新刊のコラム

フリーランスの確定申告、これを知らないと大損する! ~支払調書だけを参考にするのは危険な理由~

国税庁は、2020年(令和2年)分の確定申告期限を1か月延長することを発表しました。猶予ができた分、ぜひフリーランスの方たちには知っておいて欲しい情報があります。


しっかり準備をしないまま慌てて確定申告を作成すると、大損する可能性があるからです。
フリーランスに強い税理士として、これだけは絶対にやってほしいこと、勘違いしがちなことについて、徹底解説します。

損しないためのキーワード=「税金の前払い」

そもそも確定申告書というのは、所得税を自分で計算して税務署に申告するためのものです。そこで損しないためのポイントはズバリ、「税金の前払いを把握すること」です。
フリーランスの人たちが、企業と取引をして売り上げをもらうときには、大抵10%位の金額が天引きされていますよね。
これが所得税の前払いです。そしてこの前払いの処理を確定申告書上で誤ってしまうと、大損してしまうのです。

詳しい解説の前に、まずは所得税の納税スケジュールをおさらいしておきましょう。

サラリーマンの場合、所得税は月々給料から天引きされています。つまり毎月納税する形になっています。
そのため自分が納税をしているという意識が薄いサラリーマンが多いのですが、マネーリテラシーを高めるためにもそこはしっかりと意識して欲しいと思います。所得税だけではなく社会保険料や住民税も毎月納めています。

では、フリーランスの人はどこで所得税を納めるのかというと、3月15日(今年の場合は4月15日)の確定申告の時です。
そして所得税の申告期限も同じタイミングです。

つまりフリーランスの納税は年に1回、一括で納めることになります。所得税を、自分で計算して税務署に申告するのです。

たとえば、所得税を自分で計算してみたところ、30万円になったとします。
確定申告をするときに、すでに税金を5万円前払いしているとしたら、納税すべき額は30万円から5万円を引いた25万円ということになります。

既に5万円の税金を前払いで納めており、25万円納税すれば済むところを、30万円で申告納税してしまうと、二重に税金を支払うことになってしまいます。だから税金の前払いを把握するというのは非常に重要なポイントになります。

「そうは言っても、二重で払ったら税務署が教えてくれるんじゃないの?返金してくれるんじゃないの?」
そんな声が聞こえてきそうですが、残念ながら税務署は教えてくれません。

二重払いになっていないかどうか?を、税務署側も細かくチェックしたり、把握したりできていないというのが現状です。
また、一般的には税務署は税収が増えることに関してあえて修正したりはしません。国としてはそのほうが得だからです。逆に、あなたが確定申告せずに脱税していて国が損をしてしまう、という場合には追いかけてきます。理不尽だと思うかもしれませんがそういうものなのです。

なので自分が税金の前払いをいくらしているのかをしっかりと把握しておきましょう。

支払調書だけを頼りにするのは危険

次に、支払調書の話をします。
サラリーマンで言うところの源泉徴収票みたいなものです。あなたの収入はいくらで、天引きをいくらしていますというのを伝えるためのもの、それが支払調書です。

 

画像の、支払調書の例を見てみましょう。
あなたは企業からから年間で22000円の報酬をもらいました。22000円から2024円の税金が天引きされ、その残りの手取り額が振り込まれました。
ということが、この調書からわかります。

赤で囲っている金額部分を「源泉徴収税額」といいますが、2024円があなたが税金を前払いした金額ということです。

しかし、支払調書は確定申告書を作る上では、あくまで参考程度にしてください。なぜならこの支払調書に記載されている金額が、正確ではないこともあるからです。また、支払調書を発行してもらえないケースもあります。
大前提として、会社が個人に対して支払調書を発行する義務はないのです。結構知らない人が多いのでまず覚えてください。

たとえば、Amazonという大企業は、「個人に対しての支払調書は発行しません」と名言しています。

Amazonには、Amazonアソシエイツプログラムといって、個人がブログなどでAmazonの商品を紹介して売れると、数%の収入が入るというサービスがあります。一定の金額を超え、Amazonから報酬が支払われる際には、源泉徴収がされている、つまり税金が引かれています。しかし、Amazonは個人に対して支払調書は発行しません。義務がないからです。となると、支払調書を参考に確定申告を行う、ということができなくなります。

とはいえ、大抵の中小企業は、個人から支払調書を発行して欲しいとお願いされたら、応じてくれると思います。
「だから私は支払調書を全部集めることができます」という人もいますが、それでも気をつけてください。

支払調書は、会社が集計して発行するものなので、その集計金額が間違っているということはざらにあります。それは会社が適当だから、というわけではなく、制度に問題があるのです。

源泉徴収票に記載されている金額は、1月から12月までの間に従業員に対して振り込んだ金額をもとに作られています。しかし、振込金額で作成すると正確ではなくなってしまうことがあります。

例えば12月末に仕事が終わり、納品完了して取引先から売上をもらえる権利が発生したとしましょう。しかし12月末に請求しても、すぐに振り込みはされませんよね。月をまたいで1月に振り込みというケースが多いと思います。

しかし、企業の中には源泉徴収票と同じように、相手に振り込んだ金額だけを集計して支払調書を送ってくるところがあります。先の例でいうと、振込金額をベースに調書を作成してしまうと、本当は12月に売上が立っているのに、なかったことになってしまいます。

そう考えると、会社が発行する支払調書の金額が正しくない場合もあるのです。

そもそも制度も悪いですし、会社から個人に対しての義務がないこともあり、支払調書は、確定申告書を作る上においては参考程度に留めておいた方がいいでしょう。

「今まで確定申告は、支払調書をベースに作っていました」という人は多いと思います。「じゃあ何を見て税金の前払いを集計していけばいいのか?」というと、自分自身の請求書しかありません。さらに言うと、職種や仕事内容によっては税金の天引きがされないケースもあります。また、個人間の取引では、税金が天引きをされるということは一定の条件が揃ったレアケースだけです。

だから、どんな取引をどんな相手としたときに、売上から税金が天引きされのか?をしっかりと把握できている人は、請求書を発行する段階で「売上総額は◯円です。天引き金額は◯円です。差額の◯円を振り込んでください」という請求書を作成すればいいわけです。

けれど、ほとんどの人はそれができませんよね。ではどうすればいいか?

自分が発行した請求書の金額と、振込金額に差がある時があると思います。それが、紛れもなく税金が天引きされているという状態です。
その差額こそが前払いの税金なんです。それを集計していけばいいのです。

正直とても面倒な作業ですが、やらないと損をすることは分かっています。だから確定申告書の書き方や提出の仕方以前に、まずはここを把握しておいて欲しいのです。

実際に税金の前払い額を確定申告書にどのように書くのか、についてですが、「源泉徴収税額」を書く欄があります。これは取引先ごとに書く必要があります。10社と取引をして、その全てで天引きをされていましたという場合は10社分の数字をそれぞれ書かなければなりません。もし取引先が100社、200社となった場合、すべて書くのは現実的ではないので、少額のものは「その他」としてまとめて記載している人もいます。

もちろん税務調査が来たときには、「その他」の金額の内訳は示せるような準備をしておく必要がありますが、そういう書き方があるということも覚えておくと良いでしょう。

このように税金のことというのは、ぼ~っと待っていても、誰もあなたが損をしないための情報を教えてはくれません。自分のお金は自分で守る、という意思を強く持ち、お金の知識を身に着けましょう。

(画像提供:iStock.com/PeskyMonkey)

この記事は、”お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!” 税理士・大河内薫 / 漫画家・若林杏樹 の新刊コラムです。


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