星野源から谷崎潤一郎まで、49の文章から導き出された圧巻のバズる法則集

ブログを書いたりTwitterで呟いたりしていると、バズらないかな、バズらせたいなと思ったことがありませんか。どう書けばバズるのか。三島由紀夫からこんまりの文章まで、「文芸オタク」の著者が表現を分析し、どこが刺さるのかわかりやすく解説した本を紹介します。

6月5日、著名ブロガーさんたちのあいだでシェアされて軽くバズッた文章がありました。それは、「ライフハック大全」などの著作がある堀正岳さんがnoteに記した文章「微笑みひとつをこの世界に残して」。
高校時代に親しかった友人なのに卒業以来疎遠になり、かろうじて繋がっていたFacebookで突然友の死を知る、という内容です。突然早くに逝ってしまった友の死を知るという悲しいけれど小説やエッセイでよくある題材を、堀さんは日常の自分が運動会の準備をしているシーンから書き始め、平易な文章で友人のエピソードを「微笑み」をキーワードに綴っていらっしゃいます。
一見友の死というショッキングな事柄に引きつけられて最後まで読みすすめてしまったように感じますが、そこには堀さんの文章力によるものが大きいです。お父さんなら心当たりのある何気ない日常の一コマの描写、短い段落でテンポがよい語り口、平易な表現などなど。なんとなくいい文章だとわかるけれどもどのあたりがなぜいい表現なのか、的確に分析して自分の文章力の糧とするのは難しいですよね。
「バズる文章教室」では数多くの書き手の文章を例に、読者を引きつける「つかみ」、心地よい「文体」、なるほどと思わせる「組み立て」、印象に残る「言葉選び」の4つのパートに分けて、どの表現や書き方が読者の心にグッと刺さるのか、具体例と共にわかりやすく教えてくれます。

合宿ってポロリが多いんですよね

意味のわからないフレーズを見出しに使いました。「え、合宿、ポロリ、何?」と疑問に思いますよね。この見出しにどのような本文が続くのか気になりませんか。
本書の文例の一つめはこの文章からはじまります。女性に大人気の占い師・しいたけ.のブログからの引用。わかりやすく多くの女性に共感を覚えさせるしいたけはブログでも絶妙な単語を冒頭に提示し、一気にしいたけ.の世界に引き込んでいきます。
ここでさらに注目したいのは、このしいたけ.の例は本書で1番に紹介される文例であること。著者の三宅さんは文章のつかみのポイントを語りつつ、さらに本書の「つかみ」である最初のモデルとして「しいたけ.の誘因力」を利用しているのです。しいたけ.の占いを知っている方は、「あ、しいたけ.が取り上げられている」という意外感、知らない方は、え、それ誰という疑問符が頭に浮かぶ。
本書は、モデルを紹介しつつそのモデルを実践している三宅さんのテクニック、遊び心も楽しめる仕掛けになっています。

司馬遼太郎は見えないビデオカメラを持っていた?

バズる文体の例では村上春樹から向田邦子、三島由紀夫、谷崎潤一郎とビッグネームが並びます。そのうちの一人司馬遼太郎は、「司馬遼太郎の撮影力」として紹介されています。「街道を行く」から引用された例文を本書はカメラでの撮影になぞらえて、文章の横に赤ペンで撮影テクニックのワードを加えていきます。ティルト、ドリー・イン、ズームイン、フォーカス。
エッセイに限らず、司馬遼太郎の小説はなぜか鮮明な映像として印象に残っていませんか。ああ、それってカメラ撮影しているように情景を描写しているから映像として記憶に残るのだと、本書の解説で腹に落ちました。エッセイの「街道を行く」は映像化されていますし、司馬遼太郎の作品は繰り返し映像化されている作品も多いです(NHK大河ドラマ原作は最多!)。それは題材とストーリーもさることながら、この文体に寄るところも大きいとのだろうと納得させられる解説です。

秋元康はオチでひっくり返す

直前のChapterは開高健、司馬遼太郎、三島由紀夫、谷崎潤一郎と続くのでちょっとハードだな、若いブロガーさんだとこの作家さん達の作品読んだことがない人も多いかもと少し心配になりはじめたところで、秋元康の「ポニーテールとシュシュ」がバズる組み立ての例として登場します。
国民的ヒット曲が生まれにくい時代には珍しく、AKB48のこの曲は比較的知っている人が多い曲、サビを口ずさめる曲だと思います。「オチでひっくり返す」の例として登場し、それはそれで皆そうだよねと納得する解説なのですが、著者が用意した幅広い文例と、飽きさせない紹介の順序が際立ちます。このChapterは、みんな知ってるジャパネットたかた創業者の高田明、さくらももこ、こんまりと続きます。みんな知っていてしっかりとモノを売っているということは、モノを売るためのウケる口上の組み立て方を実践している証拠です。なんで高田さんが出てくるの、あの人は喋る人なんじゃないのと思った方、彼が喋っていた台本は全て彼が書いていたのですよ。

もう盛りのついた、猫背のメスの猿なんです!

知っている人はピンときたと思います。NHKの朝ドラ「あまちゃん」で当時の能年玲奈が演じるアキの台詞です。バズる言葉選びの例として紹介されています。天才脚本家クドカンの表現ですからこの領域に達するのは難しいと思います。しかし、このレベルまで言葉を盛らないとバズるにはほど遠いとも思えます。「盛りのついた」、「猫」、「メス」、「猿」にアキの特徴である「猫背」も被せて作られた勢いのある台詞。もうどうにも止まらない「恋愛的欲求不満」がむんむんと表現されています。
それにしても驚くのは、著者がカバーする文章の幅広さです。ナンシー関が紹介されていますが彼女が活躍した時期は著者が小学校低学年。文豪の作品ならともかく、ナンシー関の作品まで読んでいたのかと単純に驚きます。

「バズる文章教室」のChapterごとにごく一部を紹介しました。こんな感じで怒濤のごとく49の文章が繰り出され解説されていきます。書かれた年代的にも、ジャンルの幅広さもある文章読本は類を見ず、これは「文芸オタク」を自称する著者の強みがなせる技です。
なんでそんなに読んでるの、これ書いたの誰なんだ、と疑問に思ったら、プロフィール紹介のページや前作も読んでみてください。これからどんな作品を書いていくのか、今後の活躍が楽しみな作家さんです。

(文 戎井一憲)

(画像提供:iStock.com/marcoventuriniautieri/kuppa_rock/selimaksan/bankrx)

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