趣味のカメラを「お金」に変えるワザ/こいしゆうか×金洋秀×小野瑞希

カメラは実に夢のある趣味。初心者からでも、おこづかい稼ぎはもちろん、立派な「副業」にもなり得ます。今回、カメラに夢中のイラストレーターこいしゆうかさんと、プロフォトグラファーの金洋秀さん・小野瑞希さんで「カメラで稼ぐ方法」について大激論!

こいしさん×編集大川によるオープニングトーク

こいしさんの著書「カメラはじめます」、大ヒット中

司会
今年1月にこいしさんの著書「カメラはじめます!」が発売されましたが、すでに3万部の大ヒットだそうですね。

こいしゆうか(以下:こいし)
ありがとうございます。本を出すのは3冊目ですが、こんなに短期間で販売部数が伸びたのは初めて。私は過去にカメラを挫折していて、編集の大川さんから出版のお話をいただいたときは知識もスキルも全然なかったんです。だから「私でいいの?」と不安だらけだったんですが、フォトグラファーの鈴木先生に教わりながら本を作っていくうちに、カメラがどんどん好きになっていきました。

司会
大川さんはなぜこいしさんにオファーをしたのですか?

サンクチュアリ出版編集部・大川(以下:大川)
こいしさんはキャンプコーディネイターとして、キャンプ=男性の趣味というイメージを覆す「女子キャンプ」を提唱しています。カメラもキャンプに似ていて、メカっぽさや専門知識が必要そうなイメージから、苦手意識を持っている女性が多いんです。一見難しそうなキャンプをコミックという手段でわかりやすく伝えられるこいしさんなら、カメラの魅力も120%伝えることができるのではないかと思い、お声がけさせていただきました。

こいし
私は国内外のいろんな場所でキャンプをしているんですけど、どんなに素敵な風景もスマホで撮るとイマイチ。雑誌社から写真がほしいと言われても、渡せるものが全然なかったんです。「カメラを持って山に行こう!」という雑誌の企画もありましたが、そのときは使いこなせた気になっても、帰ってきたら忘れてしまうんですよね(笑)。だから、ちゃんと記憶に残る覚え方が知りたいとはずっと思っていて。この本の執筆をきっかけに一眼レフを買って、一度挫折したカメラを勉強し直せたことで、私のカメラ人生はようやくスタートしました(笑)。

大川
私もカメラが趣味なんですが、3年前にカメラを手にしたときは、いくらネットで使い方を調べてもさっぱりわかりませんでした。知識のある人に聞いても、専門用語がたくさん出てきて混乱するだけ(笑)。最低限なにを覚えればいいかを知りたいとずっと思っていたので、今回の本のテーマも「覚えることは3つだけ!」というのが大きな特徴です。

こいし
これ、すごくいいですよね。ポイントは本当に3つだけで、専門用語はほぼ出てきません。私は今でも専門用語はわかりませんし、人に説明もできないんですけど、「なんとなく」の感覚で理想の写真を撮れてしまっているのがスゴイ!

ゲスト2名による自己紹介 〜私がカメラを始めたきっかけ〜

カメラに目覚めたきっかけは、バイト先のラーメンでした(金洋秀)

金洋秀(キム・ヤンス/以下:金)
はじめまして。僕はフリーで活動しているフォトグラファーで、来月26歳になります。奈良県生まれ、関西学部法学部卒。新卒で広告ビジュアル制作会社のアマナグループにアシスタントとして入社し、2年後に独立しました。

写真の学校に行っていたわけでもなく、地元の銀行に就職しようと思っていた僕がカメラと出会ったのは大学生の頃。学費を自分で払っていたので、軽音楽部で音楽をやりながらアルバイトを10個かけもちしていました(笑)。そんな中で何気なく買ってみたのが一眼レフ。最初は木とか、家の屋根とか、父の書斎の本とか、とりとめのない写真ばかり撮っていました。

あるとき、バイト先のラーメン屋さんの店長から、「カメラ持ってるならメニューに載せる写真撮ってくれへん?」と頼まれたんです。誰かのために写真を撮るのは初めてだったので、おいしそうに写る光の入れ方やアングルをネットで調べて撮影に挑みました。すると店長たちはその写真をすごく喜んでくれて。そのときに初めて「写真っておもしろい! 追求すればもっとうまく撮れる!」と思ったんですよ。昔から「職人」という仕事に憧れていたのもあり、フォトグラファーを志すことに決めました。

アマナグループには当時40人くらいのフォトグラファーがいて、僕はアシスタントとして入社しました。そこから2年勤務して、2017年5月に独立したという流れです。

写真学科に入る前は、体育教師を目指していました(小野瑞希)

小野瑞希(以下:小野)
私は金さんの1歳下の1993年生まれ。日本大学藝術学部写真学科を卒業後すぐに、フリーのフォトグラファーとして活動を始めました。

大学進学時、第一志望は実は体育学科でした。ずっと水泳をやっていて、将来は体育の先生か水泳のコーチになりたかったんです。でも受験で落ちてしまって。第二志望を写真学科にしたのは、フォトグラファーになって憧れのアーティストのCDジャケットを撮れたらかっこいいな、という思いがあったから。それで写真学科に進むことにしました。

最初に渡されたのはフィルムカメラ。始めればすぐにうまくなれるものだと思っていたら、全然上達しなくて、まわりの上手な同級生たちを見ては落ち込みました。この頃は正直カメラがあまり好きではなかったですね。2年目になってデジタル一眼レフを持つようになり、知り合いの誘いで原宿でファッションスナップを撮り始めてからは、だんだん楽しいと思えるようになってきました。被写体を素敵だと感じたり好きになったりすることが、いい写真を撮るうえでは大事なんだとわかってきたんだと思います。

卒業制作の時期には、自分が本当はなにを撮りたいのか再び悩んだりもしましたが、大学生活4年間でカメラを「自分を表現するツール」としてだいぶ使いこなせるようになりました。フリーで活動する今も、写真を撮り続けながら模索している段階です。

こいしさん×金さん×小野さんによるトークセッション

最初はどうやって仕事をもらったの?

こいし
ここからは私が進行役になって、今日のテーマである「趣味のカメラで稼ぐ方法」について3人で話してみたいと思います。おふたりはプロなので趣味ではありませんが、若くしてフリーになって最初はどうやって仕事をもらっていたんですか?


僕は自分から営業に行ったことはまだ一度もなくて、前の会社の仕事も受けていません。仕事をいただく窓口は主にネットです。ひと昔前ならポートフォリオを制作会社や出版社に持ち込んで営業する必要がありましたが、今は自分のホームページを作って、あとはSNSやネットサービスに作品を載せていくことで受注につながる時代。

僕は会社を辞めたとき、「会社を辞めたので仕事をください」という内容の、いわゆる退職エントリをブログに書きました。会社で学んできたことや得意分野、「独自のライティングで24時間いつでも朝を作れます」「人物も撮ります」みたいな売りポイントを詳しく書いたら、その記事が2日間で2万PVにのぼるくらいバズって、記事を読んでくれた方から仕事をいただけるようになったんです。

もともとツイッターもやっていたので、僕のツイートをフォロワーさんたちが広めてくれたことも大きかったです。発注先を探している企業側も、最近はSNSなどをチェックして自ら動くケースが多いですから、自分が寝ている間も代わりに営業をし続けてくれるSNSやホームページは重要なツールだと思います。

小野
私も自分から営業したことはありません。大学在学中から、企業の求人広告用の写真を撮る仕事をしていて、そこで出会った企業の方から新しい仕事をいただいたりすることが多かったです。

こいし
仕事現場から仕事をもらってくるんですね! スゴイ!

小野
私は、一緒に仕事をさせていただく人をできるだけ好きになって、少しでも楽しい時間を共有できるように努めているので、それが相手にも伝わっているのかなと思います。フリー1年目のときは、相手をどうしても好きになれなくてつらいこともありましたが、ファインダー越しに好きになれるポイントを粘り強く探していくことで、私も相手自身も気づいていなかったその人の魅力を発見できるようになってきました。

まずはなにを撮ればいい?


苦手な人やものを撮るのは難しいですよね。僕もポートレートは女性しか撮りません(笑)。男性は同性だからなのもあって、いいところをなかなか見つけられないんですよ。僕の中では、料理と女性を撮る感覚は似ていて、「おいしそうに見えるポイント」や「萌えポイント」を見つけるのは得意なんです。

こいし
静物の場合、ただ「ものを撮っている」と思うと全然うまく撮れないんですよね。「ずっと好きだった人に贈るための花束」とか「インドア派の人が新しい世界に踏み出すためのアウトドアウォッチ」とか、背景を勝手に想像して撮るとイキイキと撮れる気がします。苦手な被写体を撮る仕事が来たら、実際おふたりはどうするんですか?

小野
まずは撮りながら好きなところを探ってみるようにはしますが、どうしても難しいときは向いていそうなフォトグラファー仲間に声をかけますね。好き同士で仕事ができたほうが絶対にいいと思うので。


僕も同じです。一応テストでは撮ってみますが、無理であれば「ぴったりのカメラマンを紹介しますのでいいものを作ってください!」とクライアントにお伝えします。

こいし
プロでもそうなんだから、趣味で稼ぎたいと考えている人は「好きなもの」に絞って撮ったほうが、効率的に腕が上がりそうですね。

「稼げる写真」って、どんな写真?

こいし
たとえば、撮った写真を1枚ずつ売る方法とかはあるんですか?


あります。僕が前にいたアマナグループが運営する「アマナイメージズ」や、「シャッターストック」「ピクスタ」など、いわゆるストックフォトサービスに写真をアップするという方法です。写真の販売価格はピンキリで、サイズなどに応じて1枚数百円から数万円。写真を購入するのは、「ホームページやパンフレットを作りたいけど、プロに撮影をお願いする予算はないな…」といった企業などです。

ストックフォトの場合、多くの人にニーズがありそうな「使いやすい」写真をアップすることが大事。僕の友達は、本業はライターですがカメラが趣味で、ストックフォトに登録して月10〜15万円くらい稼いでいますよ。誰でも登録できるので、稼ぐにはこの方法が一番早いかもしれませんね。

こいし
なるほど。ひとりのフォトグラファーとしていきなり仕事をもらうのは、やっぱり難しいものなんでしょうか。


写真には「作品としての写真」と「商売としての写真」があって、稼ぐためには後者を撮ることが大事になってきます。ただ撮るだけではなく、世の中や発注主はなにを必要としていて、どう撮ればそれを実現できるのか、頭で考える必要がある。それができるフォトグラファーには仕事が来ます。あと、自分の写真が必要であろう人にどう届けるか、という視点もものすごく大事。

こいし
ギタリストになりたい人が1日中家で弾いていても意味がない、ということですね?


はい。「届ける」という部分はネットで簡単にできる時代なので、まずは撮ったものをアップすること。SNS、ホームページ、ブログ、あとは「note」というサービスもおすすめ。自分の記事コンテンツを課金制で読めるようにできるので、うまく使えばダイレクトに収入やファンを増やすことが可能です。

小野
フリーのフォトグラファー向けの登録サービスを活用するのも手。ポートフォリオや得意分野を登録しておけば、発注主のニーズと合致したときにオファーをいただけるチャンスがあります。また、大規模なイベントにカメラを持っていって参加者を撮影し、撮らせていただいたお礼に写真をお渡しするという方法も。そこからファンになっていただける可能性があります。

ほかの写真に埋もれない、自分らしい写真を撮るには?

こいし
誰もが簡単にネットにアップできる時代だからこそ、個性が必要になってくると思うんですが、工夫していることはありますか?


僕は、写真を見ただけで「金が撮った写真だ」とわかることを目指しているので、個性はかなり意識します。自分の写真がいろんな人に届くようになると、届いた先での使われ方がコントロールしにくくなるので、たとえ勝手に使われても自分らしさが残るようにしておきたいんです。

小野
私は機材に加えて、「自分の心が動く瞬間」を撮ることを大切にしています。最初は気づかなかったんですが、被写体との距離感や表情などが「小野さんらしいね」とまわりに言われたことがあって。私が心から撮りたいと思ったものをそのまま写すことが、「私らしさ」につながっているんだと思います。

趣味のカメラが「お金」に変わるとき

こいし
ここまでお二人のお話を聞いて、「趣味のカメラで稼ぐためにどうしたらいいか」を考えた時、
やっぱりまずは自分が好きなものから撮っていくのがベストだと思いました。
好きなものなら、ストレスにならないですしね。


僕はカメラはじめたてのとき、自分が好きそうなものを2万枚くらい、ひたすら撮っていました。最初はうまく撮れなくてあたり前なので、撮ることに意味がありますよね。

こいし
私もカメラを使えるようになって、今までは「綺麗!」だけで終わっていたのが、以前よりも好きなものに向き合う時間が増えました。自分が好きだと思ったものを伝えたくなるんですよね。それを人に見てもらったときに、「ステキ!」とか「ここ行ってみたい!」と言われると、嬉しくてまた撮りたくなっちゃう。


人に見せると、ポジティブでもネガティブでも必ず反応がもらえますよね。
それがあるとまた撮ろうとなる。だから発表する場をつくるのは大切だと思います。

こいし
自分がすごく好きだったり、伝えたいものがあるとき、それを写真にしたら響いてくれる人が1人でもいるかもしれないですよね。
たとえば私だったら、大好きなキャンプの写真をたくさん撮ることとで、お金を払ってでも欲しいという人がいるかもしれない。
そのためにも、撮って終わらせずに、伝えられる場所に写真を出していくことが大事なんですね。出す場所はSNSでも、展示でも、身近な友達に見せるでもいい。それが遠回りにようで、実は一番の近道なのかもしれないですね。

<質疑応答>

(1)誰もがネットで写真を発信できる今、フォトグラファーの立場は今後厳しくなるのでは?


個人的には、フォトグラファーという職業はいずれなくなると思います。ドローンにAIを積んで自動撮影できるようになるでしょうし、人の手を介さなくてもライティングができるシステムはもう存在しています。ただ、ディレクションやスタイリングができるフォトグラファー、つまり「考えて撮れる人」は残っていくのではないでしょうか。インスタグラマーが強いのは、撮影能力だけでなく「どうすればファンに響くか」を考えて実行する力があるところだと思います。

(2)人物を撮るとき、とくにまだ関係性ができていない人を撮るときに、警戒心を解いてもらう方法は?

小野
撮影したものを実際に見てもらって、安心していただくことが大事。少し緊張しているくらいの真剣な表情も素敵だと感じたら、あえてそのまま撮り進めることもあります。

(3)カメラの技術面は理解していますが、いざ被写体を前にすると、ベストな距離感やアングルなどの発想が湧いてきません。

小野
私は、恋をするくらいまでその人を見続けます。いろんな角度から徹底的に見つめて、その人にしかない魅力や、自分の心が揺れるポイントを探り当てるようにしています。


映画をたくさん見てみてはいかがでしょうか。映画は1秒間に24枚の写真がスライドされるので、それだけいろんな瞬間を目にすることができます。絵画や街の広告など、写真以外からアイデアを得られることも多いです。

(4)運動会やイベントで子どもを撮るとき、シーンに合うレンズをその場ですぐに選ぶことができません。


レンズを何種類も持っていくより、24-70mm、24-105mm など、だいたいの距離感をカバーしているレンズをまずは1本だけ使うのがいいですよ。最初はそれで十分に撮れますし、使っていくうちに撮りたい写真とレンズの関係がわかってくるはず。その中で「自分は50mmをよく使ってるな」といった気づきが出てきたら、単焦点レンズを買ってみてもいいと思います。

小野
とくに女性はイベント中ずっと重いレンズを持っているのは大変なので、体型に合ったレンズを1本セレクトして、1枚ずつしっかり撮ることに集中するのがいいと思います。

(5)おすすめのスマホアプリはありますか?


イチオシは「VSCO(ヴィスコ)」というプロ御用達のアプリ。基本無料で、課金すれば使えるフィルターが増えたりします。細かく調整できるので、僕もスマホで写真を撮るときはマストで使いますね。

 

(画像提供:iStock.com/ielanum)

※こちらの記事は新刊「カメラはじめます!」の発売記念イベントのレポートです


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■こいしゆうか

イラストレーター。 
またキャンプコーディネイターとして、雑誌やラジオ、テレビなどで企画・コーディネイト・プロデュースを行う。 
これまでキャンプで日本全国、さらに世界各地で、素晴らしい景色を見てきたのにいい写真が全く残っていない後悔から、ついに一眼レフカメラデビュー。
著書に『キャンプできちゃいました。』『日本酒語事典』など。


■金洋秀

1992年 奈良県生まれ。関西大学法学部 卒業
2015年 amanaグループ 株式会社acubeに入社。
2017年5月に独立しフリーランスのフォトグラファーに。
透明感のある世界観で写真・映像を中心に広告・雑誌・SNSなどで活動中。
https://www.instagram.com/yansukim/
http://www.yansukim.com/


■小野瑞希

1993年、東京生まれ。
日本大学藝術学部写真学科に入学をきっかけに写真をはじめる。
人の心に触れる写真を日々ゆっくりと模索中
http://miijuki.tumblr.com/

 

 


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