犬の困った行動は、幸せの法則に沿った「ほめる」と「叱る」で解決できる

愛犬の無駄吠えや飛びつきなどの困った行動。しつけがうまくいかないのは、犬の幸せの基準を正しく理解していないからかもしれません。ドッグライフカウンセラーの三浦健太さんに、「愛犬が幸せになれる、ほめ方と叱り方」をお伺いしました。

犬の問題行動は簡単に直せるってホント?


犬を飼っている人の多くが「困った行動」に悩まされます。
しつけ本を読んだり、おやつでつってみたり、しつけ教室に通ってみたり。
でも、思うようにいかないことがたくさん。
「どうして言うことをきいてくれないの?」
「なぜ困らせるの?」
とくに初めて犬と暮らす人は、愛犬の困った行動に苦しむことも多いもの。
でも、実は「犬のことをちゃんと理解したら、困った行動をやめさせるのは簡単」とドッグライフカウンセラーの三浦健太さんは言います。
その基本は「ほめる」と「叱る」。この使い方さえ間違えなければ、拾い食いは3日、無駄吠えは1週間、飛びつきは5分位で直ってしまうのだそうです。

基本となることはふたつ。まず、「オスワリ」や「オイデ」といった動作を教えたい時は絶対に叱らないこと。あかちゃんに言葉を教えるように指示を言ったらその行動を「させて褒める」を繰り返します。「叱る」必要があるのは、しては困ることを教えるときだけ。もちろんただ叱るだけではダメで、困った行動をしたら、叱ってやめさせ、やめたら褒めるという動作をセットで使います。

その触り方で、犬は本当に満足していますか?


「ほめるのは任せて!」そう、豪語する飼い主さんもいますが、犬にとって嬉しいほめ方をしている人は意外に少ないのです。ほめるとき、たいていの飼い主さんは犬をなでますが、どこをどんなふうに触ってあげていますか?

背中をゆっくり、頭をポンポン、全身を力強くなど、さまざまでしょう。ところでそれは、犬から「こうやって触って!」とリクエストがあった方法ですか?

違いますよね。「きっと喜んでくれる」と飼い主さんが勝手に思い込んでいるだけ。もしかすると、「ぜんぜん気持ちよくないよ〜」「もう、触られたくない」と思っているかもしれません。

「ほめる」ためには、その犬が心地良いと感じる場所と触り方を発見する必要があります。いろいろな場所を優しくなでたり、タッチしたり、マッサージしたりしてみましょう。触ってあげると、とろんと目が閉じてきてしまうような、心地良い触り方を見つけてあげるのです。隣のおばさんや、公園で会うおじさんにはできない、飼い主さんだけの特別なほめ方が見つけられれば、それこそが最高のご褒美となるのです。

ほめるときにおやつを使う作戦はやめましょう。犬との絆ができていれば、コミュニケーションは言葉と動作で十分。それに、いつもご褒美をあげ続ければやがてはおやつがなければ命令に従わなくなってしまいます。

三浦さんが主催するドッグインストラクターの養成講座では、おやつどころか、言葉も動作も使わずにマテとオスワリをさせるという卒業試験の課題があるそうです。言葉を持たない犬は、鼓動や体温、匂いなどから、人の心を読み取ることを実践してもらうためだそうです。

叱るためには、飼い主さんが立派なリーダーになる

ほ乳類は、卵では生まず、大人でも生みません。小さく産んで育てます。その間に親は子にエサの取り方、危険の避け方、愛し方、愛され方などを教えていきます。我が子が危険を招く行動をしたり、群れの秩序を乱す行為をしたとき、また成長したときに立派な大人として必要なことを教えるときには、しっかりと叱ります。

「叱る」という行為は、「怒り」とは違い、その子の未来にも責任を持とうという深い愛情の表れなのです。そして子供も本能的にその事を知っているのです。
よく「犬は群れの頂点に立ちたがる」と言う人がいますが、実際にはそうでもない犬はたくさん見かけます。むしろ強いリーダーに守られたいと思っている子の方が多いと思われるのです。安心できる環境で、リーダーと共にのんびり暮らすことが幸せなのです。

ところが、家の中でリーダーであるはずの飼い主さんが、頼りない、優しすぎる、叱ってくれない状況だと、犬はだんだん不安になり飼い主さんを試す行動に出ます。一番かわいがってくれる人にかみついてみたり、命令を無視してみて、飼い主さんの反応を見るのです。

飼い主さんが自分を守る気が無い、または守れないと思えば、自分が家族を守るしかない…と考え、玄関のチャイムの音に敏感に反応し無駄吠えをしたりするようになるのです。

叱ると同時に、「あきらめる」ことを教えるのも、人間社会で平和に暮らすためには必要です。シャンプーや爪切りに抵抗したからと、簡単にやめてしまうと、犬は「嫌がればやめる」弱いリーダーだと思ってしまうのです。
おやつを「もっと」と欲しがったからと好きなだけ与えるのもNGです。

人間の子どもを育てるときに、シャンプーが嫌いだから汚いままで学校に行かせるとか、好き嫌いが多いから毎日三食カレーライスなんてことはしませんよね。清潔が気持ちいいこと、いろんなものを食べる喜びを大人が教えることで、子どもは健全に育ちます。犬も同じ。健康でストレスを感じずに生きていくためには、あきらめることを覚える必要があるのです。

叱るときには名前は呼ばず、愛犬の目を見つめて「だめ」「いけない」「NO」など強い言葉でいけないことだと教えます。そして、やめさせた後には最高に心地よいほめ方をしてあげる。これが問題行動をなくす基本的で理想的な方法です。

それでも、問題行動が気になると、飼い主さんが落ち込んでしまうこともあるでしょう。そんなときには、自分の犬の良いところ、好きなところを見つけてみましょう。何でも良いのです。例えば…
・朝寝坊なところ
・お腹を見せてゴロンと寝ている姿
・帰宅したら尻尾を振って思い切り喜んでくれる

よその家だったら、どうでも良いことでも、我が家にその犬がいることで、家族が幸せになれることを、何気ない暮らしの中で見つけてみましょう。

愛する幸せを犬が人に教えてくれる

人間は誰かと比較して幸福度を判定します。お金持ち、素敵な配偶者を持つ人、美貌の持ち主など、自分の状況と比較するのです。少しでも高いレベルに立ち、周囲からほめてもらいたい、認めてもらいたいと願います。

それは、人間が「愛されたい」生き物だからです。
しかし、犬は比較しません。隣の家の犬小屋は立派でいいな、自分のベッドよりふわふわのベッドで寝られていいな、などとは思いません。外的要因には無頓着で、今、その場が安心できる場所で、飼い主さんを「愛する」ことができれば幸せなのです。

たとえば人は、日中嫌なことがあると夜まで引きずって、そのことには関係のない家族に八つ当たりしたりします。でも、犬は散歩中によその犬とけんかしても、いたずらをして叱られても、家族の誰かが帰宅したら、365日、いつも同じテンションで出迎えてくれます。「愛する」気持ちにブレがないのです。

何があっても変わらずに、「愛される」より「愛する」ことに全力を注ぐ。その姿に気づけると、良いところ、素晴らしいところが浮き上がり、私たちがどれだけ犬に癒やされているかを知るのです。

犬のまっすぐでひたむきな愛が、私たち人間に与えてくれるもの。その小さなかけらを集めた20の物語が「犬が伝えたかったこと」という書籍になりました。犬と暮らす人、これから暮らそうとしている人へ、そっと贈りたい一冊です。

(画像提供:iStock.com/fcscafeine/Chalabala/DGLimages/elfart/Pilin_Petunyia)

この記事は、”犬が伝えたかったこと” 三浦健太(著)の新刊コラムです。

 

三浦健太 Kenta Miura

1950年生まれ。東京都出身。NPO法人ワンワンパーティクラブの代表。

1994年に日本初のドッグイベント“ワンワンパーティ"を企画・運営。

1995年よりクラブとなり、その後NPO法人となる。

現在、ドッグライフカウンセラーとして全国各地でイベントや教室・セミナーを多数開催。

全国の都市公園でマナーの啓発やドッグランの設置や運営アドバイスを実践。

毎春に全国100万人の犬の飼い主に正しい飼い方を書いた小冊子を制作し手渡しで配布している。

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