大好きなキャンプをさらに楽しくしてくれたのはカメラでした/こいしゆうか

こいしゆうか

イラストレーター兼キャンプコーディネイターのこいしゆうかさんは、今「一眼レフカメラ」に夢中。過去に一度挫折し、国内外のキャンプで見た絶景も写真に収めることなく過ごしてきたこいしさんが、カメラ初心者から成長を遂げた道のりをインタビュー!

人生を180度変えた「キャンプ」との出会い

日本全国、そして世界各地でキャンプを経験してきたこいしさんは、雑誌やテレビでも活躍する「キャンプコーディネイター」。初心者や女性も気軽に始められるハウツーを提案し、キャンプの魅力を広めている。

これまでのキャンプ実績は1000泊以上というこいしさんだが、8年前までは「超インドア派」だったという。

「27歳までは会社勤めで、営業事務の仕事をしていました。ゲームや漫画が大好きで、休日には12時間ぶっ続けでゲームをやっていたこともあるくらい(笑)。公私ともに、季節の移り変わりをあまり感じることのない生活をしていました」

そんなこいしさんの人生を変えたのは、同僚と出かけたキャンプだった。

「それまでキャンプはファミリーで楽しむイメージだったんですが、夫婦や友達同士など、大人がたくさん楽しんでいるのを見てびっくり。しかも、その日がちょうど流星群の見える日で、近くにいた人たちみんなで焚き火を囲んで一緒に眺めたんです。それがすごく楽しくて、キャンプの魅力に一気に引き込まれちゃいました」

当時はまだキャンプといえば、本格的な道具が必要だったり、車を運転しなければならなかったり、力仕事が多かったり…と、女性が楽しむにはハードルの高いイメージが強かった。そこでこいしさんは、SNSのコミュニティ「女子キャンプ outdoor girls」と、女性視点のキャンプ情報を発信するブログ「女子キャンプ*」を開設。さらに「女子キャンプオフ会」を開催して、自分と同じようにキャンプに興味のある女性を地道に集めることにしたという。

「ルールは、マイテントを自分で設営することと、食事もマイバーナーで自分で料理すること。みんなで同じ場所に行って、困ったときは協力し合いながらも、プライベートな空間は確保する。そんなやり方で始めた『女子キャンプ』ですが、すごく反響がありました」

「キャンプ」が、イラストレーターの夢を叶えるきっかけに

幼い頃から絵が好きで、よく漫画を描いては友達と見せ合っていたというこいしさん。いつかイラストレーターになりたいという思いから、会社勤めのかたわらイラストの学校にも通っていた。

「エッセイコミックが描きたくて、コンテストに応募したりもしていました。でも、インドア派だったので肝心のネタがないんですよ(笑)。しばらくは日常のくだらないことをテーマに描いていましたが、キャンプにハマってからは『これだ!』と思いました」

キャンプを始めて1年ほど経った頃、一念発起して会社を退職。イラストレーターとして、さらにキャンパーとして大きな一歩を踏み出した瞬間だった。

専用の道具をそろえなくても、難しい知識がなくても、100円ショップや雑貨屋さんのアイテムを使って気軽に楽しく始められるこいしさんの「女子キャンプ」は、女性たちの間にみるみるうちに浸透。今ではSNSのコミュニティ参加者は3000人以上にのぼり、年齢も職業もさまざまなキャンパーたちと定期的にキャンプを楽しんでいるという。

キャンプを題材にした念願のエッセイコミックも発売し、順風満帆だったこいしさんが、突然「一眼レフカメラ」にハマったのはなぜか。その理由もまた、大好きなキャンプのためだった。

これまでに見てきた絶景の数々が、写真にまったく残っていない!


「キャンプには防水のアウトドアカメラを持っていくんですが、私のカメラでは風景が平面的に写ってしまって、せっかくの絶景もうまく残せなくて。だから写真自体あまり撮っていなかったんです。雑誌から写真提供の依頼をいただくことも多いんですけど、載せられるクオリティではないし…。それで、一眼レフカメラを勉強したいとは常々思っていました」

ただ、こいしさんには一度、カメラを始めようとして挫折した経験があった。そのときの苦い思い出から、長い間二の足を踏んでいたという。

「キャンプで出会う自然は一期一会で、スマホでも、絵でも、思うようには再現できません。だからキャンプを始めた頃にも一度、カメラを手にしたことがあったんです。最初は知り合いに一眼レフを貸してもらったんですが、使い方が全然わからなくてすぐに返してしまって。その後『自分で買わないとダメだ!』と思って家電量販店に行ったものの、店員さんに勧められるままに、一眼レフではなく高価なコンパクトデジタルカメラを買ってしまいました…(笑)」

カメラには縁がない。そう諦めていたときに、サンクチュアリ出版から「カメラ」をテーマにしたコミックの出版の話が持ち上がり、運命のようなものを感じたというこいしさん。フォトグラファーの鈴木知子さんに、カメラの選び方から撮り方まで一つひとつ教わることになった。

マイカメラを買った翌日、長野県宮田村でキャンプ

鈴木さんと一緒にお店へ出向き、晴れて一眼レフカメラを手に入れたこいしさんを驚かせたのは、「オートモードは使わない」という鈴木さんのアドバイス。いきなりマニュアルモードだとハードルが高いが、設定の一部を自分で決められる「こだわりオートモード」にすることで、表現の幅が格段に広がるのだ。

「鈴木先生には、3つのポイントをおさえるだけでカメラを使いこなすことができると教わりました。難しい専門用語や機能を覚えるところからつまずいていた過去の私に教えてあげたい!と思いましたね」

そしてカメラを購入した翌日、さっそく長野県宮田村へキャンプに出発。3つのポイントを覚えただけで、機能の名称すら曖昧なまま撮影に挑んだが、夜空に浮かぶ月とテント、揺れる焚き火の炎など、場面をそのまま切り取ったような臨場感あふれる写真をたくさん撮ることができたという。

その後も、家の近所や出先の何気ないスポットでシャッターを切り続けたが、なかでも出来栄えにいちばん感動したのが「料理」の写真。これまで写真を撮るときに避けていた「逆光」をあえて選び、こだわりオートモードで明るさを調整するだけで、一気にツヤが出ておいしそうな写真に仕上がるのだそうだ。

「風景の写真って、人によって『きれい』『すごい』と思う感覚が違ったりするのですが、食べものを『おいしそう』と思う感覚はけっこう同じ。だから、誰が見ても『おいしそう』な写真を撮ることができると、わかりやすくてすごく楽しいんです。これからカメラを始める方にはぜひおすすめしたい被写体ですね」

カメラを始めてから、より一層高まったキャンプ熱

自分の一眼レフで写真を撮るようになって以来、キャンプから帰ってくると写真を整理するのが習慣になったという。

「スマホやアウトドアカメラで撮った写真を見返すことはほぼなかったんですが、今ではきちんと整理して、HPやSNSにアップしたり雑誌に提供したりしています。撮りたい風景を探して、どんなふうに撮りたいか考えて、最高の一瞬をねらってシャッターを切るので、撮れた写真にも愛情が湧くんです。もともと短気なほうなんですけど、カメラの撮り方がわかってからは、時間をかけてじっくり向き合えるようになりました」

年末年始もキャンプ仲間と静岡で過ごし、北斗七星の撮影に成功。次はカメラ女子を集めたキャンプも開催するとのこと。今チャレンジしてみたいことは、真っ白な雪の上でテントを張る雪中キャンプだそうだ。

「今回『カメラはじめます!』という本を出版して、反響は想像以上でした。私と同じように過去に挫折していたり、SNSにもっときれいな写真をアップしたいと思っていたり、隠れカメラニーズを持つ人がたくさんいるんだと実感しましたね。鈴木先生は教え方がすごくお上手で、楽しみながら自発的に学んでいくことができたので、本ではそれをうまく表現できるように工夫しました。教科書ではなくマンガとして楽しめるように遊び心もたくさん加えたので、気軽に手に取っていただけたら嬉しいです」

持ち前の好奇心を活かして、活動の幅を広げたい

今回の出版を通じて、「難しいことをマンガにする」という特技をあらためて認識したというこいしさん。今後も興味のある分野のルポマンガなどを描いていきたいという。今いちばん気になっていることをお聞きしてみると、意外な答えが返ってきた。

「カヤックですね。前に自転車・カヤック・ハイキングを組み合わせた大会に出たこともあって、ずっと気になっているんですよ。シーカヤックにキャンプ道具を積んで島旅なんかもしてみたい。しまなみ海道を自転車ではなくカヤックで横断するのもおもしろそうじゃないですか?(笑)」

東京育ちのこいしさんだが、小学生の頃は宮古島に住んでいたこともあり、もともと自然が大好きだという。長野県宮田村のPR大使を務めるなど、地方を盛り上げるための活動にも積極的だ。

「以前、屋久島と奄美大島の間にあるトカラ列島という島にキャンプに行ったんですが、『日本最後の秘境』と呼ばれているだけあってすごく魅力的な島で。そういう地方の島や村を、キャンプ先としてだけでなく移住先としても選択できるような提案ができたらいいなと思いますね」

キャンプに出会い、カメラに出会い、出会う景色や出会う人もそのたびに変わっていったというこいしさん。未知の世界に飛び込むことは決して難しいことではない。最初のきっかけさえ掴んでしまえば、以前の自分では知り得なかった「ワクワク」や「ドキドキ」が待っている。こいしさんの生き方には、そんな前向きな教訓が詰まっている気がした。

(取材/文 三橋温子)

プロフィール


こいしゆうか
イラストレーター。 またキャンプコーディネイターとして、雑誌やラジオ、テレビなどで企画・コーディネイト・プロデュースを行う。
これまでキャンプで日本全国、さらに世界各地で、素晴らしい景色を見てきたのにいい写真が全く残っていない後悔から、ついに一眼レフカメラデビュー。
著書に『キャンプできちゃいました。』(アスペクト)など。

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