今も昔も、小学生のなりたい職業に上位ランキングする”マンガ家”。けど、ほとんどの人がいつしかその夢を諦めてしまう……。私(西島)自身もそうでした。
ところが、四十近くなり、なんとなく自分のこの先の人生が見え始めた頃、絵が描けなくてもマンガ業界に携わることができる方法を知ったんです。それが、マンガ原作者への道。そして、私自身はアラフォーでデビューしました。
周りを見渡してみると、私のように社会人になってから、小学生の頃の夢であるマンガ作りに携わりたいという人は意外と多いんですよね。その方法の1つがマンガ原作者になること。
ただ、なる方法は人それぞれ。そこで、毎回、ゲストをお迎えして、マンガ原作者になる方法を語っていきます。
第6回目のゲストは、テラーノベル編集部Iさんです。
株式会社テラーノベルは、累計DL数760万超(2023年12月時点)の日本最大級の小説投稿プラットホーム“テラーノベル”を運営しています。
現在、集英社やKADOKAWAをはじめとする出版社とパートナーシップを結び、投稿小説のコミカライズも行っています。
小説原作のコミカライズが増えている中、どのような小説が原作として求められているのか、今後も原作の需要は増えていくのか、テラーノベル編集部のIさんにお話を伺いました。
喜怒哀楽の中でも”喜怒楽”を揺さぶるものが読者の心を掴みやすい
どのような小説がコミカライズされやすいのでしょうか。異世界やロマンスファンタジー、不倫・復讐といったジャンルが流行っていますが……。
確かに、電子書籍ストアのランキングを見ると、女性向けの異世界恋愛もの、不倫・復讐もの、社会人男女の恋愛(契約結婚や純愛など)に人気が集まっています。そのため、出版社さまから「これらのジャンルでおもしろい小説はありませんか?」というお声がけは多いですね。
一方で、今年の5月以降、テラーノベル投稿小説からコミカライズされたものを見ると、ホラーやサスペンス、ミステリー色のある学園ものなど、多岐に渡っています。
コミカライズしたいという出版社さまのジャンルの要望はさまざまです。流行のジャンルでないと難しいということはないですよ。
ジャンルよりも読者の感情(喜怒哀楽のなかでも、特に”喜怒楽”)を揺さぶる小説であることのほうが重要です。具体的にいうと、“(復讐などで)スカッとする”“(ヒーローから愛されるなど)承認欲求が満たされる” “現実から逃避できる”“主人公に共感できる”といったことがあげられます。
女性向けの異世界恋愛もの、不倫・復讐ものなどのジャンルが人気の理由の1つに、これらの要素を出しやすいジャンルということもあるのではないでしょうか。
“読者のどんな感情を刺激したいのか”を意識すると、作品の次の展開(小説からコミカライズ)が広がっていくと思います。
魅力的なキャラクターを作る練習として、身近な存在をモデルにしてみる
おっしゃる通りですね。読者の心を惹きつける小説を書く際に気をつけたい点をお教えいただけますか。
魅力的なキャラクターを描くことです。
キャラクターを構成するものとしては、性格や行動原理、発言、見た目などさまざまです。魅力あるキャラクターを作るためには、これらの構成要素を突き詰めることが大切です。それ次第で、そのキャラクターが織りなす物語がどんなふうになるかが変わってきます。
もちろん、作り上げたキャラクターが読者の感情を揺さぶることにつながっていく必要があります。
マンガはキャラクターが大切だとはよく言われることですよね。志望者が魅力あるキャラクターを作るためにおすすめの勉強法はありますか?
キャラクターの設定書を作ってみてはどうでしょうか。インターネットで検索すると、いろんなフォーマットが出てきます。
とはいえ、ゼロからまったく新しいキャラクターを作り上げるのは難しいと思います。
自分の身近な存在、たとえば、家族、友人、ちょっとユニークだなと思う人、気になる人をモデルにキャラクターを作ることから始めてみてはどうでしょうか。
読み進めていくうちにおもしろくなるではなく、1話からおもしろいものを
キャラクター以外にも意識すべきことはありますか?
小説においてもマンガにおいても1話は特に意識する必要があります。
たとえば、エンタメといっても、小説もあれば、マンガもありますし、動画やゲーム、音楽などもあります。さまざまな選択肢がある中、自分の小説を読んでもらうにはどうすればよいか。読者の心を掴むためには、読み進めていけばおもしろさが分かるというのではなく、最初から「おもしろい」「気になる」じゃないといけないんです。
冒頭でしっかりとキャラクターがどんなことをする話なのか、どんな相手が出てきて、何が起きそうなのか、または何が起きたのか、問題はクリアしそうなのか、道筋を見せてあげる。そうすることで、読者に選んでもらえる作品になると思います。
ちなみに、ランキングが上位だったり、♡マークやコメントが多かったりする投稿作品のほうが、コミカライズには有利なのでしょうか。
有利になるケースもありますが、個人的には前ほど重要視されなくなったのではないかと思っています。
コミカライズ向けの原作を探してらっしゃる出版社さまが増えていることもあり、まだ始まったばかりの作品からでも「面白い作品はないですか?」と聞かれることも増えてましたので。
ますますマンガ原作の需要は増加していくのでは?
今後も小説原作は増えていくと思われますか。
縦スクロールマンガも横読みマンガも原作の需要は増えると思われます。
というのも、マンガ家さんがストーリーからネーム、線画、場合によっては着色まで一人で全て担うのは大変だからです。
販売する側としては定期的にマンガを配信したい。理想をいえば、週に1度でなく、もっと更新回数を高めたい。それが分業することで可能になります。
また、政治ものや歴史もの、アングラなどのジャンルの場合、調べるのが大変です。そういったジャンルでは、原作があるといいなというのはありますね。
実は、私自身、マンガ原作者になる前は雑誌などで取材ライターをやっていました。そのため、取材力はマンガ原作に活かせると考えています。
とはいえ、取材経験がない志望者がいきなり取材するのは難易度が高いと思います。たとえば、仮想通貨投資や子どもの小学校受験といった体験を元にした原作も、取材と同じぐらいの強みになると考えてもよいでしょうか。
はい、そうですね。そういった本来なら取材が必要となる体験は強みになるかと思います。
80タイトル以上のコミカライズが進行中! テラーノベルのXを要チェック
最後に、一言お願いします。
テラーノベル内に投稿した作家さまの作品が多くの方に読まれて、「書いて良かったな。楽しいな」と思ってもらえることが大前提で、次の展開ということでコミカライズにつなげていくことができればと思っています。
実際、多くの出版社さまから「何か良い原作はないですか?」とのお声がけいただいています。
弊社では2024年6月現在、出版社さまとパートナーを組み、80タイトル以上のコミカライズを進行中です。
テラーノベル内で随時コンテストも行っていますので、X(旧Twitter)や公式サイトなどを通して、ぜひテラーノベルからの情報をチェックしてほしいですね。
本日はありがとうございました。
株式会社テラーノベル
小説投稿プラットホーム「テラーノベル」を運営。
2017年7月よりサービス開始。
2023年12月現在、累計DL数760万。
サービスページ https://teller.jp/
X(旧Twitter)@app_teller
聞き手
西島ユタカ(にしじま・ゆたか)
マンガ原作者
縦スクロールマンガ原作に『スクールカーストは逆転する~この美貌で復讐のターン~』(小学館)、マンガ監修に書籍『マンガで読む 学校であった怖い話 絶望教室』(池田書店)、マンガシナリオに書籍『コミック版 やってはいけない老後対策』(小学館)、マンガ原作にWEB『なにわコイン娘〜仮想通貨にツーカーになろう〜』(小学館)など多数。
X(旧Twitter)@toyoko_t