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人気保育士てぃ先生に聞く!「人の話を聞く力」を育てる親子の読み聞かせ

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子どもと絵本を読む時間は、子育ての愛しいワンシーン。せっかくなら良い本を読んであげたいし、限られた時間を有意義なものにしたいですよね。そこで今回、ツイッターで人気の保育士てぃ先生に、読み聞かせのコツやおすすめの絵本について聞いちゃいました。

絵本はどのように選べば良いの?

年齢と成長の度合いによって絵本の選び方は大きく異なります。たとえば年長さんなら、クリスマスなどの行事ごとに合わせたものを選び、イベントへの気持ちを高めるために絵本を使うこともあります。一方、1〜2歳であれば、文字量や、読み手がリズムに乗って読めるような内容のものを選ぶところから始めなくてはなりません。

子どもにとって絵本は、分量が長すぎると退屈だし、短すぎてもつまらないもの。よく「洋服はすぐに小さくなってしまうから、選ぶのが大変」という話を聞きますが、絵本も同じです。少し前まではお気に入りだった絵本が、すぐに「こんなの読まない」になってしまう。その子の今の成長段階にとって、ちょうど良いところをうまく見つけてあげる必要があるのです。

そのためには、まずは1冊買って読んでみる、あるいは書店で子どもと一緒に粗読みしてみるなりして、反応を見ながら調節していくのが良いでしょう。

子どもが絵本に興味を持つためには、どうすれば良いの?


園でも「はーい、読みまーす」と言って読み始めると、食いつく子と食いつかない子がいます。僕がよくやるのは、新しい本を買ったら、まずは子どもたちの見えるところで「へえ〜」とか言いながら、わざとらしくひとりで読むんです。子どもたちは、これまでに見たことがない絵本だし、「先生はとてもおもしろそうに読んでいるな」と興味を持つ。そうして「見たい、見たい」と子どもたちの気持ちが高まったところで読むと、大いに盛り上がります。

本が嫌いな人は、子どもの頃に、つまらない本を親や周りの大人から強制的に読まされた結果、「本=おもしろくない」と刷り込まれてしまったのでしょう。逆に、本がおもしろい、好きだと感じている人はきっと、大人からおもしろおかしく絵本を読んでもらっていたのだと思います。だから、まずは「絵本っておもしろいな、早く絵本の時間にならないかな」と子どもが自然と思えるよう、楽しんでもらうための工夫が必要なのです。

1、2歳児だと、手を伸ばして勝手にページをめくってしまうことがよくありますよね。大人は「まだ途中なんだから」とやめさせようとしますが、めくりたいようにめくらせてあげれば良いのです。ある程度の時期になれば、「お話に関係ないけど、このページが早く見たい」という「お気に入りのページ」ができてきますから、子どものそういう気持ちも理解して読んであげましょう。好きなようにめくらせてあげてOKです。

あとは、とにかく大人が楽しそうに読んであげること、これに尽きます。子どもが自分から本に興味を持つことはありません。子どもに「本好きになって欲しい」と期待するなら、大人がその環境を用意してあげるしかないのです。

絵本を選ぶ際にも、書店で「これはどう?おもしろそうだね!」などと、声をかけながら一緒に選びたいですね。「これ(は教育的に良いから)読みなさい」と一方的に押し付けても、子どもは興味を持てません。

読み方のコツはありますか?

「リズム」が重要です。たとえば、「ようこそぼくのえほんのなかへ」と棒読みするのではなく、「ようこそ、ぼくの、えほんの、なかへ」というように、トン、トン、トン、トンとリズムをつけて読む。これを少し意識するだけで、入り込みやすさが大きく違ってきます。リズムに合わないような文章は、自分で文字を足したり引いたりして整えても良いでしょう。

それと、スピードはとにかくゆっくり。大人が思っている半分のスピードで良いと思います。

下読みも重要です。親が子どもと一緒に「初めて読む」だと上手く読めるはずがありませんよね。面倒くさがらずに、子どもに関心を持ってもらう意味合いも込めて、一度くらいしっかりと読み込んでおきましょう。そうすることで、展開に合ったトーンで読むことができます。

あとは恥ずかしがらないこと。たとえば文中に歌が出てきたなら、リズムや音程はどうでも良いから、とにかくきっちり歌いましょう。恥ずかしがると、それはしっかり伝わり、子どもは楽しめなくなってしまいます。そればかりか、子どもはそんなママの振る舞いを見ているわけですから、自分が人前で何か披露する時にも「恥ずかしい」と感じる原因に繋がる場合もあります。

お子さんを必要以上にお客さま扱いする必要はありませんが、とにかく「うちの子どもは、絵本をどういうふうに読んだら楽しんでくれるのか」ということを把握しましょう。そうすることで、読み方も、そしてそれに対するお子さんの反応も、良い方向へ変わるはずです。

伝統的な絵本も読んだ方が良いの?

絵本を選ぶ上で重要なのは、お父さんお母さんも興味を持つことができて、書店で思わず「これ読みたいな!」と手にとってしまうような本であることです。ただ、いわゆる、昔から読み継がれてきた絵本の中には、本音で言うと、「これ何が面白いんだ?」と感じるものもありますよね。面白さが感じられない絵本は読む側もツラいです。でも、それが意外と子どもにヒットするのも事実ですし、そういった絵本はお話から学べることが多い傾向にあります。お父さんお母さんが好き嫌いを決めてしまうのは勿体無いです。

さらに、伝統的な絵本の良いところは、「思い出の共有ができる」こと。たとえ面白く感じなかったとしても、懐かしさを感じながら「ママもちっちゃい時に読んだんだー」といった会話が親子でできるというのは、歴史のある絵本ならではの醍醐味と言えますね。

てぃ先生の考える「いい絵本」とは?

2種類あると思っていて、まずひとつ目は「とにかくおもしろい」こと。何も考えずに「うわーっ」って楽しめる、語弊を恐れずに言えば、「何も学ぶものはない」、だけど、とにかく楽しめる絵本。

もうひとつは、じっくりと読み聞かせることができて、何かを伝えることができるような絵本ですね。僕も好きな『てぶくろ』(ウクライナ民話)なんかは、人の心が伝わるとても素晴らしい絵本だと思います。

読み聞かせをすると何が良いの?

「人の話を聞く」という力は確実に養えると考えています。それから、想像力、発想力。もっと言えば、言語能力もそうです。園生活の中でも、家庭でよく読み聞かせをしてもらっている子は、見ているとわかります。そういう子は「(本を)読むよー」と言うと、手遊びなどの導入がなくても、聞く姿勢に切り替わるんです。

この力は、のちのち小学校、中学校と進んでいくための基礎になっていくもの。「黙って話を聞きなさい」と指導するよりも、読み聞かせをする中で、自然と得られるほうがずっと良いはず。基本的に、子どもの力のほとんどは、遊びの中で育まれていくものですから。

てぃ先生の好きな絵本、オススメ絵本は?

小さい頃からしかけ絵本が好きでした。「ここを引っ張ると船が動く」みたいなのが好きなんですよね。

しかけがあるものは園の子どもたちにも人気ですね。『パパ、お月さまとって!』(エリック・カール)とか。しかけとは違いますが、参加型絵本の『ぜったいにおしちゃダメ?』(ビル・コッター)も大好評で、みんなでゲラゲラ笑いながら読んでいます。良い絵本の例として挙げた「何も考えずに楽しめる」が、まさに当てはまる絵本ですね。先ほど、読み聞かせには「リズム」が大切だという話をしましたが、この本は、展開に合わせるように「勢い」に任せて読んだ方がグッと盛り上がり、お子さんもより楽しめると思います。

一方で、絵だけでなく、文字から情景が思い浮かぶようなものが好きです。最近買ったのは、『ふたりはともだち』(アーノルド・ローベル)。小1の教科書に載っている作品なのですが、年長さんでも楽しめています。絵が主体のものだけではなく、耳だけでお話が楽しめるものも良いですね。お父さんお母さんにとって「素話」はなかなかハードルが高いと思いますから、挿絵くらいの絵本も選択肢に入れていくと良いでしょう。でも、無理にする必要はないですよ。あくまで、お子さんの成長に合わせて、です。

 

てぃ先生 プロフィール
 


関東の保育園に勤める男性保育士。
保育園の日常をつぶやくツイッターには40万人を超えるフォロワーがいる。

著書に『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』『ハンバーガグー!』(ともにベストセラーズ)など。
ツイートを原作とした漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)も連載中。2017年6月にはアニメが公開。
「保育・子育ては大変なことよりも、楽しいことの方が遥かに多い」ということを伝えるために、現在も活動中。

 

この記事は、”ぜったいに おしちゃダメ?” ビル・コッター(著)の新刊コラムです。



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