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先生にやれること、やろうとすべきこと
でも、学校内でそういうことを言わせないようにはできる。教師は教室の治安を守る役割を担っている立場でもあるから、そういう指導は時に必要なことでもある。荒れている生徒に、学校内のルールを教えること、そうして教室の治安を保つことは、仕事の一環として努めるべき。
ただね、そこまでなの。先生がやれることは。そして、やろうとすべきなのも。
学校外での言動だったり、根本的な価値観までは、教師には関与できないし、そこを育てる係って親なの。親がやるべきだし、親にしかできない。
だけど、その親から「死ね!」などと言われている子どもが世の中にはいて。そんな理不尽な環境で暮らしている子に、何を伝えても意味がない。餓死をしそうなほどお腹が空いている子にすべきことはひとまず食事の提供でしかないのと同じで、本当はそういう子たちには、他者に「死ね!」とは言ってはいけないという当たり前のモラルがある家庭を提供してあげる必要があるんだけど、教師はそこまでできないでしょ。「死ね!」と言われる環境で育ってる子を見つけるたびにそこまで面倒を見ることを目指していたら身がもたないし。児相と繋げれば解決するほど単純な問題じゃないし。
学校の先生がやれることや、やるべきことって、学校の中で起きたことへの対応までだから。子どもの価値観の形成とか、そういうのは親の仕事だし責任なの。だから、親がヤバイ家庭の子どもをどうにかする方法って基本的には存在してない。
子どもの素行って、親の教育や家庭環境が土台になってる。土台を変えずに、その上に積み重なっているものだけを変えられる方法なんかない。
だから、「そんな方法は存在していない」ってことを理解して、諦めること。それが、教職に就いている人が自分の心を守るために必要な判断。私はそう思っている。
暴言を吐く生徒がいるのは、先生のせいじゃないし、先生はそこまでカバーできない。あなたの指導力不足のせいじゃないのよ。
子どもの根本的な人間性だったり価値観を整えるようなアプローチは、親にしかやれないことだから。だって、親だけが、自分の人生を丸ごと我が子に注げるし、時間も財産も注ぎまくりながら超手厚く関われる唯一無二な関係性が親子だから。
そんな手厚い対応って我が子にしかやれないし、しなくていいことなのよ。そんなこと、仕事の一環でやれることじゃない。自分よりも大事な我が子が相手だからこそ、やれることでしかないんだから。
親は、唯一無二な手厚さを持って教育に臨める立場だからこそ、我が子については深く携われる。根本的な価値観にも斬り込めるし、大掛かりな教育ができる。全身全霊で関わってるから。
親子だから、じゃないの。親ってだけで、話を聞いてもらえるとかじゃないの。かけがえのない存在である我が子に全身全霊で関わっているから、異次元な影響力を持てるの。
逆に言えば、親子でなくても相手に対してそういう情熱の注ぎ方をできれば、他人であっても大きな影響力を持つことはできるし、親子であっても、親が子に片手間で向き合っていたら、子ども側が心を開かないからさほど影響力を持てない。
他人の価値観に影響する力を持つ方法
子どもの教育に限らず、他人を変えたがりな人って世の中にすごく多い。
私の元には「もっとこういう風になってほしい人がいるのですが、どう伝えれば相手は変わりますか?」というような質問がしょっちゅう届く。
家族やパートナーや友人や知人など、いろんな他人に対して、善意で「気付いてほしい、教えてあげたい」と考える人もいれば、「あなたがそんな風だと私がしんどいから、もっとこうなってほしい。どうすれば変わってもらえる?」などと自分の都合でヤキモキしている人もいる。
気持ちはわかる。だけど私は、他人を変えようとするのはすごく不毛なことだと考えていて。いつだって、変えられるのは自分の判断だけ。
今のパートナーに不満がある人は、そんなパートナーをどうにかして自分好みに育てようとするのではなく、すでに仕上がっている人材とチェンジしちゃったほうがいいし、人はそもそも自分のことだってなかなか変えられなくて悩むのが常な中で、他人のことなんてもっと変えられるわけがない。
「説得力のある言い回しができれば、他人を変えられるはず!」と思っている人は多いけど、説得において一番大事なのは実は伝え方ではない。
なぜなら、そもそも人は、他人の言葉をそこまで本気で聞いていないものだから。音としては聞こえていても、心にまではそうそう届かない。
心が動かないと人は変わらないけど、そもそも大半のシチュエーションでは人は心の扉を閉じた状態で会話をしている。だから、多くの助言は心に届いてすらいない。届いてないのだから、心が動くことも当然ない。
他人の生き方に影響をもたらすって本当に難しいし、基本的には無理だと思っていた方がいい。
そんな風に考えている私だけど、実は1つだけ、他人に影響力を持つ方法がある。それは相手から憧れられること。人は、憧れている人の言葉だけは、心の扉をガン開きで受け止めるから。
言葉って、物理的に身近だから届くわけじゃない。会ったことがなくても、なんなら同じ時代に生きていなくても、相手から憧れられたら、自分の言葉は相手の心に届くようになるし、感度高く響くし、伝えた分だけ心を動かせて、生き様に影響できるようになる。
だから私は、有名になることを大事にしている。たまたま公園で見かけた親子の親の言動がひどかったとして、その場で「そんな言い方をしたら子どもが可哀想だし、教育としての効果もないですよ」なんて言ったところで、何も変えられないけど、下田美咲に憧れる人を増やせば、その人たちには私の育児論が届くし、その積み重ねでその人たちの子どもへの声がけは変わるから。
近所の人の言動が不適切だったとして、直接言ったところで反感しか買わないけど、それを原稿に昇華して発信すれば、それを読んだ誰かの価値観には食い込める可能性がある。
私は、目の前の人のことは変えられないけど、原稿の先にいる人のことはけっこう変えられる。隣にいる夫より、会ったことがない読者の人のほうが、心に触りやすい。
人を説得するために必要なのは説得力じゃなく、憧れられている関係性で、憧れてさえもらえば言葉はかなり届くようになり、響くようになり、刺さるようになるものだから、世の中を良くしたい人がやるべきことは、立派で素敵で憧れられる自分になることで、他人の価値観に影響する力を持てるのはそこから。
ということで引き続き、自分の言葉が届く相手を増やすための活動を頑張る所存です。
下田美咲 1989年生まれの35歳。有料noteの売上が累計2億5千万円を突破している令和時代の売れっ子エッセイストで、2児の母。 10代の頃よりモデル・タレントとして活動。 21歳の時に始めたYouTube企画「下田美咲の動画プロジェクト」が人気を博し、 当時としては異例の再生回数を連発。「コールの女王」として注目を浴び、多数のテレビに出演する。「下田美咲参上」のフレーズも話題に。 27歳の時に、結婚を機に作家に転向する。 現在までに出版した著書は「新型ぶりっ子のススメ」「人生の作戦会議!」など7冊で、作家として「セブンルール」「ボクらの時代」などに出演。 2018年より、読者の質問相談に個別対応するためのオンラインサロンをオープン。月額12500円と高額ながらも、現在までに2000会員と交流。誰よりも読者のリアルに詳しい作家になることを目指し、やり取りを重ねている。 2024年現在のSNSの総フォロワー数は11万人。 下田美咲Instagram https://www.instagram.com/shimodamisaki815/profilecard/ 下田美咲サロン「人生を動かす目からウロコ」 https://lounge.dmm.com/detail/1612/