなと思っています。特に性の分野ではまだまだ情報が足りません。僕はこれからも良い情報を発信していこうと思っています。

(画像提供:iStock.com/vchal)

【福元 和彦】

39歳 鹿児島出身
2008年に川崎医科大学を卒業後、臨床研修医を経て泌尿器科医となる。
川崎医科大学泌尿器科で性機能・排尿機能・アンチエイジングを中心に診療や研究を行う。

2017年地元である鹿児島に帰り福元クリニックで一般泌尿器科医として診療を開始。
そして男性特有の悩みを解決する医療機関として福元メンズヘルスクリニックを開業する。

現在は世界初のTENGAドクターとして適切な性の情報発信や講演活動をしている。
性の情報発信としてTwitterを活用しフォロワー数は1.7万人にまで増加中。
鹿児島ではTENGAナイトと言う大人の性教育イベントを定期的に開催している。

サンクチュアリ出版ではほぼ毎日、すごい人を呼んでトークイベントを開催しています。
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