ザビエル 私が著者になるまで

誰でも“幸せな夫婦”になれる。離婚だって悪くない/ザビエル

#私が著者になるまで

24歳で授かり婚。亭主関白で家事を一切しないダメ夫が、ある日一念発起。8年の月日をかけ、何度も妻とぶつかりながら夫婦のコミュニケーションを研究した。夫婦はどうすれば幸せになれるのか。そもそも歩み寄ることはできるのか!?

お互いに「もう何を言ってもムダ」。何年も続く冷え切った夫婦関係

妻との出会いは、24歳の誕生日を間近に控えた春。5歳年上の彼女は、昼夜を問わず仕事に励み、貯金を溜めては、長期の海外旅行を繰り返すアクティブな女性だった。ザビエルさんの猛烈なアタックで交際はスタート。3カ月目に子どもを授かり結婚を決めた。

だが結婚当初、ザビエルさんは実に最低な夫だった。
妊娠8カ月の妻に「お風呂に入りたいんだけどお腹が重たくてしんどいから、洗ってくれない?」と頼まれても、「あ、オレ今日シャワーでいい。入りたいなら自分でやって」
妻が臨月間近でも家事は一切せず、ネットゲームをするために自室にこもる。出産前にして妻は「この結婚は間違いだった」と後悔していた。

出産後、間もなくザビエル夫妻は、夫の仕事の都合で引っ越しをする。産後まもなく縁もゆかりも知人もない土地に移り住んだ妻が、産後うつに陥るまでに時間はかからなかった。それでもザビエルさんの亭主関白ぶりは変わらず。妻が我慢を重ね、かろうじて夫婦仲が保たれていた。

結婚5年目には第2子にも恵まれ、ザビエルさんも自分なりに子育てに関わり、家事も手伝っているつもりだった。

「僕は皿洗いをして妻を助けていると思っている。でも妻は僕の皿洗いのやり方が気に入らなくて文句を言う。ケンカは絶えなかったですね」

第2子が生まれて間もなく、ザビエルさんは独立をし、自宅で仕事をするようになる。

「一緒にいればいるほどケンカが増えてしまう。次第に『お互いに何を言ってもムダ』と必要最低限の会話しかしなくなってしまった。夫婦関係は冷え切っていましたね」

妻は常に正しい。夫も正しい。相手の思考を勝手に想像せず違いを知る

そんなザビエル夫妻は、何がきっかけで変わったのだろうか。

「独立して仕事が行き詰まってしまい、どうすればもっと仕事がうまくいくのか、ビジネス書をたくさん読むようになったんです」

最初はビジネスのことしか考えていなかった。どうすれば商品が売れるようになるのか。マーケティングや心理学、NLPなどの本を読み漁り、ビジネスセミナーにも通った。
あるビジネスセミナーで進められた「グッド・アンド・ニュー」(24時間以内に起こったうれしいこと、よかったことを言語化する)を毎日考えてみるようになった。
自分が発するメッセージを変われば、相手の受け止め方が変化することに気がついた。
自分の思考が現実を作るという「引き寄せの法則」を知ったときには、仕事も家庭もうまくいかない現状がすべて自分に重くのしかかり、深い自己嫌悪で3日間高熱にうなされた。浮かんできた子どもの笑顔に、「不幸なことばかりではない」と活力を取り戻した。

イライラ、怒り、悲しみ、憤り、喜び。相手の言動に対して、自分の中にどんな感情が沸き上がるのか。その理由は、「相手の言動ではなく、常に自分の中にある」と知った。モヤモヤした感情が生まれたときには、なぜそう感じるのか、自分自身に質問を繰り返した。

「当時は、とにかくお金が欲しかった。では、なぜそんなにお金が欲しいのか。お金があったら何をしたいのか。その理由は何か。そんな自問自答をひたすら繰り返していました」

自分の思考が変化し、ビジネスがうまくいきだすうちに、知識欲はさらに貪欲になった。幸せとは何か。宗教では何を説いているのか。すべてを包む宇宙の果ては――。冷え切った夫婦関係に目を向けないまま、興味の対象はどんどん外の世界に広がっていった。

そんなある日、子どもを叱る妻の言動が妙にイラついた。勉強しない子どもに向かって「大学ぐらい行かないと」と叱る妻。ザビエルさんは高卒である。妻の言葉に自分自身の存在を否定されたような気がして腹が立ったのだ。もちろん妻にそんなつもりは、まったくなかった。

「ああ、そうか。自分が勝手に妻の言動を解釈して、自分が勝手に怒っていたのか。そう気がついた翌日、はじめて妻に『ごめんね、勝手にイラついてました』と謝ることができたんです」

自分でも驚くほど、素直に謝りたいとはじめて思えた。それまでなぜ自分がイライラするのか、その理由も考えてみたことがなかったのだ。その頃から、夫婦の関係は少しずつ変わりだす。

「それまではとにかく自分が正しくて、相手が悪い、間違っている。そんなスタンスでケンカしていました。でも本当はどちらも悪くない。妻には妻の怒る理由がある。それは妻にとって正しいんです」

妻と夫、双方が感じる感情は、それぞれに正しい。相手の感情や思考回路を勝手に想像しないで、相手にちゃんと質問する大切さを知った。以前なら反射的に腹を立てていた妻の言動に対しても、その真意を聞くように心がけた。

「聞きかじったばかりの知識で、『俺の言葉をもっとポジティブに受け止めろ』と妻に押し付けたり、『お前ももっと勉強しろ』と偉そうに言ってしまったり、試行錯誤しながらたくさんケンカしましたね」と苦笑する。

それでも、冷たい夫婦関係ではなくなりつつあった。

100人と無料で電話相談。蓄えられていくロジック

ザビエルさんがブログを始めたのはこの頃である。
いまから5年ほど前。夫婦関係の改善に試行錯誤する「探求」の過程をブログにつづった。
数カ月がたち、ちらほらとコメントが寄せられるようになると、DVや離婚危機など、深刻な夫婦関係に悩む人から重い相談が来るようにもなった。

世間の夫婦がどんなことで悩んでいるのか。純粋な興味もあったし、自分のノウハウが助けになればうれしい。誰かの役に立ちたかった。「僕でよかったら話を聞かせてください」と無料で電話相談に乗るようになった。電話かけ放題のプランを契約し、電話はザビエルさんからかけた。

何が夫婦の問題なのか。数十分話しただけでは分からないという。最低でも数時間、多いときでは10時間以上。とても一日では聞ききれない。夫婦に何が起こっているのか。これまでどんなやり取りがあったのか、相談者の生い立ち、感情の受け止め方、問題の根本など、こまかくヒアリングを行った。時間切れになると、また日を改めて電話をかける。無料で電話相談に乗った人の数は、あっという間に100人を超す。


ザビエルさんのお話は、とってもわかりやすい。そして何よりやさしい語り口が魅力。

メルマガを始めると、読者も順調に伸び、そこからまた新たな相談も来るようになった。
「『1ヶ月以内に離婚届にサインしろと最後通告を受けた』『夫が浮気をして別居中』など、あまりにも重い相談が多いので、電話相談を始めた当時は、相談者の悩みに引っ張られて気分がふさぐこともありました」

相談者と自分を冷静に切り離し、客観的に問題の原因を探り、精神的なツラさを感じることはなくなった。様々なシチュエーションにいる人たちの相談に乗りながら、夫婦のコミュニケーションの最適解を探す日々が続く。「おかげさまで関係を改善することができました」と相談者から朗報が届くようにもなってきた。

夫婦のどちらか一方だけが努力するのは正しい姿ではない

夫婦関係を改善するキーワードは突き詰めれば二つだけ。「感謝」と「謝罪」を相手に伝えることだという。しかし、夫婦だからこそ、なかなか素直になれない。「ありがとう」と伝えるのが妙に照れ臭かったり、ケンカしてひどい言葉を浴びせかけても、どうしても素直に謝れなかったり。

「自分の中に素直になれない感情があるなら、無理をしなくてもいいんです。もし相手にどうしても謝りたくないのなら、なぜ謝りたくないのか、その理由を考えてみる。いくら感謝や謝罪が大切だと言っても、自分の感情を押し殺していては意味がないんです」

目指すゴールは極めてシンプルなのに、そこに至る道筋は人によって千差万別であることを実感する日々。多くの相談者から悩み受け止め、解決策を一緒に模索する中で、ザビエルさんはもどかしさを感じていた。

「僕のもとに相談に来るのは8割以上が女性。夫婦の一方だけが夫婦関係を改善しようと一生懸命に頑張っている。実際、夫婦のどちらかが頑張れば夫婦関係を改善していくことはできます。でも夫婦に問題がある場合、どちらか一方だけが悪いというのはあり得ない。一方だけが頑張る姿は正しくないんです」

夫婦両方に読んでもらい、お互いの行動に理解を深め、夫婦仲をよくするコンテンツをパッケージとして世に読み広めたい。積み上げてきたロジックとノウハウは十分にある。ブログやメルマガだけでなく、出版の道を自然と模索するようになった。

出版社の編集者1000名以上が登録する「企画のたまご屋さん」に投稿したところ、さっそくある出版社から連絡が入り、とんとん拍子で一冊目の出版が決定。書籍全体の企画や構成、タイトルは自分が考えた通りに進行ができた。

一冊目の執筆作業が佳境を迎える中、ブログを見た別の出版社からも問い合わせが入った。このとき、すでにブログは、1カ月10万人以上が訪れる人気ブログへと成長していたのだ。

「夫婦のコミュニケーションを改善し、夫へのイライラを解消する妻向けの本を作りたい」というオファーだった。1冊目とは違うコンセプト。すべてを自分で考えた1冊目と違い、編集者の企画をチームとなって制作進行する楽しさがあった。

わずか半年の間に、無事2冊目の本を出版。ブログを開始した当初は、「家族のことをブログには書かないでよ」と否定的だった妻も、たくさんの人から寄せられる反響の声を目にするうちに活動を応援してくれるようになった。


ザビエルさん渾身の2冊目の本。仕事道具として愛用するiPad Pro とともに。

「私、この家庭の子どもに生まれたかったな」妻の言葉に涙する

「自分を動かす一番の原動力は、探求心です。『夫婦関係が改善しました!』と読者から入る報告もうれしいけれど、それよりもいま自分が持っているロジックでは十分に改善できないケースの原因を突き詰めて、その解決策を見つけたときの喜びのほうが大きいです」

この夫婦には、どんな問題があるんだろう。
どんな質問をすれば、問題の本質が分かるのだろう。
どんな言葉なら、自分の意図が正しく伝わるのか。
どんな表現なら、より相手の行動を動かすことができるのか。

そんな探求心がザビエルさんを動かす。

「ある意味、僕、ものすごく自己中なんです。自分が幸せでいたい。でも子どもや妻が不幸せだったら僕は絶対ハッピーになれないから、やっぱり家族は絶対に幸せにしたい。本やブログを読んでくれた人、相談してきた人、みんなが幸せになればなるほど僕ももっと幸せになれる」

「幸せ」にゴールはない、とザビエルさんは言う。
これまで一度も「ごめんね」と言ってくれなかったパートナーが、あるときから「ごめんね」と言ってくれるようになったら、それは夫婦関係を改善する大きな一歩になる。でも、それは夫婦関係のゴールでは決してない。

ザビエルさんが妻に素直に謝れるようになってからも、何年もの月日をかけ、少しずつ夫婦関係を再構築する時間が必要だった。

「将来、子どもがいつか自分が育った家庭を思い出して、『自分も親と同じような家庭を作りたい』と思ってくれたら最高に幸せですね」

そうなるように努力していたら、先に妻が「私、あなたが作ってくれたこの家庭の子どもに生まれたかったな」と言ってくれた。心の底から幸せがあふれてきた。

「夫婦は、もっともっと幸せになれる。『幸せな夫婦』は誰でも必ず作れます。もし、あまりにも関係がこじれ過ぎてしまっていたら、『幸せな夫婦』の相手は今のパートナーではないかもしれない。でも、ちゃんといまのパートナーと向き合い、相手の気持ち、感情と真剣に向き合い学んだことは、次のパートナーとの幸せな関係構築に必ずつながります」

「離婚したくないから、夫婦仲を改善する」のではなく、「パートナーと幸せになりたいから、夫婦関係を改善する」と考えるほうが、確かに幸せへの道のりは近そう。

いちばん身近にいるから、いちばん素直になるのが難しいのが夫婦。
でも関係がよくなると、それだけで人生の幸福度が大きく変わる。

「夫婦関係を改善するロジックをさらにバージョンアップさせたら、次は理想的な親子関係を構築するコミュニケーションを深めていきたい。それができたら、次は結婚前の人に向けたコンテンツも考えていきたい。結婚ってもっと人生を幸せにしてくれるものだよ、と広めていきたいですね」

ザビエルさんの探求の旅は終わらない。

(取材/文 玉寄麻衣 、写真 サンクチュアリ出版 大川美帆)

ザビエル


幸せ夫婦 伝道師。ペンネームはザビエルだが、鳥取県米子市生まれ。
ネットゲーム、パチンコ、浮気、モラハラを繰り返していた元ダメ夫。
離婚を考えながらも、ある日一念発起し8年間かけて夫婦のコミュニケーションを研究する。
その結果、今でもぶつかることはあるが、妻と子ども3人の5人家族で超幸せな家庭を築けるように。

その後自身の研究、経験をもとに夫婦仲についてのブログを開設。今では1カ月10万人以上が訪れる人気ブログに。
メルマガ読者は1万5千人を超え、1000人以上に直接アドバイスを行なっている。
相談者は女性が8割以上で、モットーは“夫婦関係の改善は、夫、妻のどちらでもよいので、どちらか一方が自分自身を変えること”。
論理的でわかりやすい、自分を変える方法が人気。

ペンネームの由来は、ヒゲ面を見た友人から「ザビエルみたい」と言われたことから。

ブログ 夫婦道 http://jyosui.com

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