ひとり休日を楽しむ!ひみつにしたい下町レトロ散歩のはなし/チヒロ

街歩きWebマガジン『かもめと街』を運営するチヒロさん。『かもめと街』誕生秘話、下町散歩の魅力など街歩きを楽しむヒントをお届けします。後半のトークゲストには『monograph』運営のモノアドバイザー堀口英剛さんが登場!

街歩きWebマガジン『かもめと街』

『かもめと街』とは

『かもめと街』は2017年5月から私が個人で運営するWebマガジンです。コンセプトは「知られざる街の魅力をエッセイで届ける」。ガイドブックとか雑誌に載っていないような、地元の方が通うようなお店を、お店の人に聞いた話や私個人の思い入れとともに紹介しています。

紹介する基準はただ1つで私自身が好きで応援したいかどうか。ある意味「1人食べログ」なのですが、分かりやすく点数で表現するのではなく、あくまで私個人が感じたことを物語のようにして届け、全部を説明しないようにしています。行ったことのある人には何かを思い出させる装置になり、行ったことのない人には行きたくなるような想像の余地が残るよう心掛けています。

紹介するジャンルは主にカフェ、喫茶店、飲食店を巡る街歩きやおすすめの本などの「カルチャー」です。エリアはだいたい東京下町が中心です。3日に1度は更新をしています。

『かもめと街』を始めたきっかけ

『かもめと街』を始めたきっかけは、3つあります。

1つめは体調を崩したことで、自分自身の働き方を見つめ直したこと。2つめは好きなものに共感してくれる仲間が欲しかったこと。SNSで友人と繋がって好きなものをアップしても反応が薄かったんですね。思えば小さい頃から、好きなアイドルや趣味でもメジャーではなく、一番人気がない人やジャンルを好きだったりして寂しい思いをしてきました(笑)。なので、好きな店や人などに共感してくれたらいいなと思って始めました。

3つめは変わりゆく街の景色を残したいと思ったこと。古い喫茶店や洋菓子屋店、レトロなビルなど、下町には歴史を感じさせるスポットが観光名所以外にもたくさんあります。街が変わっていくことは仕方のないことですが、店やその場所が続いていくように応援しつつ、その存在が無くなったときのために記憶に残していきたいなと思って続けています。

そんな『かもめと街』も、もうすぐ3周年を迎えます。現在では月に48,000人が訪れ、月間PV数は今年の1月末時点で約80,000回を記録するサイトに成長しました。今公開している記事は500記事ぐらいですが、まだまだ紹介しきれていないところがあるので、今後のストックが無くなることはないだろうなと思っています。

街歩きの魅力とは

30代に入ってから「日常をおもしろがること」のが人生のテーマになりました。日常生活のなかでも目線を変えれば、なにげないこともおもしろくなるということです。そう感じるようになったきっかけは体調を崩したから。普段の通勤や散歩でも、花が咲いている場所を探しながら歩いてみたりと、テーマを決めていつもの道を歩くだけでもすごくおもしろいです。

先日は下町でレトロな建物やモチーフを探す旅というテーマで歩いてみました。古い建物や使われているタイル、色の合わせ方、お店のレトロなロゴ、昔ながらの床屋さん、スナックの店構えなど、気になるものが多すぎて下町を歩いているとキリがありません。夫と散歩をしていると置いて行かれてしまいますが、1人で写真を撮りまくっています。浅草に住んでいたころにはそんなふうに思ったこともなく、むしろ古くさいなと思っていました。大人になったからこそ、下町に残る味わい深い建物に気づけるようになりました。

偶然の出会いがあることも街歩きの魅力の1つです。私は目的地を持たないまま歩くのはあまり好きではありません。どこか1つでも楽しみを決めて、そこから派生してぶらぶらすることが多いです。下町エリアは東京大空襲で焼け野原になったこともあって、区画整理がされていて、迷子になりにくいまっすぐな道が多いです。なので、方向さえ合っていればいくら回り道をしても平気です。方向音痴の私でも安心して歩ける街です。そうしているとガイドブックに載っていないような喫茶店や、観光名所ではないけれど古くて趣のある建築物に出会えます。

例えば、上野の「齋藤理容館」という床屋さん。上野郵便局の近くにあります。ネットで調べた情報によると1908年から営業していて、腕のいい職人さんが今でもやっていらっしゃるそうです。でも私が通るときはだいたい閉まっていて鉢植が置いてあるので、今やっているのかは定かではないです。

最近見つけて驚いたのが、台東区三筋にある、コーヒーとチョコレートの専門店として有名な「蕪木」というお店に行ったときに見つけた電柱。「蕪木」と道路を挟んで建っているマンションの1階にぼろぼろの柱があって、何だろうと思ってよく読んだら、東京大空襲で焼け残った電柱がそのまま残されていたんです。私自身は歴史に疎いほうですが、下町育ちなので夏休みに戦争の話を聞くことがありました。戦争の話は感情移入をして、その後つらくなってしまうので大人になってからはあまり聞かないようにしていました。けれども、こういう物を見つけると歴史の証人に出会えたようで、今の暮らしに感謝するきっかけをもらえる感じがします。

また、こんな生き方、働き方もあるんだなと、人生の勉強になることも街歩きの魅力です。東京都内でも台東区は自営業の人が多いエリアです。喫茶店とか中華料理店で働く人の佇まいを見ていると、お客さんは大事だけれど、媚びていない印象を受けます。そういう姿がすごく好きで、こんなふうに自分らしく働けたらいいなと感じます。このように自分らしい働き方を見つめ直せるのも街歩きの魅力だと思います。

他にも、急に物語の世界にいるような感覚になれるのも魅力のひとつです。私はお芝居やコントを見たりするのが大好きなのですが、下町散歩をしていると急にお芝居の世界に放り込まれたような気持ちになることがあります。

穴場の店を見つける5つの方法

穴場の店を見つける5つの方法です。人から「こんなお店をよく見つけたね」と言われると嬉しくてついニヤっとしてしまうのですが、だいたいこの5つの方法で見つけています。ひたすら歩いて見つけることもあれば、雑誌などで見つけることもあります。

①その土地の人に聞く
例えば、旅に出たらタクシーの運転手さんに聞きましょう。コンビニの店員さんに聞いて美味しい海鮮丼のお店に辿り着いたこともあります。地元を愛する人に聞くと、いいお店に出会えるのですごく楽しいですよ。

②Googleマップを活用する
目的地が決まっているときは、地図を最大限に拡大すると近くのお店が見つかります。そんなことをしなくても、「喫茶店」などと入力すると近所のお店が表示されるのですが、意外と検索から漏れていたお店が当たりだったりするので、試してほしいです。去年広島を訪れたときは、この方法で終戦直後からやっている食堂を見つけました。私のGoogleマップでお気に入りのお店や行ってみたいお店は3000件以上になっています。これからも増え続けるでしょうし、一生巡りきれないんだろうなと思いながらも、ずっと続けていきたいと思います。

③駅のにある地域情報誌を見る
本屋さんとかで売っているガイドブックだと有名な観光地がメインになりますが、駅にあるフリーペーパーは、読者層が地元の人なので、地域の方が行くようなお店が載っていたりします。

④好きなお店に置いてある近隣店舗のチラシ、フリーペーパーを見る
オープン間近のお店が見つかる可能性が高いです。他にはお手洗いに貼ってあるショップカードなどの写真を撮って後でチェックをしています。本屋さんでは地方のフリーマガジンも充実しているのでチェックしてみると面白いです。

⑤地域サイトを見る
例えば、浅草なら『浅草経済新聞』というサイトがあります。それぞれの地域版が全国にあって、新宿や渋谷なども見ています。『食べログ』でも期間を指定してチェックできることを最近知りました。大手サイトだと『出店ウォッチ』とか『ファッションプレス』も見ています。

ということで、『かもめと街』の下町散歩についてお話ししました。いかがでしたか。最後に、『かもめと街』は好きなお店や街を紹介したいという思いでやっていますが、もう1つ大切にしていることがあります。それは、読んで下さる方に、日常が面白くなるヒントが少しでも届けたいという思いです。何気ない毎日でも見方を変えてみたらまだまだ面白がれることはたくさんあるんじゃないか。そんなふうに思いながら続けています。

『monograph』堀口英剛さんに聞く街歩き

堀口さんの好きな街

チヒロ:
ここからはゲストをお招きして対談形式で行いたいと思います。堀口英剛さんどうぞよろしくお願いします。

堀口英剛さん(以下、堀口):
『monograph』の堀口と申します。僕は『monograph』というメディアを運営しています。チヒロさんがブログをはじめて1年ぐらい経った頃、僕が「ブログの門下生を募集します」という話をしたときに知り合いました。チヒロさんのブログがすごく良かったので3カ月ぐらいメンター生ということで、ブログの内容や画像のアドバイスをさせていただきました。

チヒロ:
堀口さんは最近ではyoutubeでのモノ紹介がメインなのですが、堀口さんのことを私が知ったのは、蔵前のカフェ「Nui」を紹介した記事でした。その記事を読んだときの衝撃が大きくて。書き方に物語があって共感するものがあり写真もすごく綺麗でした。堀口さんの目線で見たカフェの紹介がとても好きなので、今回お話を伺いたいと思いお呼びしました。いくつか質問させていただこうと思います。まず、好きな街はどの辺りですか?

堀口:
僕も街を散歩するのが好きなのですが、特に好きなのが、街の分かれ目みたいなところを探すことです。街ってそれぞれ色がありますよね。その境目みたいな場所ってあるんです。ここから先は渋谷だけど、こっちは代々木だなというふうにこの道を一本行ったら違う街だ、みたいな。その1つが「鎗ヶ崎の交差点」です。中目黒と恵比寿と代官山のちょうど中間の丘の上にあるのですが、僕の家からも近いので、よく行きます。そこから3本道が分かれていて、片方へ行くと恵比寿、もう1つは代官山、下ると中目黒です。この3つは全然色が違う街で、代官山はおしゃれ、恵比寿はもう少しぎらついていて、中目黒はもう少し落ち着いているでしょうか。

その交差点のど真ん中に「ダクトコーヒーラボ」というカフェがあります。ここのカウンターから外の写真を撮ることが多いです。ここにいると3つの街に分かれて行く人を見ることができます。ここを午前中のんびり眺めながら、今日はこっちの街に行ってみようかなと思いを巡らせています。街の分かれ目を落ち着いて眺められる場所ということで、好きなカフェです。好きな街はたくさんありますが、結構その時々の気分によって行きたい場所は変わったりしますし、鎗ヶ崎の交差点のような場所は行き先を選べるのがいいなと思います。

チヒロ:
そこから行き先を3つ選べるというのはすごくいいですね。今すごく、行きたくなりました。次に、お気に入りのカフェってどうやって探していますか。

堀口:
僕もチヒロさんと似ているところがあって、結構Googleマップを使います。使うと言っても僕の場合は調べるというより、雑誌などいろんな情報を見ているなかで気になったところを「お気に入り」に登録します。そして、今日はどこに行こうかなとなったときに、まだ行っていない印を1個1個つぶしていくのが快感なんです。一度チヒロさんともこの話をして、お互いに交換したいねという話をしましたね。あれをもっとみんな気軽に交換してもいいのではないかと思います。

チヒロ:
交換できるんですか?

堀口:
一応、機能はあります。URLを公開する機能があって、それをクリックすると、その人のマップが見れる。『かもめと街』ではそれをぜひやって欲しいと思います。ルートも作れると思いますよ。

チヒロ:
確かにそうですね。そういえばこの前友人から、これから行きたい食堂のリストが100件くらい送られてきました。そういうふうに共有するのはいいかもしれませんね。

堀口:
あれを活用というか、シェアしている人をまだあまり知らないので、もっと使いたいなと思います。あと、同じような機能は「ポケモンGO」にもあるんですよ。マイルートが作れて、それを交換している人がいるらしいです。僕たちはまだ文字と写真で街の情報を共有することが多いですが、もっと別の方法も試していきたいと思います。

あと、僕の場合は家の外で仕事するのが好きなので、電源とかWifiがある場所を中心に探しています。まずは「駅名」「電源」「wifi」「カフェ」というキーワードで検索します。そこで情報が出てきたら行こうかどうするか考えるのですが、出てこなかったらチャンスだと思ってその街に行くようにしています。自分でその街を歩いていいカフェを見つけられたら、そこで自分が1番を獲ることができますよね。なので、検索してめぼしいカフェ情報の無い街をあえて攻めるようにしています。そうすると、その街の情報が少しずつ増えていくんです。僕が1個書くと、それを見て同じように書いてくれる人がでてきます。そうするとその街のデータベースが充実するので、情報の無いところほど、歩いて探すようにしています。

チヒロ:
それをお聞きすると、『かもめと街』にもそういうところがあります。下町の情報って個人でやっているサイトが本当に少ないんですね。おすすめのカフェの紹介とかを探すと、だいたい大手サイトのインスタ切り貼りみたいな感じで。それだと寂しいというか、情報が分かりにくいというのもあって自分でやろうと思ったのを思い出しました。

堀口:
また「ポケモンGO」に話が戻りますが、やってることは同じなんです。行ってみて、いいお店やカフェを見つけたら、レアなモンスターをゲットしたのと同じ感覚です。目的があると歩くのも楽しいですよね。

チヒロ:
確かに、知らない街ですてきな食堂を見つけると私も嬉しくなります。

堀口:
どうせならそれを人にシェアしたい思いがあって、僕はブログを書いています。そんなふうに街の情報がどんどん増えていくといいですね。

(画像提供:iStock.com/Gwengoat)
◆プロフィール

○チヒロ(『かもめと街』/街歩きエッセイスト)
浅草育ちの街歩きエッセイスト。2017年から下町の「感じのよいレトロな店」を中心に、webマガジン『かもめと街』でご紹介。現在500記事更新。毎日たのしく過ごしたい人に向けて、年間400軒の店めぐりから「知られざる街の魅力」をお届けしています。2019年発行の台東区広報誌でエッセイとおすすめの店を紹介。小学館『和樂Web』、マガジンハウス『Hanako.tokyo』などでライターとしても活動中。

かもめと街:
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○堀口英剛(『monograph』 / モノアドバイザー)
29歳のモノアドバイザー。40万人の男子が読んでいる一人暮らしモノメディア『monograph』編集長。 Yahoo! JAPANから独立後、(株)ドリップ社長に。ポプラ社よりモノマリスト本発売中。最近はモノ作り中。

monograph:
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